高野山 開創1200年によせて 2015年5月15日

 弘法大師空海は、留学先の長安からの帰路、厳島の姿に仏を観て、御山で「この世なくしてあの世は無い、この世で成仏できなくて何であの世か」(注1)を説きます。恵果阿闍梨に託された、真言密教布教活動の出発点をこの厳島に置いたのです。そして、即身成仏する高野山で結実します。1200年燃え続ける「消えずの火」は、戦時中も消えることなく守られてきました。御山を中国で観た須弥山に似ているところから弥山と命名したのは、弘法大師空海だと言伝えられています。

 この霊火堂、弥山頂上付近にある小さなお堂です。見逃さないで、お立ち寄りください。霊火堂にある大きな茶釜の白湯は、1200年の歴史を刻む炎で温められています。

 宮島では、霊火堂まで登れないお年寄りのために、御餅を持参して、炎で温め持ち帰る風習が残っています。

 島民は日頃の忙しさに、宮島の歴史的価値や素晴らしさを忘れがちです。この事を思い出させてくれるのが海外からのお客様です。彼らは自力で弥山に登り、霊火堂にお参りして、次の訪問地高野山に向かわれます。


 宮島を訪れる海外のお客様が、異口同音に「宮島は素晴らしい」を口にされます。ライトアップされた厳島神社、弘法大師空海の足跡を残す弥山、歴史が生み出すパワーは強烈のようです。
また、神様の住む宮島は、夢の島だとも言っています。4階建て以上の建物はなく、屋根は黒瓦又は銅板葺、外壁は自然に溶け込む指定色、ネオンは無く、派手な看板は禁止され、電信柱すら黒く塗られています。不統一の統一が生み出す景観に、宮島を守ろうとする心が現れているからです。

 鹿が遊び、「静寂や暗闇が素晴らしい」とも言っています。夜、暗闇の中を歩いても安全、安心。朝、山から下りてきた鳥の鳴き声で目を覚ます。宮島人には日常でも、海外のお客様には、非日常の様です。犯罪やテロのない、平和なひと時を体験できる夢の島なのです。地球上のあらゆる国からお越しになります。つい最近、モルジブからのお客様は、海に建つ厳島神社を見て、海水面の上昇を心配されていました。

 宮島を後世に残すために、先人達は厳しい法律の網を島全体に掛けました。文化財保護法、自然公園法、特別風致地区等、7つの法規制(注2)が、法の網を潜り抜け金儲けをしようとする者を排除しています。この規制が、世界に誇る宮島を創り上げたのです。今、宮島の玄関ともいえる宮島口で、大規模な開発事業が進められています。赤崎地区や宮島航路に、宮島を守る7つの法規制を適用する時代になってしまったようです。
 海外からのお客様が、今後ますます増える事が予想されます。神が住む夢の島を守ることが出来る限り、厳島大明神のご加護を受けることが出来るのです。

(注1)弘法大師御入定1,150年御遠忌記念映画「空海」より
(注2)文化財保護法、自然公園法、自然環境保全法、特別風致地区、都市計画法、建築基準法、消防法

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