入れ食いという経験


夏場の団子釣り。
半日で15〜25cmくらいの小チヌを20枚以上釣ることは結構ありました。

昔、岩国港で団子釣りをやっていた頃の話です。
団子投入、団子が割れる、沈んでいた浮きが浮く、浮きが沈む。
ワンパターンとも言える状態でチヌが釣れ続きます。入れ食いとまで言える状況では無かったですけど。

この頃かなり自信過剰になっていた感がありました。井の中の蛙です。

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フカセを始めた.....

どれだけ釣れない日々が続いたでしょう。
雑誌の釣果欄を見ると、当に別の世界の話のよう。

釣れても1枚とか2枚。それも大きくて30cm弱が殆ど。
時折釣れる30cmクラスが私の闘志を掻き立てていました。

季節は秋、そして冬。
秋は小アジ達やベラがクーラの中に、時折チヌ。グレは今のようにいませんでした。
冬を向かえるとメバルやアイナメ。チヌの姿を見ることはありません。
あの頃、といってもそんなに昔じゃないのですが、最近のように浅い地磯や波止周辺で冬場にチヌを釣ることはできませんでした。当然腕の問題もありますが。

やむを得ず、元ホームグランドの岩国港辺りで浮き釣りをして、数回に1枚くらい。
2月3月なんて殆ど釣れませんでした。

季節は春を迎えます。
世に言うのっこみです。期待が膨らみます。
取りあえず、のっこみ時期に実績が高いと聞いた周防大島のとある港を目指します。
全く釣れない。周辺には釣り人が沢山居ます。
周りも釣れていないようです。少し離れたところでフカセをやっていた人が一枚。羨ましい。

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ある日、前から気になっていた地磯へ行ってみることにしました。

大岩を回り込むと、ゴロ石浜を挟んで磯場が続きます。
ゴロ石浜の脇に釣り座を構えます。

潮が低いので遠投します。撒き餌のコントロールが悪いので、なかなか思うように攻めることが出来ません。おまけに相当浅いポイントのようで、20〜30m沖でも浮き下2ヒロでは根掛かりします...いえ根掛かりというより藻掛かりです。よく見ると海の中は一面ガラ藻が群集しています。
浅場、そしてガラ藻、緩やかな潮の流れ。のっこみの条件を全て兼ね備えています。

しかし藻掛かりが激しく仕掛けが流せません。20m程沖の藻の切れ目に仕掛けを直接投入し、そこへ撒き餌を投入します。まぐれでスパッと浮きに撒き餌が被さりました。

浮きがスパッっと入ります。アワセると重量感!チヌです。藻に突っ込まれながら取り込んだのは30cmオーバのまるまるとしたチヌです。なにせ釣れない期間が長かったから嬉しかったこと。
しかし、後は続きません。やはりある程度潮が高くならないと難しい。
藻掛かりが激しいので浮き下を一ヒロ、ハリスだけにします。ガン玉をハリスに付けるとやはりまだ藻掛かりします。浮きの真下に浮力調整のガン玉を打って流します。浮き下完全フカセとなります。

徐々に潮が上がってきます。
遠投の必要が無くなってきました。仕掛けを投入して、その手前に撒き餌を縦長に撒きます。本で見た釣り方です。なかなか上手く縦長になりませんが、何度もやっているうちに形になってきました。

撒き餌の帯の中をゆっくりと仕掛けをさびいてきます。浮きが滲む!アワセ!グンっという重量感。浮き下一ヒロです。水面下に反転するチヌ。良型です。玉網で取り込んだのはその頃の私としては結構良型の35cmクラス。

続く一投。同じパターンで攻めます。投入して間もなくまた同じようなアタリ!浅い浮き下でダイレクトにチヌの重量感と引き込みが感じられます。同サイズのチヌです。

そしてまた続く一投。グンっ!またまた同サイズです。3連続で35cmクラス。こんな経験は初めてでした。当に大興奮です。恐らくチヌが喰ってきているタナは矢引程度のものでしょう。

3枚ですが、私にしてみれば入れ食いを始めて体感した一瞬でした。

結局その日は、その後間をおいて確か2枚くらい追加し、ホクホク顔で帰りました。

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チヌを浮かせて(少しだけど)入れ食いにした。この経験は私にとってとても大切なものとなりました。
チヌが釣れる、という感覚。浮く、という感覚を頭の中に刻み込ませることが出来たからです。

これまで難攻不落の強敵だったチヌが、少しだけ身近に感じられるようになりました。
これはとても重要なことですね。釣れると思って釣るのと、どうせ釣れないと思いながら竿を出すのとでは、結果に大きな違いが出来てしまいます。

この経験のあと、そんな感覚で釣りをしたからこそ、似たような経験を何度か味わうことが出来ました。そして、更に春の釣りから、夏秋の釣りへこれが影響してきたと思います。

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まだ、チヌを浮かせて釣った!という経験のない方、以下参考にして下さい。

チヌはフカセで浮かせて釣れる魚である。当たり前のことですけど、これは体験しないとピンと来ないことです。
のっこみの時期はチヌは撒き餌に素直でとても浮きやすい状態になります。決して乱獲をしてはいけませんが、チヌが浮く、ということにピンと来ない方がおられましたら、春、ガラ藻が密集したポイントで試してみられては如何でしょう。のっこみ時期にはポイントによってムラがありますから、必ずしも釣れるとは言えませんが、そこにチヌが居れば、高い確率で釣ることが出来ると思います。

撒き餌は軽比重に仕上げる。グレパワーなどのグレ用集魚剤を使うのも手です。
そして比較的拡散させて撒き餌を投入します。まとめて投入するより、拡散させた方がゆっくり拡がりながら沈むのでチヌが浮きやすくなります。
また決して撒き餌は絶やさないこと。少量ずつ絶え間なく、これが基本です。

仕掛けは軽く。できれば0号の小さめの浮きを使用して下さい。そしてハリスは1ヒロで一切ガン玉は打ちません。これは水面下から浮き下一杯までの全てのタナを探るためです。
浮いたチヌを釣るのですから、ポイントに直接ドボンと仕掛けを投入するのも避けた方がいいです。沖合にゆっくりと、着水前に仕掛けを軽く張って静かに落として下さい。そして手前にぱらぱらと打った撒き餌の中にゆっくりと寄せてくるのです。潮の流れの緩いところで釣ることが多くなりますから、撒き餌の中で時折ゆっくりと手前にさびいて来るといいと思います。


上手くのっこみのピークに当たれば、かなりの釣果が期待できます。

もし、入れ食いになったら。
チヌ達は産卵の為に沢山の栄養をとりたくて撒き餌に群がっています。そして産卵のために藻場に集まっているのです。そのことを考えてみて下さい。
食べる分だけ持って帰る。容易にそんな結論に達することが出来ると思います。

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と、言うわけで、秋の小チヌの入れ食いとは少し違った意味の入れ食いの話でした。


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