日時 平成10年11月21日(土) PM5:30
場所 広島県歯科医師会館
演題 補綴関連検査について
講師 三宅 茂樹 (広島市)
チェックバイト法を利用して患者さんの顆路を咬合器上に再現 し、顎運動に調和した
補綴物を製作することは、日常臨床において一般的になってき ています。今回チェッ
クバイト法を一層理解して効果的に活用するために、次の項目 について見直しをして
みました。
Ⅰ.チェックバイトに適する咬合器
Ⅱ.チェックバイトにフェイスボウが必要か
Ⅲ.チェックバイトは前方か側方か
Ⅳ.正しい咬合器の動かし方
Ⅴ.チェックバイト後の咬合器
Ⅰ.半調節 性咬合器の種類
タイプⅠ 側方顆路調節機構を持たないタイプ
A 側方顆路のみの調節
ハンディ
B 前方顆路,側方顆路の調節
坪根式
タイプⅡ 側方顆路を側方顆路角
(ベネット角、PSS)で調節するタイプ
ハノウ デンタ―タス ス ペイシー
ウィップミックス LL- 85
タイプⅢ 側方顆路を側方顆路角
(PSSとISS)で調節するタイプ
パナホビー
PSS プログレッシブ・サイド・シ フト
ISS イミーディエイト・サイド・ シフト
すべての半調節性咬合器をチェックバイト法による顆路を測定 することはできます。
調節性や運動性は咬合器によって大きく異なるため、咬合器の 特性を十分に理解して
使用することが必要となります。
Ⅱ.フェイ スボウ計測について
咬合器には専用のフェイスボウが付属して販売されてます。 これは咬合器の構造や大
きさをもとにして設計されていますので、付属のフェイスボウ を使用すべきです。
フェイスボウには、後方固定点(基準点)のとり かたでシンプル・フェイスボウとイヤー
・フェイスボウとに分類できます。前者は、外耳孔を基準にし て平均的顆頭点を顔面
に描記し、これを後方基準点とするもので、フェイスボウの固 定にやや困難があり熟
練を要するでしょう。それに対し後者では、外耳孔をフェイス ボウの後方固定点にす
るために、フェイスボウの固定は非常に容易です。フェイスボ ウ自体あるいは咬合器
に工夫がされていますので、咬合器の開閉軸と患者さん尾の顎 の開閉軸を平均的に一
致させることができます。
また、前方基準点は一般に眼窩下点か鼻翼点にとるように指 示されています。前者を
採用すると軸眼窩平面(フランクフルト平面 )が床面に平行になるように模型が咬合器
に付着されます。後者ではカンペル平面(咬合平 面)が床面に平行になります。
当然、同じ患者さんの顆路を測定しても模型の付着方向が異 なるために、顆路傾斜角
は異なった値になります。ちなみに軸眼窩下平面基準デハ咬合 平面基準よりも約15°
大きな角度で測定されるといわれています。
フランクフルト平面
フランクフルト平面基準による模型の付着
フランクフルト平面 カンペル平面
カンペル平面基準による模型の付着
チェックバイトによる顆路測定にフェイスボウ記録採得が必要 な理由は、以下の通りです。
1.患者の開閉運動を咬合器に再現できる。
2.フェイスボウ記録を採得すると模型がほぼ同じ 位置ニ付着され、一度測定した顆路を
一口腔単位で治療する間、利用できる。
Ⅲ. 前方チェックバイトか側方チェックバイトか
チェックバイトの理想的な利用の仕方は、前方運動は前方 チェックバイトで測定した
顆路角、側方運動は側方チェックバイトで測定した顆路角で、 咬合器を調節する方法です。
実際には、側方か前方かのどちらかのチェックバイト法が採 用されているようですが、
その背景を検討してみましょう。
側方チェックバイト支持の理由:
咀嚼運動は側方運動が主体であるため、咬合器に は
側方運動を再現しなければならない。
側方チェックバイト不支持の理由:
側方運動は動きが複雑なため、半調節性咬合器で は
非作業側の調節に力点をおき作業側の動きは考慮 せずに設計されているため、
側方チェックバイト記録で咬合器を調節すると困 難なことがある
前方チェックバイト支持の理由: 前方運動は動きが単純で 咬合器に再現しやすい
前方チェックバイト不支持の理由: 咀嚼運動に重要な側方運 動要素が再現できない
実際には、前方チェックバイトで顆路傾斜角を調節し、側方 運動の決め手となる
側方顆路角(ベネット角)は平均的な値である15°を 与えるか、
ハノウの式(L=H/8+12)で 求めた側方顆路角が使われています。