■フーリエ解析(5): フーリエ級数からフーリエ変換へ

周期 T(= 2π/ω0、 ω0は角振動数) の周期関数 f(t)に対する複素フーリエ級数および複素フーリエ係数 cnは次式で表すことができます。
  f (t) = n=-∞ cne jnω0t      ・・・(式1)

  cn = (1/T)-T/2T/2 f (t)e-jnω0t dt ・・・(式2)

ここではフーリエ級数の極限として、フーリエ変換とフーリエ逆変換の式を導きます。

フーリエ変換により関数をその周波成分の連続スペクトルに分解することができ、またフーリエ逆変換により連続スペクトルから関数を復元することができます。
 ●フーリエ変換
(式2)を
  Tcn = 2πcn0

     = -T/2T/2 f(t)e-jnω0t dt

で表し、ω = nω0とおくと上式はωの関数とみなせるので、
  Tcn = F0(ω) = -T/2T/2 f(t)e-jωt dt

ここで、T→∞(即ち、ω0→0)の極限をとってF(ω)とおくと、
  F(ω) = limT→∞-T/2T/2 f(t)e-jωt dt

  F(ω) = -∞ f(t)e-jωt dt   ・・・(式3)

F(ω)を関数f(t)のフーリエ変換(Fourier Transform)と呼びます。

F(ω)は複素数で、その実数部をRe(F(ω))、虚数部をIm(F(ω))とすると、
  F(ω) = Re(F(ω)) + j Im(F(ω))

と表すことができます。

また、絶対値|F(ω)|を振幅スペクトル(あるいは単にスペクトル)、複素平面上でF(ω)が実軸となす角φ(ω):
  φ(ω) = tan-1[Im(F(ω)) / Re(F(ω))]

位相スペクトルと言います。

F(0)は関数f(t)のグラフと横軸(t軸)で挟まれた部分の面積に等しくなります。 また、常に Im(F(0)) = 0, φ(0) = 0 となります。
 ●フーリエ逆変換
(式1)より、
  f(t) = n=-∞ cne jnω0t

     = n=-∞ F0(ω)/Te jωt

ここで、ω0 = 刄ヨとおくと、1/T = 刄ヨ/(2π)となるので、
  f(t) = 1/(2π)n=-∞ F0(ω)e jωt刄ヨ

刄ヨ(=ω0) →0の極限では、F0(ω)→F(ω)で、右辺は積分形になり、
  f(t) = 1/(2π)-∞ F(ω)e jωt   ・・・(式4)

f(t)をF(ω)のフーリエ逆変換(または 逆フーリエ変換、Inverse Fourier Transform)と呼びます。

フーリエ変換の結果得られた関数F(ω)を周波数領域表現、これに対して元の関数f(t)を時間領域表現と呼ぶことがあります。
 ●フーリエ変換の性質
 フーリエ変換の定義式から、以下の性質があることが容易に証明できます。
(1)線形性
   f(t), g(t)のフーリエ変換をF(ω), G(ω)とし、a, b を実数とすると、
    a f(t) + b g(t) のフーリエ変換 ⇒ a F(ω) + b G(ω)
   逆変換も同様です。

(2)実数関数のフーリエ変換
   f(t) が実数関数のとき、
    F (-ω) = F (ω)
   これを実数部、虚数部に分けて記すと、
    Re (F(-ω)) = Re (F(ω))
    Im (F(-ω)) = -Im (F(ω))
   となり、実数部は偶関数に、虚数部は奇関数になります。

   特に f(t) が実数の偶関数のときは、虚数部 = 0 となります。
 (注1)定数の1/(2π)について
    ここでは逆変換側に付けていますが、順変換側に付けたり、双方にその平方根に付けたりすることもあります。
 (注2)角振動数ωの代わりに、通常の振動数 f (= ω/2π)を用いて次のように定義することもあります。
    F(f) = -∞ f(t)e-j2πft dt   ・・・(式3')

[参考文献]Wikipedia:フーリ級数

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