そのむかし
思い出の彼方のそのむかし
空と海はいだきあい
真白い島が生まれ
島に人が芽生え
人は人をはぐくみ
人は人を実らせた

人生まれれば日は照り
人去り逝けば雨は降り
実るときは安らかに休み
飢えるときは等しく分かち
ときに男は風であり波であり山であり
ときに女は草であり海であり大地であり
人と人は争うことを知らず
交わす言葉はいのちのささやき
静かな緑に咲く無邪気な花
また 花と遊ぶ蝶であった

穏やかな春の日には いまも
空とも海とも見分けのつかぬ
霞と波の彼方に
その島影が見え隠れするという