ドライバーが危険を感じて急ブレーキが必要と判断した時点から、実際に車が停止するまでの距離は★ 参考までに、ここで使用している計算式とその誘導過程を示します。
(1)ブレーキが必要と判断した時点から、ブレーキが効き始める時点までの空走距離
(2)ブレーキが効き始めた時点から、停止するまでの制動距離
の和として求められます。
前者の空走時間(人の反応時間)は、平均的には0.7〜0.8秒程度とされています。 また、後者の制動距離は車の速度、タイヤと路面の間の摩擦係数によって大きく変化します。
下のアプレットでは、車の速度・摩擦係数・反応時間を指定して、停止距離(空走距離+制動距離)を計算します。 あわせて、走行距離に対する速度の変化の状況をグラフィック表示します。
条件を設定して「Start」ボタンを押してください。
速度欄に"0"を入力して「Start」ボタンを押すと、指定されている反応時間のもとで摩擦係数をパラメータにして速度:V(km/h)と停止距離:D(m)の関係を示す線図が表示されます。 この線図で低速域(一般道での速度域)、高速域(高速道での速度域)に2本の黒い直線が引かれていますが、これらは通常(μ=0.5〜0.8)の停止距離の概算に利用できます。
・低速域では D = 0.6 x V (例)V = 50km/h ---> D = 0.6 x 50 = 30 m
・高速域では D = V (例)V = 100km/h ---> D = 100 m
(注)「反応時間」は次の各時間の合計です。
・ブレーキが必要と判断した時点から、アクセルペダルから足を動かすまでの時間(反射時間 0.4〜0.5秒)
・ブレーキペダルに足を乗せるまでの時間(踏替え時間 0.2秒)
・これを踏み込んでブレーキが効き始めるまでの時間(踏込み時間 0.1〜0.3秒)
ホーム[ 停止距離の計算式 ] ・速度をv0 (m/s)、 摩擦係数をμ、反応時間をta (s)、重力加速度をg (m/s2) とします。 ・空走時間 t0 = ta 空走距離 d0 = v0・t0 ・制動時間 t1 = v0/(μg) 制動距離 d1 = v02/(2μg) ・停止時間 t2 = t0 + t1 停止距離 d2 = d0 + d1 [ 制動時間・制動距離の計算式の誘導 ] ・車の質量をm(kg)とし、進行方向にX軸をとって時刻t(s)における車の位置をx(m)とします。 ・次の運動方程式が成立します。 mx" = -μmg ここで、" は位置xの時刻tに関する2回微分(加速度) ・これを解くと、 x" = -μg x' = -μgt + v0 x = -μgt2/2 + v0・t ・制動時間 t1は x'(速度)= 0 より、 t1 = v0/(μg) ・制動距離 d1はこのt1をxの式に代入して、 d1 = -μg[v0/(μg)]2/2 + v0・v0/(μg) = v02/(2μg) 尚、この式は車の運動エネルギー(mv02/2)が摩擦力による仕事(μmg・d2)に変換されることから、 mv02/2 = μmg・d2 より求めることもできます。 [参考文献] (1)全日本交通安全協会発行: 交通の教則(平成19年6月) (2)国土交通省 国土技術政策総合研究所資料:ISSN 1346-7328(平成18年12月)