■車の数学(18): 車の出力とトルクの関係
●トルクと出力
車のカタログにはエンジンの最高出力と最大トルクの数値が例えば次のように記載されています。
・最高出力(ネット):77kW [105PS] / 6,000rpm
・最大トルク(ネット):141N・m [14.4kgf・m] / 4,000rpm
トルクとは回転している物体の回転軸の周りに働く力のモーメントであり、力の大きさを F、回転半径を rとすると、トルク Tは次式で表されます。
T = F・r
出力とは仕事率で、単位時間あたりの仕事です。 従って、力の大きさを F、その方向への移動量を s、時間を tとすると、出力 Pは次式で表されます。
P = F・s / t
さて、車のエンジンのような回転運動において、単位時間( t = 1 )あたりの回転数を nとすると、トルク T( = F・r )による単位時間あたりの仕事すなわち出力は
s = 2πr・n
P = F・s / t = F・2πr・n = 2πT・n
となります。
上式で各量の単位を トルク(T):N・m、回転数(n) :s-1(毎秒)とすると、出力の単位はワット W( = N・m/s)となります。 エンジンの回転数を N(rpm、毎分の回転数)とし、出力の単位を kWとすると、
P = 2πT・N / 60 / 1000
∴
P ≒ T・N / 9549
T ≒ 9549 x P / N
●エンジンの性能曲線
横軸にエンジン回転数:N(rpm)、縦軸に出力:P(kW)とトルクT:(N・m)を記録し、エンジン性能の特性を視覚的に表したグラフをエンジンの性能曲線と呼びます。 一例を示します。
トルクが最大になるエンジンの回転数と出力が最高になるエンジンの回転数は異なり、一般に後者の方が高回転となります。
回転数とトルクの関係(トルク線図)が与えられると、前記の式で回転数と出力の関係(出力線図)が自動的に求められます。
●何故「最大出力」ではないのか
ところで、エンジンの仕様欄にはトヨタ、ホンダ、マツダ、日産、三菱などどのメーカーも「最高出力」、「最大トルク」と書かれています。
何故「最高出力」であって「最大出力」ではないのでしょうか。 トルクについても同様で、何故「最大トルク」で「最高トルク」ではないのでしょうか。 最高と最大、その違い・使い分けはどうなっているのでしょうか。
ちなみに、JIS D0001(2001)「自動車−仕様書様式」では「最大出力」、「最大トルク」となっています。
同様に、車の「重さ」に関する事項についてはJISでは例えば「空車質量」、「自動車総質量」のように「質量」で統一されていますが、一般的な車のカタログでは「車両重量」、「車両総重量」となっています。 これも不思議です。
(注1)1PS(仏馬力) = 0.73549875 kW
(注2)1kgf(重量キログラム)= 9.80665 N(ニュートン)
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