ギリギリガールズ 富士登山部2006


富士山の看板

ここ最近、ダイビングや体験舞子、太秦映画村で侍に切られるなど、私たちギリギリガールズは日本各地でギリギリぶりを発揮してきた。そして今回、何年も前から話が出つつも果たせていなかった富士登山をついに決行することになった。7月の海の日では富士登山の準備が間に合わないのでお盆に行くというのが本来の計画だった。本当はこの日程で沖縄に行きたかったのだが、チケットがとれなくて、ダメモトで一回行ってみるか、という話になったのだ。そもそも私たちの登山経験は2006年5月から始めて4本。5本目で日本一の富士山に挑戦するとは山をナメているとしか思えない。

何年か前から富士登山の話「だけ」はあったので、リュック、カッパ、登山靴など、値の張るものは何年も前からじわじわ買って持っていた。5月から大島や宮島の弥山など、トレーニングがてらちょこちょこ登ってはいた。この7月になって急に富士登山の計画が現実化したので、私はインターネットで足りない物を注文、なんとか間に合わせた。出発前日まで100均で軽い財布やペットボトルホルダーを買うなど、荷造りもけっこうギリギリだった。

しかし一番の問題は天気だ。今年はまだ梅雨明けをしていない。下界は晴れていても山頂は雷雨だったりすることもある。2週間位前から静岡の天気予報をマメにチェックする。とりあえず2日目に泊まるホテルだけ押さえて、新幹線のキップはギリギリまで買いに行かないことにした。出発前日発表の静岡の天気は、15日曇り、16日曇り時々雨。梅雨時、時々雨や一時雨を恐れていては行動できない。登山用カッパも買ったことだし一応行ってみることにした。

新岩国を6時50分に出る新幹線に乗る。そこまではよかった。6キロ近いリュックを背負い、広島から新大阪まで座れなかった。朝早いのぞみなのに意外に福岡からのお客が多い。立っているだけで足がしびれてきて、「こんなので登山は大丈夫かいな…」という気になってきた。手の血管が浮いて酸欠っぽい感じになってきたので、食べる酸素を試しに食べてみた。30分ぐらいしたら、手の腫れも引き、気分も少しよくなった。案外聞くようだ、食べる酸素。やっと新大阪で座れて、ちょっと靴を脱いだら楽になった。3人とも靴を脱いで、リュックの上に足を投げている姿はなんだかオヤジである。車両の一番端の席だったので、私が壁に爪先をつけ、ヨリちゃんが足の裏をべったりつけ、笑ちゃんは膝を曲げて壁に足をつけている姿は、身長差があるとはいえおかしい。名古屋でこだまに乗りかえる際に駅弁を買って乗る。前々から立ち食いきしめんが気になってはいたのだが、乗換が16分しかないので今回は諦めることにした。いつか食べてやるぞ、立ち食いきしめん。ホームにあるきしめん屋は混んでいたので、案外おいしいかもしれない。

新富士に11時35分につく。バスは12時半なので、コインロッカーに荷物を預けて駅のまわりをウロウロして過ごす。天気は昨日の予報よりよくなっていて、曇り時々晴れぐらいになっている。真夏なので下界は暑い。五合目まで行くと標高が2400mぐらいなのでここまで暑くはないだろうが、バスを待つ間に大汗をかいた。

登山バスに乗り、途中、湧玉の池で10分休憩をとる。富士の湧水を引いた池にはニジマスのような大きな魚がいて、水がとてもきれいだった。また、ここには厳島神社の分社がありびっくりした。湧玉の池の本殿まで行く時間がないので、とりあえず厳島神社に旅の無事を祈ってバスに戻った。新五合目に15時前に着き、16時ごろまでみやげ物屋で試食しながらフラフラする。雨が降りそうな感じになってきたので、カッパを来て16時10分に新五合目を出発する。

今日の宿泊先は新7合目のご来光山荘、標高は2780m。新五合目とは380m差なので、2時間もあれば楽勝な気がしていた。しかしカッパを着るとかなり動きにくい。そもそも3人は登山スタイルが違う。ヨリちゃんは休まずずーっと歩き続けのカメタイプ。私はガンガン登って時々休むウサギタイプ。笑ちゃんは行きは私と同じだが下りは早い。200メートルの下りで笑ちゃんと私では2分ぐらい差がついてしまう。しかし今回笑ちゃんはかなりセーブしていた。子供の頃家族で富士登山に行き、高山病でエライ目にあったらしい。今回はヨリちゃんのペースでゆっくり登っていた。登る途中ヘンな人に沢山会う。サンダル履きにミニスカートのおネエちゃん。どー見ても登山の姿ではない。それからイチゴパンツの外人。なぜにイチゴ柄?。あまりに珍しいので、イチゴパンツの君と勝手に記念写真を撮る。私がガーっと登っては後続を待ち、のパターンで17時半ごろまで登った所で、このペースでは18時(夕御飯がいる場合は18時までに山小屋に着くように、とあった。)までに山小屋に着けないことがわかり、私だけ先発で登ってあと2人来ることを山小屋に伝えに行くことにした。私は18時、20分後ぐらいにヨリちゃんと笑ちゃんが着いた。

山小屋に着いて、私たちの寝るスペースに案内された。一段6人寝の押し入れのような所だ。下の段にはもう寝ている人がいる。山頂でご来光を見るつもりなら、夜中の10時とか11時とかに出発なので、もう仮眠タイムだ。私たちは荷物を出し入れするナイロン袋のガサガサ音を気にしながら、まわりに誰もいないので、汗をかいた服を着替える。夕御飯のカレーを食べて、自分たちのスペースで寝転がる。敷いてある布団が湿って冷たいのが気になる。せっかく着替えた乾いた服が湿ってしまいそうだ。みんな汗だくの状態で寝ているのだろうか?。店の戸が開けっ放しなので湿っているのか?。22時ごろまで仮眠して、星をみるために起きる。曇っていて星は見えなかったが、ヘッドランプをつけて夜登ってくる人がみえる。道なりに明かりが連なってキレイだった。もう一回寝て、つぎは日の出を見るために4時半に起きる。日の出は見えなかったが、虹が見えた。なんだか幸先がいい。笑ちゃんはすでに気分が悪い様子。私とヨリちゃんはおにぎり完食だったが、笑ちゃんは1個だけ食べた。朝御飯を食べてすぐ出発する予定だったが、山小屋発は6時10分。何にそんなに時間がかかったのだろう。

元祖7合目に7時5分ごろついて岩に座って一息、20分ごろから8合目を目指す。山小屋のベンチは人が多いし、トイレ処理の関係の軽油を焚く臭いで酔いそうになるので、ベンチより岩の方が私は好きだ。途中大雨に降られて、8合目の小屋で雨宿りする。小屋は雨宿り客でいっぱいで、席をとるだけで随分かかった。暖かい飲み物をそれぞれ注文した。氷混じりの雨が降っているので前に進むかどうか迷ったが、10時15分ごろ出発。今日は26時間テレビの中継班が来ているらしい。赤いQマークのTシャツを着たスタッフがたくさんいる。富士登山の企画など何も聞かされてなかった人もいたようで、いかにも準備不足でバテバテみたいな人もいて、ちょっとかわいそうだった。一団の中に石原良純さんがいた。中継隊と抜きつ抜かれつしながら9合目へ。9号目に10時15分ごろ着き、石原良純さんと並んで勝手に記念写真を撮る。富士山は雨に加えて風も強い。岩国では台風でも風速10mも吹けばいいとこだが、風で飛ばされそうになりながら歩くのは台風中継をやっている気分である。山小屋でゆっくり登ってくる笑ちゃん待ちになるので、休憩時間は結構長い。9合5酌の山小屋に10時55分ごろ着き、出発は11時15分ごろ。さすがにこの位になるとウサギの私もバテてきた。ヨリちゃんと同じペースで進む。ちょっと登っては岩に座り、酸素を食べた。私は山頂の少し前で酸素を全部食べきってしまった。酸素の一日の目安は20粒。ケースに90粒ぐらい入っていたので少々大丈夫だろうと思い、ガンガン食べていたらなくなった。そして山頂に12時半ごろ着く。

すごい風で、山頂でまったりできるスペースがあるかもと持ってきたレジャーシートが完全に無駄になった。レジャーシートを広げるどころか、広げた自分ごと飛ばされそうだ。鳥居の所でウサギの耳をつけた写真をヨリちゃんと撮りあっているうちに笑ちゃんが追いつき、他のお客に3人写真を撮ってもらった。8合目の小屋のあたりで、パンダ帽子をかぶり腰にスワンを履いている人がいた。山頂でミョーな格好をしたいのは私たちだけではないらしい。余裕があれば頂上で芝居の衣裳でも着るか、という話をしていたのだが、とてもその余裕はなかった。ウサギの耳を持っていくので精いっぱいだった。ドバドバ雨が降っていて、私のデジカメは使えないので、写るんですで撮った。山頂の小屋で私とヨリちゃんはカップラーメン、笑ちゃんはホットミルクティを頼む。笑ちゃんは食べるどころではないらしい。山頂の気温は9度。大雨に大風、濃霧である。本当はお鉢めぐりをする予定だったが、遭難しそうで怖かったので、今回はやめた。山小屋の裏にある山頂のトイレに行った時、26時間テレビの機材を撤去しているのを見た。さすがに機材はブルドーザーで上げたらしい。ちょうど機材を梱包してブルドーザーに乗せている所だった。それから山頂のトイレはきれいでびっくりした。トイレットペーパーも有料のトイレには設置してあり、持参した芯無しペーパーはあまり出番がない。山頂神社でお守りを買ったり、ハガキを出したりして14時ごろ下山開始。

風が強く、ヨリちゃんが飛ばされてこけて手を切った。ヨリちゃんは上りで手袋を片手なくしていて、手袋のないほうの手をケガした。風をよけられる所で簡単に手当して、8合目の医療センターに寄ってみると、誰もいなくてガッカリ。風にあおられて、私も4回しりもち、1回膝からコケた。そのうち最初の1回は、かなりマジゴケだったので痛かった。上りの時も思ったのだが「登山は上り優先」だと聞いていたのに、どうも余裕があるほうが譲っているようだ。上りの時譲った事もあるし、下りで譲られた事もある。そしてたまに邪魔になるのが、狭い道のど真ん中で立ち止まって休んでいる人。道が広い所まで行くか、端によけて休んでほしいと思った。私は坂をガンガン降りてみんなを待つ間に写真を撮っていた。ガンガン歩く時はそうもなかったのだが、7合目のあたりで休んでいると、 どうも気分が悪くなった。動いている時は血流の高回転で酸素不足を補っているのだが、体を休めてドキドキが収まると体が酸素不足を感じるのだろうか。吐き気と頭痛がしてきたので笑ちゃんに酸素を貰って食べた。この食べる酸素、結構まずい。なんか海藻のような貝殻のような味で、アメとかと一緒でないとなかなか食べられない。せっかく貰った酸素を無理やり飲み込んだところで吐いた。口から出た物を見て、「あーもったいない、今飲んだ酸素だよ〜。」と思った。思いっきり吐いたあと酸素をもらうんだったな、とも思った。その後2回ほど吐いて、吐くものがなくなったら元気になった。笑ちゃんは帰りに酸素を半分ぐらい持っていた。私とヨリちゃんは上りで全部飲みきった。笑ちゃん、残し過ぎでないか?。5合目18時10分発のバスに間に合いそうもないので、それからペースを落として下山。18時30分ごろ五合目に着いた。

5合目のバスの前で写真を撮ろうとしたら、親切な運転手さんが「新富士行き」になっていた窓の表示を「富士宮口新五合目」に変えてくれた。旅人にこういう配慮はうれしい。笑ちゃんは一応山頂まで行けたので「富士登山部はもういい、上高地登山部にしよう。」と言っている。ヨリちゃんはお鉢めぐりができていないので、「富士山お鉢めぐり部」を作るつもりらしい。第一回にして退部者を出すという、ギリギリガールズらしくないクラブ活動になった。

◆◆次回への教訓◆◆
荷物は1グラムでも軽く。水は持ち過ぎず買うべし。
食べる酸素は2個持つべし。

◆◆今回の装備◆◆
登山靴、登山リュック、杖、カッパ、リュックカバー、レインハット、手袋、セーター、Tシャツ・靴下替え1枚。
フルーツケーキ、ガム2、グミ2、C's case、ドライフルーツ、缶コーヒー2。酸素水1.5リットル。食べる酸素1個。
カッパはケチるな、という話を聞いていたので奮発してゴアテックスのカッパを買ったのだが、大正解。大雨にあっても上から下まで濡れ知らずである。山小屋の階段にビショビショの靴下が干してあったが、あれは普通の靴で登った人のものだろう。ゴアテックス恐るべし。

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