コラム:祭り(選挙)のあと
(2026.2.8)
実はこれを書いているのは2月5日である。
公職選挙法に引っ掛かってはいけないので(引っ掛からないだろうけど)選挙日の午後8時ちょうどにアップしたものである。
衆議院議員選挙が行われた。
これを書いている時点では分からないが、恐らく高市自民が圧勝しているだろう。
今回はその要因を探ってみたい。
本来であれば、今回選挙をやって自民党が勝つ可能性など殆どなかったはずである。
何せ中国新聞によれば、今回有権者が選んだ選挙の焦点は、1 物価高対策、2 政治とカネ、3 医療・介護、であったという。
高市首相は1についてはまだ何もしていないし、それどころか「円安でホクホク」と物価高の原因の一つである円安を肯定した。
2、3についても目立った改善の動きがなく、特に2に関しては自ら「裏金議員」を多数公認する始末である。
そもそも、物価高対策を本気でやるのなら解散総選挙などやっている暇はないはずである。
本人が「働いて働いて…」までやらないと解決しない政策課題が山積している状況である。
寒い時期にいきなり、ということもあり、今回の解散自体極めて評判が悪かったはずである。
にもかかわらず、高市自民は圧勝しているだろう。
要因は2つある。
まず、高市首相の戦略家としての能力である。
自身が自民党総裁、ひいては首相に就任し、内閣支持率が非常に高い。
この時期にブーイングを浴びることも厭わず解散に打って出た。実際、これは戦略家としては見事なものであった。
そもそも、今現在自民党が一枚岩ではない。
後述するが、旧立憲民主党と旧公明党が合併して「中道改革連合」を結成した。
恐らく、本当はもっと時間をかけてやりたかっただろう。
そして願わくば、自民党のリベラル派と目されるメンバー(石破前首相や岸田元首相など)を取り込んで、「中道」と呼べるメンバーで大きな塊を作りたかったはずである。
その時間を与えなかったのが今回の解散劇であった。
解散から投開票まであまりにも時間が少なかったため、「中道改革連合」の名前を浸透させる暇もなければ、自民党のリベラル派が離党→合流を検討する暇も与えなかった。
また、自身に対する旧統一教会絡みの火の粉が降りかかることも懸念材料だっただろう。
時あたかも安倍元首相銃撃事件に係る求刑→一審判決が下る頃合いであり、そこを狙って旧統一教会絡みの文春砲が炸裂した。
しかし、選挙の喧騒に紛れてあまりメディアでも触れられていないところである。
この他、前述の「円安ホクホク」発言など、実は結構やらかしている。
もしあと一か月解散が遅かったら、彼女を取り巻く状況は全く違うものになっていた可能性がある。
なので、この時期に解散を打ったことは戦略的には大成功だったのである。
もう一つの要因は、偏に他党がだらしないからである。
特に酷いのが、本来高市自民と対峙する立場にあったはずの旧立憲民主党である。
選挙が決まった後でいきなり「公明党と合併しま〜す!党名変わりま〜す!よろしく〜!」などと言われても困惑しかない。
せめてお互いの党名は残しつつ、政策協定を結んで選挙区調整をして協力関係を作る、程度にとどめておくべきだった。
解散が決まった時点ではまだ表にはなっていなかったのだから、引き返すことは出来たはずである。
彼らは考えられる限り最悪の選択をした、と私は断言する。
そして公明党は、政教分離の原則に違反していると言われて評判の悪い創価学会を母体とする、事実上の宗教政党である。
旧立憲の支持者の中にも公明党・創価学会にアレルギーを持つ者もいるだろう。
これでは高市首相を「旧統一教会とズブズブ」と指弾しても説得力がない。
おまけに野田代表まで「旧統一教会と関係している」という疑念を与えかねない写真が出てきた。
この件についてはしっかりと説明をした上で、旧統一教会の問題についてもう少しはっきりと争点化すべきだったと思う。
次に右派野党である参政党である。
私は以前、「高市氏が自民党総裁になったら参政党は消えてなくなる」と言ったが、そこまではいかないにしても往時の勢いはない。
自民党が、党内では比較的リベラルな方に属する石破氏を総裁に選んだから岩盤支持層(=ネトウヨ)が反発して他の選択肢を求め、そこに参政党がハマっただけである。
高市氏が自民党総裁になったので、彼らは自民党支持に戻った。それだけのことである。
参政党は志は高くて立派なのだろうと思うが、中身がそれについていっていない。
かつて改憲草案として出した文書も酷いものであり、有識者にせせら笑われていたレベルである。
選挙公報には今回の選挙の争点について各候補者に聞いた回答が載っているが、参政党の各候補者が出したそれは非常に簡単なもので、またどう見ても自分でしっかり考えて出したように見えない。
この党はまず、「政治のプロ」としての政治家を育てることから始めるべきだろう。
同じ右派野党に日本保守党がいるが、これもほぼ状況は同じである。
ただ、ここの場合は百田尚樹氏が代表にいることで、相当程度支持層に逃げられていると思う。
かつて旧統一教会の教義を絶賛する発言をするなど問題のある言動を繰り返している。
あとあまり他人様の容姿について言いたくないのだが、写真の向こうからでも加齢臭がしそうなその風貌もイメージを下げている気がする。
こここそ女性(有本香氏など)を看板に立てて爽やかな印象を与えるようにした方が良いと個人的には思う。
では女性ならいいのか、というとそうではない。
旧立憲の蓮舫氏や辻元清美氏、共産党の田村智子委員長、そしてれいわ新選組のカリスマだった山本太郎氏の後を継いだ大石晃子代表に社民党の福島瑞穂党首と、女性で各党の党首や要職に就いている人は多いのだが、揃いも揃って評判が良くない。
彼女たちに共通しているのは、「ヒステリックにぎゃあぎゃあ騒ぐおばさん」という印象を世間に与えていることである。
彼女たちはいずれもリベラル〜左派の野党に属している。
野党であれば与党の失策を攻撃するのは当たり前なのだが、その攻撃のやり方が悪い。
一言で言うと冷静さがない、理性が感じられない。
高市首相が(少々作り笑いっぽくはあるが)常に笑顔を絶やさず、冷静にことに対処している姿とは対照的に映る。
高市首相は、思想信条は賛否が別れるものの、人間としての評判は非常に良好である。
思想が真逆と見られる前述の辻元氏すら、国会を離れれば同年代の女性政治家として友人と呼べる仲だそうである。
世論調査で内閣支持率を調査する際、「支持する理由」を問われるが、恐らく「人柄が信頼できる」がぶっちぎりでトップだろう。
その「個人としての評判の良さ」が、自身「高市早苗が総理でいいのか」と争点とした今回選挙の勝利につながったと見られる。
特に若い人は失礼ながらあまり政策には興味を持たないだろう。
どちらかと言えば人柄を見て票を投じる傾向が強いのではないだろうか。
「高市首相はいい人そう、他の党はキモいおぢさんとヒステリックなおばさんばっかり」とくれば、高市自民に肩入れするのは理解できる。
その「キモいおぢさん」が選挙目当てに党利党略に明け暮れているのなら尚更である。
あと、国民民主党についてだが、ここも元々ネット上で支持を集めて躍進したのだが、それを全部高市自民に持って行かれただけである。
ガソリン税の暫定税率の廃止や「年収103万円の壁」の引き上げを自らの功績として喧伝しているが、これは自民党が少数野党になったから飲んでもらえただけであり、自民党が他を圧倒する数を得た以上、彼らに出来ることはもう何もないだろう。
自民党が多数を得ていた頃、何度もこの種の約束をして反故にされていた、あの時代に戻るだけである。
今後どう高市政権と対峙するかは分からないが、このままでは遠からぬうちに自民党に吸収されることになるだろう。
それは現在既に吸収されかけている日本維新の会も同じである。
多分だが、維新が血道を上げている国会議員の定数削減を自民党はやる気はないだろう。
以前高市首相の師匠筋に当たる安倍元首相は、民主党政権時に野田首相(当時)に「定数削減をするから解散総選挙をしよう」と迫り、野田氏がこれに応じて選挙になって政権を奪い返すと、そんな約束などまるでなかったかのように何もしなかった。
自民党が多数の議席を得れば、維新は確実に捨てられるだろうし、その後のことは容易に想像できるだろう。
チームみらいと減税ゆうこく連合については、まだ評価する段階にないと思うので保留する。
さて、評論はここまでにして、一つ考えなければならないことがある。
「中道改革連合」が目立った成果を挙げられず、旧立憲民主党+旧公明党の議席数に及ばない数しか獲れなかったとして、彼らに入るはずだった票は一体どこに逃げたのだろうか?
そもそも前回の衆議院選挙が自民党の「政治とカネ」の問題の渦中で行われたものであり、本来自民党に入るはずだった票がかなり逃げた。
その行き先は恐らく、前述の参政党だったり国民民主党だったりするのだろう。
それが自民党に戻ったので自民党が増えて他党が減るのは分かるが、旧立憲民主党や旧公明党がそれほど減るとは考えにくい。
旧立憲民主党であれば、根っこが同じである国民民主党に行くのかも知れないが、なら国民民主党が大勝するはずである。
旧立憲の支持者が自民党や共産党、ましてや参政党や日本保守党などに鞍替えするとも思えない。
旧公明党の支持者は尚更である。何せ彼らは宗教である。理屈ではない。
そうなると、国民にとって「保守」「中道」「リベラル」という思想的な垣根はそれほど大きなものではないのかも知れない。
たとえば自民党支持者が共産党に入れることは考えづらいが、極端な左右を除けばその時の「風」で決まってしまうものなのかも知れない。
それを理解できずに「中道」にこだわった「中道改革連合」は見る目がなかったということだろう。
こうして選挙は終わったが、問題はこれからである。
はっきり言うが、高市首相はこのままの路線だと必ず行き詰まるだろう。
たとえば対中国に対して勇ましい発言を繰り返して岩盤支持層(=ネトウヨ)のカタルシスに余念がないが、実際のところ中国と喧嘩してもいいことは何もないことは事実である。
両国は経済に関しては強く結びついており、いつか双方が(←ここ重要)どこかで矛を収めないといけない。
それが出来るだけの外交手腕が高市内閣にあるのかどうかは注目すべき点である。
防衛費の増額、軍事力の増強についても同じである。
ネトウヨはよく「憲法9条で平和が守れると思うなど頭がお花畑だ!日本も核武装すべし!」と言っているが、日本が核を1発や2発持っただけで諸外国からの攻撃を受けないと信じているのであれば、そちらの方がお花畑である。
たとえば北朝鮮を見てみるがいい。
あれだけ軍事予算を注ぎ込んで核開発に勤しみ、「我こそは核保有国なるぞ」と嘯いているが、何の効果があっただろうか。
将軍様が肥え太る一方で民衆は飢えてやせ細り、国際社会から無視され、時々やけくそでミサイルを海に落とすだけである。
ネトウヨは日本があのような「かまってちゃん国家」に堕すことを望んでいるのだろうか。
むしろ日本が核を持った場合、敵国(と敢えて呼ぼう)に対して侵略の格好の口実を与えることになるだろう。
北朝鮮と違って日本がまだ「侵略する価値のある国家」であるとするならば、「あいつらは国際社会の『核不拡散』のコンセンサスを破って核兵器を保有した。これは我々に対する宣戦布告である。だから日本への攻撃は正当である」と言われて軍事侵攻を受けたら反駁できない。
国際社会にも味方してもらえない可能性が高く、アメリカだってどうするか分からない。その時の為政者にもよるだろうが。
さらに言えば、高市自民が多数派を占める国会において、物価高対策がうまくいかず国民の生活が上向かなければどうなるか。
当初の期待が大きかった分失望も大きくなるだろう。
高市首相がこの点について、どれだけ問題意識を持って、本腰を入れてやるのかに懸かっている。
ただ、私はかなり悲観的に見ている。
自身の政権下で国民を幸せにする自信があるのなら、今この段階で衆議院を解散してわざわざ選挙をする必要がない。
十分に成果を挙げられるのであれば、その後に堂々と国民の審判を受けるべきであった。
首相就任後のいわゆる「ハネムーン」と呼ばれる期間中に、ブーイングを浴びながらでも解散せざるを得なかったのがその証左である。
消費減税についても「そんなこと言いましたっけ?」になると思う。賭けてもいい。
また、懸念材料としては、前述したように自民党が一枚岩ではないということだろう。
今回選挙で勝てば、高市総裁と思想信条において相容れない自民党議員もついて行かざるを得ないだろうから、当座は安泰である。
しかし、もし自民党のリベラル派にとって受け入れ難い事柄(非核三原則の見直しなど)が俎上に乗った場合、それでも彼らは賛同するだろうか。特に広島県選出の議員にとっては非常に厳しい選択になるはずである。
そこへ持ってきて、今が最高潮と見られている高市人気に陰りが出てきた場合、彼らはどうするだろうか。
もしかすると、日本の政治のクライマックスは今ではなく、もっと後になってやって来るのではないだろうか。
以上、コラムでした。
追記
ここから先は2月8日の午後8時以降の記載となる。
自民党が予想以上に圧勝した。そして中道は予想以上の惨敗である。
日本国民がこれだけ容易に思想的に「転向」するとは思わなかった。
さすがにこれは国会・国政のバランスを考えるとあまりよろしくないと個人的には思う。
中道については、有権者が旧立憲民主党のアホっぷりに愛想をつかしたというのが実際のところだろう。
前回参院選では共産党と組んで負け、今回は公明党と合併して惨敗である。
どこかと組まないと勝てない、と思っているうちは政権奪取など夢のまた夢だろう。
さすがにこの結果を受けて野田氏と斉藤氏は共同代表ではいられなくなるだろうし、合併自体がなかったことになるかも知れない。
個人的にはそうなった方が良いように思う。
上述したように、自民党は左右幅広い思想信条を持つ議員がいる。
中道は今回の話をなかったことにして、立憲民主党は公明党とは協力関係程度に留めておくべきである。
その上で、これから時間をかけて自民党リベラル派の切り崩しや国民民主党との協力を図った方が良い。
そうしなければ高市自民の天下は年単位で続くかも知れない。
参政党と維新は私が思ったよりは議席を獲れたが、決して喜べる結果ではないだろう。
自民党がバカ勝ちしたため、参政党は却って存在感としては小さくなったし、維新に至ってはいつ切り捨てられてもおかしくなくなった。
ただ、仮に高市政権が今後国民の支持を失うようなやらかしをして隙を見せた場合や、中国との対立関係の継続や非核三原則の見直しなど「自民党の中でも特に右の人しかついて行けなさそうな課題」が俎上に乗った場合、全員が全員高市総裁にびっちりついて行くとは限らない。
その時のことを考えれば、自民党は簡単には維新を切れないだろうし、参政党に秋波を送る可能性はあるだろう。
個人的には、高市政権の鍵になるのはこの1か月だと思っている。
高市首相に「物価高対策」「消費税減税」を含む公約を真面目に守る気があるのかどうか。
高市首相は上述したように、どちらかと言うと「人柄を信頼されて」支持されているだろうから、仮に公約を破るということになった場合、国民の支持が一気に低下する危険性を孕む。
また、3月4日に旧統一教会の解散請求に対する東京高裁の判断が下る予定であるが、ここでもし「統一OK、問題なし」という結論が出てしまった場合、政権の圧力を訝る報道も出てくるだろう。
多くの国民にとっては「旧統一教会」は絶対悪である。さすがにこれは揺るがないだろう。
高市首相本人を含め、旧統一教会絡みで脛の傷が疼く議員は少なくないから、引き続き政権のアキレス腱となり続けるだろう。
最後に、今回の選挙においても、先の参院選と同様にネット世論、SNSが大きく影響を及ぼした。
与野党ともに実害を被ったようだが、さすがに今の状況を野放しにするのはよろしくない。
今の技術ならばフェイク動画をAIを使っていくらでも作れてしまう。
公職選挙法を改正し、公示後は自身の主張を除く、他党・他候補を貶める情報を発信することは厳しく禁止するべきであろう。