いつもチヌを釣っていた


緩やかに右沖へ潮が流れ始める。
浮きのトップの鮮やかなオレンジ色が何かを期待させるかのように、
若干しもりながら、漂い始める。

竿先を潮上に倒し、スプールを人差し指で押さえながら少しずつ浮
きの動きに自分の意思を注ぎ込む。

オレンジ色が滲む。

僅かに、しかし確実に自分の意思とは違う動きを浮きは見せた。

1秒、2秒...短く、そして長い時間が過ぎる。

一瞬の呼吸をおいて浮きが視界から消える。

次の瞬間、無意識のうちに自分の右腕は竿を天に突き上げている。

重量感、そして高鳴る鼓動.....

全てはこの一瞬の為に
.....


胴元から竿が孤を描く。我が愛竿もまたこの時を待っていたかのよ
うだ。

夢中の時が過ぎる。

ギラッと眩しい銀色の光を放ちながらそれは現れる。

やっと遭えた.......

磯にすくい上げられたチヌは、その力強く荒々しい姿を僕の脳裏
に焼き付ける。


・・・・・・・・・・今日もまた、そんな出会いを求めて海へ......




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