続コロナコロナ、来るな来るな!!
新型コロナウイルス感染症禍の宮島
令和4年3月12日

 宮島は、新型コロナウイルス感染症禍に見舞われて、3年目の春を迎えています。当初はV字回復するとか、U字回復になるだろうと思われていました。ところが、来島者は、お参りの人、山歩きの人、近隣の家族連れ、学生に若者、観光客らしき人はちらほら、もちろん外国人観光客の姿を見かけることは有りません。定員800名の連絡船から下船する人はせいぜい20〜30人、駅舎観光案内所の前を通り過ぎる人ばかりです。こうした状況が丸2年続いています。昨年の秋に回復の兆しが見られ、歓迎の準備を整えましたが、また、また、また、コロナの第6波が襲来して元の木阿弥に戻り、気持ちが萎える毎日です。

 宮島の観光事業の命運は、来島者数で変わります。どんなに営業努力をしても、来島して頂けなければ無駄になるからです。来島者200万人がデットラインであると言われてきました。春と秋の観光シーズンにはあふれるほどの観光客が訪れ賑わいます。ところがオフシーズンになると、商店街はシャッター通りと化し、訪れた観光客から「何かあったのか」と聞かれるしまつです。「半年働いて半年休む」状態が続く宮島では、専業経営が難しくなり兼業経営が一般化します。この状態に陥らないようにすることが宮島町民の願いなのです。

 宮島観光協会「宮島来島者数一覧」によると、2006年から来島者が300万人をこえ、毎年増え続け、2019年には470万人を数えました。特徴的なことは外国人観光客の増加です。2019年には、35万人が来島したと記録されています。毎日T万人以上の来島者があることはかつてなかったことです。土日祝日になると、島が沈むのではないかと思われるほどの観光客です。「皆さん何をしに宮島におこしになるのか」不思議な思いでした。この様子がこれからも続き、500万人、800万人も夢ではないと思われたのです。しかしコロナ感染症禍で一変、バブルは弾けました。2020年は220万人、2021年は188万人と、ついに200万人をきってしまいました。宮島島内は勿論、宮島口周辺地域の観光関連営業が、もはや立ち行かなくなりつつあります。

 観光庁による、2021年の「日本人国内延べ旅行者数」は、2億6千7百万人(10−12月速報)です。2019年を100とすると54.05%の減少でした。対日外国人旅行者は96%減で、3000万人の外国人旅行者が消失したままです。この数字を基にして、昨年度の来島者を推計すると、250万人前後で推移すると思われます。しかし現実は、200万人を下回ってしまいました。この数字から見える落ち込みは、コロナ感染症の影響だけが原因とは考えにくいのです。
 観光庁によると、国内旅行需要は半減しています。しかしコロナ感染症禍にもかかわらず、年間2億6千7百万人の人が旅行に出かけているのです。この旅行需要を、宮島はなぜ取り込めなかったのか、その原因を考える必要があります。

 宮島はこれまで、観光客を増やすための努力をコツコツとしてきました。宮島の自然を含む厳島神社の世界遺産登録、大鳥居・厳島神社のライトアップ、フランスのモンサンミッシェルとの姉妹都市縁組、かき祭りや水中花火大会など、イベントの開催等々です。その成果がこの10年、ようやく実を結び、年間300万人以上の来島者が訪問する島になりました。若者の帰島や空き家の活用により出店が増え、投資対象地域として大変魅力のある島になったのです。それが一転して、投資不適格地域になりつつあります。
 今のような宮島は、星野リゾートホテル社長さんが言われる「倒産確率」で何%になるのでしょう。「与えられた条件の基でしか考えが及ばない」ようでは、倒産確率は高いものになると思います。残念なことに、生き残りゲームの開始です。
宮島から撤退する人、今がチャンスとばかり来島する人など、看板はそのままでも、経営者が代わったり、または新しい店が出店しています。代々続けてきた家業を廃業する人も増えています。全国の観光地でくりひろげられているであろう光景が、宮島でもみられるようになりました。


 宮島のシンボル大鳥居が大改修工事中です。町民は皆工事の無事完了を首を長くして待っています。しかし大潮の満潮時、厳島神社の回廊が水没することをご存知でしょうか。一時的現象だとは言え、厳島神社は木造の建物です。海水に浸かれば傷みが一層進むことは確実です。
 厳島神社に何かがあれば、すぐに観光客は消失します。ネット社会は情報戦の世界です。リアルタイムに、正確で正しい情報を発信しなければ、観光地間の競争には勝てません。SNSやTikTokで水没画像が拡散されたら、即座に対応する準備をしておくべきだと思います。

 地球温暖化を防ぐパリ協定が完全履行されても、地球の気温は3.3度上昇すると予測されています。もはや海水面の上昇は避けがたいのです。景観保全のために厳島神社の床を上げるのは限界があります。海水面の上昇を防ぐ方策を考えなければなりません。大野の瀬戸に水門を造り、海水面上昇を抑えられないものでしょうか。東日本大震災の復興支援事業で、岩手県大船渡市に、コンクリートの防潮堤ではなく、景観を守るために造られた「海底設備型ファラップゲート」、いわゆる海底から浮き上がる防潮堤が完成しています。世界遺産の厳島神社を未来につなぐ事は、私達宮島町民の願いなのですから。

 大鳥居の大改修工事と同じ時期に、世界遺産登録された富岡製糸場の改修工事が行われていました。工事用の足場以外に、工事見学用の足場をくんで、工事見学が出来るような工夫をされていました。製糸場見学にこられたお客様をがっかりさせないための対策です。「ヒントはスペインのサグラダファミリアですよ」と言われました。宮島でも、「おもてなしの心」についてよく話題に成ります。こうした対策が宮島で取られなかったのが非常に残念です。観光客が減るのはこうしたことも要因の一つかも知れません。

 観光客を増やすのは簡単なことではありません。時間とお金と労力が必要です。宮島に観光協会など必要で無くなったと言う声をききます。あまりにも不甲斐ない来島者数を指しているのでしょうが。その原因がどこにあるのか、精査する必要があります。
 宮島訪問税が創設されています。宮島を対象とした特定財源だと思っていましたが、いつのまにか一般財源として財政の穴埋めに使うことが出来るようになっています。100円が200円になり300円になる事は3%が10%になる事と同じです。
オーバーツーリズムはもはや過去の話です。コロナだけでなく「宮島に来るな来るな」税になります。
 観光客を増やすためには、宮島観光協会の強化が必要です。人、物、金を投下しなければ、宮島口の大型観光施設も、大型旅客船もみんな無駄になります。現に、宮島航路が減便運航になりました。宮島松大観光船は、1月29日から1日100便を54便に、JR宮島フェリーは、2月1日から106便を70便にです。宮島が「負のスパイラル」に陥りつつあります。

 世界経済が大混乱に陥っています。ロシアがウクライナに軍事侵攻を始めたからです。核兵器を脅しに使い、軍事力で領土・支配地域の拡大をしようとするロシアの蛮行は、21世紀最大の悲劇を生んでいます。キエフ「キーウ」は、ドニエプル川に囲まれた美しい都市です。住民の生活は豊かで、音楽や芸術を楽しむ素晴らしい国民です。その平和な都市を砲撃するなど狂気の沙汰です。ロシアは、エネルギー資源を武器に、国際決済通貨ドルへの挑戦をしようとしています。アメリカがもつ「打ち出の小槌」が欲しいのです。ロシアの国際的信用は失墜し、暴力と破壊とルーブルで、世界を支配しょうとする野望は必ず打ち破られると信じています。

 ウイズコロナの世界はどうなるのでしょう?抑え込みながら、経済回復を図ることだと思われていました。しかし、コロナとの共存する方向に舵を切り始めています。安心・安全・平和が必須要件の観光経済が、今後成り立つのだろうか、また宮島の観光客は増えるのだろうか心配でなりません。