コラム:「広島飛ばし」とオーバーツーリズム

(2025.11.8)


ネットを見ていると、中国放送(RCC)発で興味深いニュースが載っていた。
いわゆるアーティストのコンサートの「広島飛ばし」が問題になっている。
で、それが若者の流出を招き、広島県は人口転出超過全国ナンバー1という称号を持つめでたい県となったと言われている。

個人的にはこの意見には同意できない。
そんなしょうもない理由で出て行く若い奴がいたら、「お前はバカか」と言うだろう。
アーティスト、殊に自分が推している者のコンサートなど、東京だって年に数回だろう。
その「年に数回」のために自分の人生を決定づける生活環境を決めるなど、私から見れば狂気の沙汰である。
何より、本物のファンになれば、推しのツアーに付き合って全国を回るものである。
(私の知り合いにそういう人がいた。ちなみにそのアーティストはクスリでパクらr…おっと誰か来たようだ。)

私はそう思うのだが、多くの広島県民は「広島飛ばし」が人口流出、果ては広島県の衰退の要因だと信じているらしい。
で、その原因を「広島に魅力がないから飛ばされるのだ」ということにしたいらしい。
しかし、上述のニュースによれば、原因はそうではないという。

コンサートのプロモーターに言わせれば、本当は「広島でコンサートをしたい」らしい。
しかし、広島には大きなアリーナがない。
広島で一番大きなアリーナ施設は「県立総合体育館」こと「広島グリーンアリーナ」であるが、ここはあくまでスポーツ振興のための公的施設であるため、有料興行を年間開館日数の10%に制限しているとのことで、それがコンサート開催の敷居を大きく上げているという。

この悪名高き「10%制限」はこの10月から撤廃されたが、これはこのたび、グリーンアリーナがBリーグ・広島ドラゴンフライズのメインアリーナになるからであり、基本土日はドラゴンフライズが使うため、平日しかコンサートを開けない。
これでは開催効果はないに等しい。
大多数の勤労者は平日働いて土日にコンサートを楽しむのであるから、これは彼らに対する嫌がらせでしかない。

このことに関して言えば、解決策は比較的容易である。
広島に新アリーナを建設しようという機運が現状あるようだから、「コンサートのための」新アリーナを拵えれば良い。
建設費が嵩むとか土地がないとか言うのなら、一旦グリーンアリーナを解体して建て替えるのも一案である。
で、ドラゴンフライズがどうしてもそこで試合をしたいなら、土下座をして頭に床を擦り付けて「どうかやらせてください」と言ったなら考えれば良い。
何ならコンサートの前座としてドラゴンフライズの試合を開催すれば万事丸く収まる。

そもそも、広島のプロスポーツチームだってそんなに簡単に自前のスタジアムを手にした訳ではない。
今は我が世の春を謳歌してふんぞり返っている(斜陽になりかけているが)広島東洋バカープでさえ、「たる募金」を市民から募るなどの苦労を重ねて今のマツダスタジアムを手に入れた。
サンフレッチェ広島に至っては、3回リーグ優勝して初めて新スタジアムの話がまな板の上に乗ったのである。
先日もガンバレレバンガ北海道に2戦連続大逆転で惨敗したドラゴンフライズを見ていると、「こんな連中に新アリーナが必要だろうか」と思う。
はっきり言うが、サンプラザさえ埋められないくせに新アリーナなどちゃんちゃら可笑しい。

と言うことで、広島に「原則コンサート用、ドラフラはおまけ、前座」という名目でアリーナを作れば万事解決である。
…と思ったが、実際はそれだけの問題ではないという。

最も大きな問題はホテルなどの宿泊施設の不足であるらしい。
今広島駅前にはやたらアパホテルが建っているが、確かにそれを除けばホテルの数は少ないように思える。
特に最近はインバウンドの外国人が大挙して来訪しているから、尚更不足感が強い。

日本で外国人にとって名の知れている都市を3つ挙げれば、東京、京都、広島だろう。
このうち、東京は首都であり世界中の人が集まることを前提に街が作られているから、宿泊施設はアホほどあるだろう。
京都はアーティストのツアー会場になる必要がない。行きたければ新快速で20分で行ける大阪でやっている。
こうなると困るのは広島である。地方都市に過ぎず、外国人観光客が大挙して押し寄せ、その上コンサートの客を捌かないといけない。
これは物理的に無理というものである。

とりあえずやるべきことは、殊に広島市中心部(紙屋町・八丁堀)へのホテルの誘致である。
土地がない、と言われるかも知れないが、今アホみたいに建っている、誰が住むのか分からないようなマンションや過当供給にしか思えないドラッグストア、その他諸々の不要物を潰せば土地は確保できるだろう。
さらに言えば、あのシャレオとかいう無駄な空間はどうにかならんのか。もはやシャッター商店街と化しており、放置するのは広島の恥である。
このように、広島にはまだまだ有効活用できる空間が残されている。

郊外にホテルを増やせば良いのではないか、という説もあると思うが、これはダメである。
郊外に作ってしまうと、広島市中心部から郊外に至る交通網がマヒする。
広島の公共交通機関は他の同規模の都市と比較して、地下鉄などの高速鉄道網がない分大変貧弱である。
市内を走るバスの運転手の確保すらままならないのが現状である。
宮島を訪れる外国人観光客すら捌き切れていないのに、これ以上郊外に人を入れるのは自殺行為である。
可能なら観光客はできるだけ市内中心部に隔離しておきたい。
広電をぶっ潰して新しく地下鉄でも建設するのであれば話は別だが。

一つ言えることは、広島の如き規模の都市にこれだけの観光客を招き入れるのは分不相応である。
可能ならば外国人観光客の皆様におかれては、観光シーズンを外して来ていただけると有難い。
最悪なのは、秋の紅葉が綺麗な季節に宮島に来ることである。これは絶対にやめていただきたい。
最後に、「これをやったら嫌われる!外国人観光客のタブー3選」を書いておく。

1 通勤時間帯に公共交通機関を利用する。
日本では(どこの国も同じだと思うが)朝の7時から9時くらいまでと、夕方の6時から8時くらいまでは通勤客で公共交通機関が満員となる。
ただでさえ「仕事たりいなあ」と思いながらラッシュの電車・バスに詰め込まれているところへ、「遊びに来ました〜♪イエー♪ハッピ〜♪」みたいな連中が、また場所を取って邪魔になるスーツケースをガラガラぶら下げて乗り込んで来たらどんな気持ちになるか想像できるだろう。
なお、一般的には上述の時間帯が通勤時間帯であるが、広島には朝の6時から夜の10時まで残業代も出さずに従業員をこき使うバカボン社長が経営しているブラック企業が多いため、通勤時間帯はもう少し幅広くなることも申し添えておきたい。
この時間には公共交通機関を利用しないことをお勧めする。

2 英語で話しかける。
私が外国人観光客を見て驚くのは、日本語が喋れないのにガイドなしで来ている人が多いことである。
私は韓国とバリ島の計2回しか海外に行ったことがないが、ハングルもインドネシア語も話せないため、現地ではガイドさんに随分世話になった。
そんな経験から言えば、今の外国人観光客が、まして決してメジャーとは言えない観光地にまでガイドなしで来ているのは信じられない。
それは良いのだが、そういう人たちが困った時、道を歩いている見知らぬ地元民に英語で助けを求めているのには違和感がある。
私から見れば「お前ら英語くらい分かるだろう、困ってるから助けてくれ、分かるだろ?」と強要しているように思える。
昔読んだ漫画「こち亀」で主人公の両さんが外国人に話しかけられ、「日本語覚えてから来い、シャラップ」と言っていたが、もっともである。
今はスマホが翻訳してくれるからその種のトラブルは減ったと思うが、日本は貴国の植民地ではないのだから、それなりの礼儀は必要である。

3 規則やマナーを守らない。
以前バスに乗った時、外国人観光客と思しき連中が、金も払わないで堂々と降りようとして運転手に止められていた。
まさかとは思うが、彼らは「日本ではバスに乗っても金を払わなくて良い」と教えられてきた訳ではないだろうね。
このような連中は論外であるが、外国人観光客(の一部だとは思うが)は日本人に比べてマナーがなっていない。
外国人観光客で賑わっているところは、多くがその裏で「ごみのポイ捨てが増えた」「落書きをされたり建物に傷をつけられた」などの被害を受けている。
さらに言えば、公共交通機関に乗った時に大声で喋るのも御法度である。
あと、たまにバスの吊革で体操の吊り輪をやって遊んでいる子どもがいるが、これも御法度である。
日本には「空気を読む」という言葉がある。周りが静かにしていたら、自身も静かにするのが他国に来た時のマナーである。

私は某右翼ポピュリズム政党の支持者ではないので、江戸時代のような尊王攘夷を謳う気はないが、大挙してやって来る外国人観光客が広島の人たちの生活にあまりよろしくない影響を与えていることは確かである。
また、国籍関係なく現在の広島を訪れる観光客の数は、広島レベルの地方都市から見ればキャパオーバーである。
「宿泊税」の導入も取り沙汰されているが、観光立県であることと地元民にとって住みやすい県であることを両立する必要がある。
そうしないと、観光客の増に反比例してますます人口が流出していくことになるだろう。

以上、コラムでした。



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