抜き打ち検査


私はときどき、何もしたくない時期がある。仕事は時間になれば行く。そして8時半になると頭にスイッチが入る。それは幼稚園時代からの習慣で、家を出れば8時半には学校や仕事が始まる。こういう生活を30年近く続けているのだから、8時半にスイッチオンはもう体内時計にも仕込まれているだろう。問題は自分一人で家にいる時間だ。とにかく何もする気になれない。新聞どころか広告すら読む気になれない。いくら部屋が散らかっていようとも掃除する気になれない。洗濯物は取り込んだまま、畳む気になれない。ご飯も作る気になれない。茶碗も洗う気になれない。日常生活で必要な事ができないくらいだから、ホームページの原稿書きや、ミュージカルの稽古(暗記)、読書など生産的な活動はまるでやる気にならない。この話は前にも書いた。こんな状態を「しぼんだ風船状態」という。

こういう時期、テレビやたまっているビデオを見る事さえおっくうなのだ。テレビを付けてソファーに横になると1時間もしないうちに寝る。夜中にハっと目が覚めて「もう4時間も寝てしまったのか」と思って、また朝まで寝る。目が覚めた時に、炊飯器をセットして、お弁当のおかずでも作っておけばいいものをそのまま寝る。とにかく何もしたくないのだ。

いくら貯めると言っても、洗濯は1週間が限度。それ以上放っておくと着るものもタオルもなくなる。茶碗も2日も放っておけば流しがいっぱいになり、身動きができなくなる。なので何日かおきにどうしても必要に迫られるものは片づく。問題は片づけと掃除機。人間はホコリじゃ死なないもんだから、ついつい後回しに。1週間で黒い家具の上にうっすらホコリが積もっていく。2週間で部屋の隅にホコリがたまっているのが見える。3週間…そろそろ床がザラザラしはじめ、限界を迎える。そして大掃除が始まる。限界を迎え、一旦やりはじめると、あれもこれもと大掃除になってしまう。当然、終わった後は疲れる。我ながらそこまで家事を貯めなくてもと思う。

実は先月の12日あたりまでこういう状況だった。14日に友人が遊びにくるので、13日に一念発起。家中ピカピカになった。友人はいつもきれいにしていると言ってくれるが、汚い家を見せてないだけだ。しかし、時々、家に帰ってドキっとする事がある。干した覚えのない洗濯物が干してある時だ。留守中に親が来たのだ。あまり掃除をしていないときは「うわー、見られたか。」という気分になる。退職してヒマになったのか、最近抜き打ち検査のように親がよく家に来る。おかげさまで、いい緊張感が出て、ここ1カ月ぐらい家はいつもきれいだし洗濯物もたまっていない。さっそく今日も親が来た。今回は抜き打ちでなく予告があった。今日の成果は台所がピカピカになった。いい傾向だ。この調子でキレイな家を習慣づけないと。たまにショックを与えなきゃ、自分に厳しくできない私。でも親が毎週来るようになったら、緊張感なくなるんだろうな。

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