師との出会い


釣りが上達するために必要なものがあります。

それは”良い師匠”です。

独学で釣法を学ぶことも最近なら容易でしょう。色々な雑誌やビデオが沢山でています。そこでは基本となるテクニックや最先端の釣法が紹介されています。

では、それを見て、その気になって真似をして上手くいくでしょうか?

余程の才能があれば別としても、恐らく思ったようにいかないでしょう。
文字や絵や画像で伝えられないものは沢山あります。


私は良い師匠に出会いました。

あれはチヌ釣りを始めて1年くらい経った頃でしょうか。

あの頃岩国港新港周辺の護岸には沢山のチヌがいました。護岸際からそ〜っと海を見ると、30cmオーバのチヌが悠々と泳いでいるのを容易に見かけることができました。

こんな場所で私は練習していました。

団子釣りです。それこそ雑誌を見て、それを真似して必死でやっていました。
何匹かは釣れたんですけどね。
3Bくらいの自立棒浮き(20cmくらいの中型)を使っていました。

ある時、いつものようにやっていると、サングラスをかけたおじサンが話しかけて来ました。
なんとなく親しみやすい雰囲気があって、ついつい色々なことを話ていると、おじサンはポツリポツリとこうしたほうがいいよ、って教えてくれました。
普通ならそんなに素直に人の言うことを鵜呑みにしてやってみる性格では無いんですが、実際思うように釣れていなかったのと、なんとなくおじサンに惹きつけられたので、言われるままにやってみました。

「その浮きは自立だろう?ならそんなに錘をつけんほうがいい。浮きの下は何も 付けないくらいでいいんだ。」
「これじゃ砂が足りない。もっともっと砂を入れないといけない。」


最初はそんなことから教えられました。
直ぐに砂を取りに行って、団子に混ぜました。

殆ど毎週岩国港に行っていたのですが、そのたびにおじサンに会いました。
おじサンも私に会うためにわざわざちょっとだけでも足を延ばして私のポイントまでやってきてくれるようになりました。
そんなときおじサンは私に1つ2つアドバイスをすると、「ちょっと釣ってくる」といって落とし込みの仕掛けをつけた竿をもって私の傍を離れます。
ものの1時間もしないうちに、大きなチヌを数匹釣って、「じゃ、またな」と言って帰っていくのです。

「そんなに糸を張っちゃだめだ。糸に浮きが引っ張られる。」
「浮きを団子の投入点に被せるように飛ばさんといかん。」
「浮きが浮いたらそれ以上流してもだめだ。どんどん打ち返さないと。」
「団子が底についたら直ぐに割れるくらいじゃないとだめだ。」
「アワセのタイミングは日によって違う。それを早く掴まんといかん。」


その時の状況に応じて的確なアドバイスを受けました。
今思えば、全て団子釣りの基本になることばかりですが、その時のその状況に応じて的確にアドバイスが出てくるのです。

小ベタを入れ食いにできるくらいに上達するにはそんなに時間は掛かりませんでした。私の頭の中には、団子釣りの基本と、状況に応じた対処法が沢山入っていました。

そのおじサンは高橋さんといいます。ただし、「広島湾のチヌ釣り」の高橋さんとは別の人です。
師匠は、出会って間も無い私に、「昔作ったやつだけど、今は団子をやらんからあげるよ。」ってくれたものがあります。
今もそれは時々使っていますし、それを見本にして同じようなものを自作もしました。
これが私が団子釣りで愛用し続ける小型棒浮きです。
10cmくらいの軽量好感度な自立棒浮きで、錘負荷0〜2Bくらいのものです。
通常錘負荷0のもので、錘を全く打たずに完全フカセで釣るのが師のスタイルです。
今の私の団子の基本スタイルは師のスタイルを受け継いだものです。

当然、その後私自身が色々な経験をし、自分で工夫を加えたりしたので、少しそのスタイルは変化はしています。

師匠なんて本人の前で呼んだことはなかったけど、私にとってはこの上ない師匠でした。
フカセの基本も学びました。玉浮きを使った3段浮きです。仕掛けの動きが解り易く、フカセの基本を勉強するには持って来いでした。
落とし込みの基本も学びました。もっともこれは練習しなかったので上達もしていませんが...

岩国港に行かなくなって、徐々に会う機会も減ってきて、もうここ何年かお会いしていません。
懐かしいなぁ。今でもあの笑顔と優しい口調を思い出します。
元気にしておられるかなぁ。


今私はこんな釣りをしていますよ。


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