宮島の概略
宮島は、広島湾の西側にある周囲30.2kuの小島です。東北から南西に9km幅4kmの長方形の島で、本土との距離が最もせまい大野瀬戸で500m、干潮時の幅は250m水深も10m以下になります。本土から宮島へは連絡船で約10分です大潮の時には、宮島の鹿が対岸の大野町に泳いで渡り、畑の作物を食い荒らすという新聞記事が時々載ります。標高530mの弥山、509mの駒ヶ林(顔面)などの山並は丁度女性の寝姿に似ており、宮島に奉られる神が女性であることのいわれを解くカギに成るかも知れません。本土から宮島に渡られる時、島全体の島影をぜひご覧ください。

宮島はもともと西中国山地に属し、本土と完全に一体化していました。2万年前から8000年前、瀬戸内盆地が地盤運動による沈降や地球温暖化に伴う海水面の上昇等によって瀬戸内海化することにより、宮島も6000年前に離島化しました。今後地球の温暖化が進み、地球上の氷が全て解けると、海水面が40mも上昇すると計算されています。最近宮島では異常潮位が続いています。大潮の満潮時、巌島神社の回廊が海水に漬かる現象が起きています。これも地球温暖化の影響かも知れません。
宮島は広島湾の最も西に位置するため、何千年か後には比治山や黄金山のように、太田川デルタ地域のなかに取込まれます。豪雨の時太田川から流れ出る土砂は大量で、宮島に漂着する流木の量を見ると、海底での変化を想像することが出来ます。太田川デルタ地域の様子は弥山(ミセン)の頂上から一望出来ます。

今後百年後には宮島は本土とつながると予想されています。大野瀬戸は、河川からの土砂の搬出や潮流による土砂の運搬で今にもつながりそうな状況にあるからです。宮島は、我島、霧島、恩賀島、御香島、と呼ばれていた時代がありました。いつのころか島の景観が美しいことから”いつくしま”と呼ばれるように成りました。後に”いつくしま”に奉られる神、市杵から伊都島と呼ばれ、神を「斎、奉る」島という意味から「巌島」となりました。宮島と呼ばれるようになったのは昭和25年の町名変更からです.

日本三景の一つである宮島は、平成8年12月広島の原爆ドームと共に世界遺産に登録されました。宮島は、巌島神社を中心に弥山原始林を含めた地域が指定を受けました。巌島神社を中核とした海と山が織り成す景観が後世に残すに値するものとして世界的な認知を受けたのです。ところで宮島は、自然そのものが神であった時代、モミや楠が生い茂り、鹿や猪が住む豊かな自然に恵まれた島でした。狩猟・漁猟を中心として生活していた周辺部族にとり、宮島は神が宿る霊地であり、降臨のかなう所として、島全体を聖域化していました。中国・朝鮮方面から赤い船に乗って市杵島姫命、田心姫命、淵津姫命の三女神が訪れ、この地に巌島神社を建立します。建立に先立ち原始信仰と癒合を果たすため、聖域の地上ではなく海中に社殿を造り、神仏の習合を達成します。歴史上初めての女帝である推古天皇即位元年(593年)のことです。天界との門戸を開く、モミの木が生い茂る弥山原始林、西方浄土の門戸を示す大鳥居、神仏習合が瀬戸内海に織り成す景観の中で造られています。神仏習合は明治元年神仏判然令まで続きます。

毎年旧暦の6月17日には、夏祭の一代イベント管弦祭が行われます。御 神体が年に一度対岸の廿日市地後前神社にお参りされるこの行事で、宮島に帰られる時、島の警護神である長浜神社、大元神社にお参りされてから、巌島神社に帰られます。平安絵巻きの舟遊びの中に、神仏習合に至る物語が隠されているようです。宮島には、今日でもなお各宗派の寺院が沢山あります。曹洞宗、浄土宗、浄土真宗、真言宗等、またつい最近までカトリック系の教会も有りました。対岸には新興宗教の巨大な建物が宮島に向って建っています。宮島には古来から宗教人の心を引き付ける不思議な力が有るようです。今から1200年前、中国からの帰路、宮島を訪れた弘法大師空海は、この島を、高野山に並ぶ真言密教の御山として開基します。御山は唐の須彌山に似ている事から、弥山(ミセン)となづけました。宮島の最高峰弥山は弘法大師の命名によるものです。

NHK大河ドラマ「毛利元成」で演じられた中国地方の覇権は、いつの世でも最終的には巌島に何をお祭りするか、祭祀権をめぐる争いで収斂します。ある時は、大日如来であり又またある時は弁財天であったりします。宮島では1400年の歴史を超えて今でもなお日本の精神文化の源泉が、西洋の合理主義的文化からは考える事が出来ない東洋文化のルーツ、日本人の心の源が、日本的美意識の中で語られています。数々の文化遺産が残る宮島においでいただき、日本の、そして日本人の心を再考されてみてはいかがでしょうか。

観光料金のご案内
厳島神社
(0829ー44ー2020)
昇殿料団体
大人250円、高校生150円、
中・小学生70円
宮島ロープウエー
(0829ー44ー0316)
団体運賃(往復)
大人1620円、高校生1050円
中学生900円、小学生550円
新宮島水族館
(0829ー44ー2010)
団体料金
大人1,120円、高校生560円、中校生490円
小学生350円
宮島歴史民俗資料館
(0829ー44ー2019)
団体料金
大人180円、小人100円
(詳しくは各施設にご確認下さい)
来島される皆様にお願い!!宮島は信仰の島だという事を忘れないで下さい。日常的に神事やお勤めが行われています。神社やお寺の境内で大声を出したり騒いだりしないで下さい。宮島の自然は、霊が降臨する所として大切にされています。特に弥山原始林は、霊が宿る所です。山歩きの際、十分な注意と行動をお願いします。