すちゃらかエッセイ
2025.4.6
第77回 パラダイスがやって来た!その2
別項でも書いているが、私の趣味の一つにラジコン(RC)がある。
私がやっているのは、道なき道を走るクローラーと、ミニサイズのオフロードバギーであるミニッツバギーである。
両方ともマイナーカテゴリーであり、「何故好き好んでわざわざそのジャンルを選ぶ?」と言われそうである。
このようなマイナーカテゴリーをやっている時に一番困るのは、走る場所がないことである。
前者においては、本来なら岩場や河川敷で存分に走らせたいが、家の周りには該当する場所がなく、公園で細々と走らせている。
今日は春の麗らかな日曜日であったので、近所の公園でのんびりと走らせてきた。これはこれで良いものである。
しかし、やはり本来のテリトリーで豪快に走らせてみたい、というのもまた本音ではある。
で、後者のミニッツバギーであるが、オンロードタイプのミニッツレーサーのサーキットであれば近所の「ホビーショップタムタム」にあるのだが、ミニッツバギーは走らせることができない。
また、ミニッツバギーは形はバギーであるが防塵性がないため屋外で走らせることはできない。
このため、今までは自分の家の決して広くない部屋の中で、速度3割減の「トレーニングモード」で細々と走らせていた。
これではあまり面白くないので、現状「メカいじり9割、走行1割」であった。
そんな私に、思いがけず吉報が舞い込んできた。
去年の年末に、駅前に「EKIMAEサーキット」という屋内サーキットができて、ミニッツバギーを含む小型バギーも走行可とのことである。
あまり派手な宣伝はしていなかったのでなかなか場所が分からなかったのだが、ネットを駆使して場所を突き止めて行ってみた。
サーキットがあるのは、広島駅西側の手芸屋さんの6階である。
当たり前だが、入ると手芸屋さんであり、客と店員は100%年配の女性である。
本当にここで良いか何回か出入りして確認した後、意を決して入店して奥に進んだ。
店の真ん中のレジに少々寂しげなヘアスタイルの中年男性がいて、受付をしてくれた。
2時間の利用料金1000円(平日なら800円)を払って首から下げる札をもらい、エレベータで6階まで上がる。
エレベータを降りると、右側がオンロード、左側がバギーの屋内サーキットになっている。
オンロードの方は3人ほど利用者がいたが、バギーの方は誰もいなかった。
ということで早速走らせてみたのだが、コースを一周回るというだけのことが非常に難しいことに気付くまで時間はかからなかった。
まず、サーキットをまっすぐ走るのがあんなに難しいとは思わなかった。
ただでさえ難しいことなのだが、ミニッツバギーはその特性上若干の舵残りがある。
その所為でたとえば左に曲がってその後直線を走ろうと思えば右に少し舵を戻す必要がある。
しかし戻そうとして右に切ると切り過ぎてぶつけてしまう。
このようなことを繰り返しているうちに悲劇が起こった。
フロントのナックルアームを固定するキングピンが落ちたのである。
非常に小さな部品であるため、サーキットの中で右往左往しながら目を皿のようにして探し回った。
正直、自分以外に誰もいなくて助かった。誰かいたら大変な迷惑である。
さらに、この日はドライバーを忘れてきてしまった。
キングピンは見つかったのだが、直すことができない。
結局この日は実際走ったのは30分ほどで、残りの時間はコースを眺めたり、オンロードの方を走る人たちを眺めたりして過ごした。
そんな私のところに、一人の男性がやってきた。
「ホットショットですか」と声を掛けてくる。
私のミニッツバギーはミニ四駆の「ホットショットジュニア」のボディを流用して載せているので、それが珍しかったらしい。
その他にも、私のマシンはオプションをてんこ盛りにしているので、それも興味を惹いたらしい。
「写真撮っていいですか」と言われたので、これを快諾しておしまいとなった。
さて、このコースの注意事項であるが、まずトイレが分かりにくい場所にあるので気を付けた方が良い。
私も最初は分からず、係員の方が教えてくれたのでようやっと分かった。
また、自動販売機がないのであらかじめ飲み物を買っておいた方が良い。
一度店を出て買いに行くのは問題ないし、近くの自動販売機の場所を紙に書いて貼ってあるのでそれを見れば良いのだが、時間の無駄である。
2時間過ぎて会計の中年男性に札を返すと、LINEへの「友だち登録」を頼まれたので、しておいた。
このコースからのお知らせなどが届くらしい。
レジの近くにはミニッツバギーなどのパーツが売られている。
広島市内にはミニッツバギーのパーツを売っている店がないため、何気に貴重である。
品数は多いとは言えないが、もし破損や紛失などでパーツが必要になったらお世話になることになるかも知れない。
走行という点では満喫したとは言い難いが、大変面白い経験であった。
いくつかの教訓を得たので、翌月に2回目の参戦をした。
この日はオンロードもバギーも人がおらず、貸し切り状態であった。
操縦の腕前は相変わらずである。
全国にはミニッツバギーのサーキットが何カ所かあり、YouTubeの動画も上がっている。
ミニッツバギーは上述のような特性があるため操縦が難しいと思うのだが、動画では皆さん大変器用に操っておられる。
このレベルになればさぞ楽しかろうが、なれる気がしない。
ただ、今まで2回訪れて大変楽しかったので、またちょいちょい行きたいと思う。
とりあえずは人のいないところで、ひっそりと練習できれば幸いである。