取り戻した気持ち。堂の浦にて。

本日の釣果(2000.8.23)

チヌ31.5cm頭に4枚
 (30cmクラスが主体)

下の写真はご一緒戴いた
いぐちさんと私、2人の釣果
(いぐちさんは6枚)


徳島県 小鳴門 堂の浦....チヌ師にとっては余りにも有名なところです。

激流の小鳴門水道筋に掛けられたカセ、穏やかに広がる内の海に掛けられたヤカタ、多くの掛かり釣り師がこの地を目指して来られるのでしょう。


内の海と小鳴門水道筋との交わる辺り、小鳴門の急流の影響を受け、また内の海からの引かれ潮が作用して複雑かつ速い潮の動きを演出する場所。

そこに谷井渡船2番カセは浮かんでいました。


メール友達で、この堂の浦の名手であり「こだわりのチヌ釣り2」の管理者でもある いぐちさん と、以前から一度堂の浦を尋ねてみたいという話をしていました。

ご存じの方はご存じのとおり、私は磯からのフカセ釣りを中心に釣りをしています。

その私が掛かり釣り?

ところが私にはまったく違和感はありませんでした。幸いなことに、私には「女性も楽しい黒鯛団子釣り」小野さんのところで出逢った沢山の掛かり釣り師のメール友達がおり、皆さんとの会話の中で、掛かり釣りに対する先入観はほぼ無く、そのダイレクトにチヌの動きを察知し、掛け合わせていくスタイル...私の釣りとの共通点と私の釣りに掛けたものの両方が見え隠れしていたのです。


そして、とうとうこの日がやってきました。

お仕事で忙しいところを無理を言って、いぐちさんにとうとうお付き合い願うこととなったのです。


23時11分。新神戸駅のホームに私は降りました。道具類はいぐちさんにお借りすることとなっていましたので、最低限の小物類とブーツ、そして着替え等を詰め込んだバックを持って改札に向かうと、改札口の向こうに笑顔が見えます。

ガッチリと握手を交わし、「始めまして.....っていのも何か変ですね」。
振り返ってみると、最初にメールのやり取りをしたのは、どうやら1年以上前。それからやり取りしたメールの数は...想像を絶します。前出の小野さんのお人柄から、いぐちさんと私とのメールのやり取りは、いつしか多くの仲間を巻き込んで、いつしかスクランブルメールと呼ばれるようになりました。実はこれが私の掛かり釣り師のメール友達の巣窟でもあるのです。ここから染み出た広く深いエッセンスは間違いなく私の頭に染みついていたことでしょう。


話を戻します。

いぐちさんの車で一路堂の浦へ....ではなく、ファミレスを目指します。

ここで、スクランブルな仲間で今年の2月20日に私のホームグランド周防大島で一緒に竿を出した Sさんとの再会です。

なんと、私のために、出発前に堂の浦攻略の作戦会議を開いて下さったのです。

ファミレスの机の上には、筏竿、リールが並びます。かなりファミレスには不釣り合いです。

「ボラのエリアを過ぎてチヌのエリアがあって....」
「バイキング(リール)は、指でブレーキを掛けて...」
「アタリは....」「団子は....」・・・・・・・

色々な話が展開されます。先ずは予習予習。


一度Sさんとはお別れです。

車は明石海峡大橋、淡路島、鳴門大橋....仮眠休憩を取りながら、等々小鳴門へ到着しました。

餌を買って、船着きへ向かいます。すでに2〜3組の人達が慌ただしく荷物を運んでいました。

谷井渡船。堂の浦でも1、2を争う老舗の渡船です。磯の渡船に比べると頼りないような小さな船に乗りこむとすぐにカセが見えてきました。1番カセに一組を降ろしたあと、2番カセに近づいてきました。いよいよ我々がカセに上がる番です。

さて、今日はどんなドラマが待っているのか?取りあえず1枚釣ることを目標に...

この辺りでの掛かり釣りは潮が速いために、割合難しい部類に入ると事前に話を聞いていました。全くの掛かり釣り素人の私にしてみれば、どんなところでも同じ事なのですが.....兎に角...一枚です。


団子の作り方をいぐちさんに丁寧に教わります。うわさのベチョベチョ団子。こねていると指の間からニュル〜っと泥がはみ出てきます。

刺し餌はオキアミ生と生ミック。

取りあえずオキアミ生を針に刺して、左手だけで団子に包み、丁寧に海の中に手に載せたまま団子を入れて、そっと落とします。団子がベチョベチョなので紀州釣りのように団子を放り投げることは出来ません。
そして、団子を落としながら、そのまま海で手を洗います。
着底後、左手でそっとラインを引っ張って、団子から刺し餌を抜き、そのまま底をトレースするように竿先を潮下へ流れに合わせて送っていきます。

これが一連の動作の流れ。実にリズミカルに、そして無駄を削ぎ落とした動きです。
この動きを予め教えていただいて、そして頭の中でイメージできていたことは、私にとってとてもプラスでした。


団子釣りは団子釣りです。釣果は手返しに比例します。一応紀州釣りにもそれなりにこだわっている私には、これも充分頭の中で消化できている項目です。


そして、潮の流れと、刺し餌の動き、ラインへの潮流の作用等々。これは下手なりに磯からの浮きフカセ釣りをひたすらやっている私には、ごく自然に理解できるものです。
潮が小さかったため激流とまではなりませんでしたが、それなりに速い潮の流れは、私にはさほど苦痛なものではなかったようです。


団子の手返し、フカセの手返し、速い潮、短い竿、スピニングリールのようにラインを自由送り出すことが難しい片軸受けのバイキング...これらの過去の経験やその他の要因から組み立てると、自ずと堂の浦での手返しは噂通りの速いものとなります。

流れが出ている状態では、潮の速さに合わせて竿先を送る訳ですから、ラインを自由に送り出すことが難しい以上、(穂先の移動可能距離/潮の速度=仕掛けを流す時間)となります。

潮が動いていない状態であれば、手返しのスピードを落とすことは可能ですが、これは紀州団子的に考えても、団子から刺し餌が抜けた後が最もチヌが刺し餌を口にする可能性の高い時間であるので、手返し回数を増やせば増やすほどチャンスは増える訳です。


1投目、2投目...その感覚を確認していると、穂先が僅かに魚信らしきものを伝えます。
兎に角最初のアタリはアワセてやろうと思っていたので、そのままアワセを入れます。シンプルな仕掛けと短い竿を通して魚の引きが伝わってきます。かなりの小物のよう....記念すべき堂の浦1匹目はキスでした。

しかし、これで何とかアタリが取れることも確認でき、「何とかなるかも...」という安心感が出てきました。


少しすると、団子が着底前にゴンゴンと叩かれ、底に届かなくなってきました。これが噂の掛かり釣りのボラのようです。

現状の団子では着底まで持ちそうにないので、いぐちさんに相談して少し土を加え、団子を固めに調整します。

何とか底まで団子が持つようになりました。

硬い団子では、手でラインを引っ張って刺し餌を抜くのは難しいようです。ファミレスでの作戦会議通り、団子をボラに割らせる作戦に出ます。

バシッ!穂先に出たアタリに素直にアワセを入れると、とうとう掛かりました。ボラです。

これが凄いパワー。ボラに対する今までの私のイメージを完全に覆しました。右手首にボラの強烈な引きが集中的に掛かってきます。竿の握り方が少々拙かったようで、上手く竿を保持した状態でリールが巻き取れません。

やっとの思いで初ボラを玉網に納めました。

今日は何度も何度も、ボラの強烈な引きに襲われました。キーン(糸鳴り)、ギシギシ(リールと竿がきしむ音)、「もうやめてぇ〜」(私の悲鳴)...


ボラのアタリがある程度把握できるようになったので、ボラのアタリの出るエリアでのアタリを見逃し、そのまま仕掛けを流します。

クック〜ンっと穂先が2〜3cmほど動きます。アワセ!これは...ボラじゃない...「チヌや!チヌや!チヌやぁ〜!」。チヌ特有の引きが短竿を通じてダイレクトに伝わってきます。銀鱗。感無量。

堂の浦で30cmクラスのチヌを釣り上げることができたのです。取りあえず目標達成です。
堂の浦のチヌは周防大島のチヌより体高があって大きく見えます。

(なお、左の写真のエプロンは、団子での汚れを防止するために、いぐちさんから戴いたものです。)

連発を期待したのですが、同じようなアタリは続きません。


いぐちさんの話によると、通常この時期は小チヌが連発するはずなのですが、どうにも今日はこの小チヌが姿を見せない様子です。
セオリー通りに複雑に流れの変わる堂の浦の、この潮変わりに集中して、数少ないチヌアタリを捉えるより他はないようです。

ボラとの格闘を繰り返しながら、今度は潮が緩んだ時に、ボラのエリアから刺し餌を移動させて、軽く誘いを掛けたときアタリが出ました。2枚目。

続かない状況の中、ポツリ、ポツリ。更に2枚のチヌを手中に収め、計4枚となりました。

このあと、ひたすらボラとの格闘を繰り返す私の斜め後ろで、本日唯一の連発が出ました。流石です。堂の浦のスペシャリストいぐちさんが3連発を見せて下さいました。


あと1枚。切りよく5枚釣りたかったのですが(欲が出てます)、迎えの渡船の時間が来てしまいました。納竿。


いぐちさんには物足りない状態だったでしょうが、全くの初心者の私には、ボラの強力な引きを嫌と言うほど堪能できましたし(これほどボラが刺し餌を喰い込むことは珍しいそうでした)、1号フロロカーボンハリスの強さも実感できましたし、何よりチヌの顔が見れて.....

兎に角、楽しく、夢中になれる一時。これほど純粋に釣りを楽しんだのは何時以来だろう?

釣りってこんなに面白かったんだ。
私の心の中に、釣りを始めた頃の...そして何も考えずに磯を歩いていた頃の気持ちが蘇ってきたようです。
まだ、竿を出したい。もっと釣りをしていたい。



・・・・再びファミレス。Sさんと再会します。

ここでいぐちさんとはお別れすることとなりました。元々はいぐちさんに、いぐちさんに紹介しても戴いたホテルへ連れていって戴く予定だったのですが.....そうです。Sさんと夜釣りに出発!

今度は一路姫路へ。Sさんのホームグランドの護岸のテトラから夜釣りをします。

このポイントでは少し時期が早かったようで、チヌの顔は見れませんでした。ただ、夜釣りなのに良型のサヨリが群れていたらしく、Sさん宅のおかずはキープできました。


姫路から神戸三の宮のホテルまで。再びSさんに送っていただきます。流石に仮眠を取ったとはいえ、30分程度しか寝ずに堂の浦で一日釣りをしている私は疲れが出てきました。ついついスゥ〜っと寝てしまいました。

嫌な顔一つせずに遅くまで付き合って下さったSさん。本当に有り難うございました。



インターネットを通じて知り合った仲間との交流。これがなければ堂の浦で掛かり釣りをすることも、姫路で夜釣りをすることもなかったでしょう。
色々なことがありますが、やっぱりネットは素晴らしいものです。
そして、釣りもね。

妙に気分が晴れ晴れしている私でした。


堂の浦...また、おじゃまします。



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