「宮島カエル」について



4月下旬から5月上旬にかけて、山間の谷から宮島カエルの鳴き声が聞こえてきます。普段山中に生息しているカエルが、交尾のために、山水が湧き出るあちこちの谷合いに集まるからです。雄カエルは巣穴に陣取り、雌カエルを呼び込もうとします。その鳴き声はみな個性に満ちています。まるで降臨した魂の歌声か、話声のように聞こえ、人々を不思議な世界に導きます。暗闇で聞くとその臨場感は倍増します。毎年この時期だけ、静寂な島が喧騒な島に変わります。この饗宴は、魂の饗宴でもあるのです。その昔、宇品港から出兵する若者達が、戦勝祈願に厳島詣でをしました。敵をめしとるしゃもじに願いを書いて奉納しました。その若者達の合言葉が、戦死したら「厳島で会おう」だったのです。弥山原生林の中には、戦友を偲ぶ人達が立てた墓標が残っています。あまりにも悲しい歴史の上に今の平和が築かれている事を忘れてはなりません。宮島カエルの饗宴は、静かに見守るのが宮島人の務めなのです。

宮島カエルの学名には諸説ありますが、まだ姿を見た人がいませんので不明です。鳴き声や卵を見るかぎり、タゴカエルではないかと思います。観察には十分注意して下さい。カエルの集合場所には,天敵の蛇もいます。マムシに遭遇したこともあるからです。
近年、狸が増えて困っています。宮島固有種の蛇やカエルを襲うからです。カエルの鳴き声が少なくなっているのが気懸りです。

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