■住宅の方位を知る:「太陽の高度・方位を算出するアプリ」の利用
住宅の正面が真南からどの程度振れているかを知る方法には色々あります。
例えば、各種Web上の地図で当該住宅付近を拡大表示すれば概略の方位を知ることができます。
また、方位磁石でも東西南北の方向が分かりますが、これは磁北を基準としたもので、真北を基準としたものにするには補正が必要です。
ここでは「太陽の高度と方位角を算出するアプリ」を利用して住宅(あるいは宅地)の方位を求める方法を紹介します。
● 手順
(1)太陽による影の傾きを測定する。
・建物の垂直部分、例えば窓サッシの縦枠の影の角度 θ を測定する。
・日射しが差し込む室内で容易に測定できる(下図 A,Bから計算、θ = atan[B/A])。
(2)「太陽の高度と方位角を算出するアプリ」で、
・上記測定を行った時刻に対する太陽の方位角 β を求める。
・本アプリにおける方位角は真北:0度、東:+90度、南:+180度としている。
(3)次式で住宅の方位 α(度) を計算する(真南:0°、西向き > 0、東向き < 0)。
α = θ + β - 180

● 例:2020/12/22 9:06における影の測定とアプリ計算(広島市内)
・影の測定結果
A = 386mm、 B=1000mm -> θ = atan(B/A) = 68.9°
・アプリでの計算結果
9:06での方位角 β = 136.5°、 高度角 = 17.7°
・住宅(宅地)の方位角(真南に対する)
α = 68.9 + 136.5 - 180 = 25.4°
西に25度近く振れていることがわかります。
● 影の測定誤差について
本方法においては影(長さA、B)の測定誤差が、算出される方位の誤差に最も影響します。
アプリの計算誤差は無視し、また影を生成する建具の鉛直度や床面の水平度も問題ないとして、ここでは影の寸法:A、Bの測定誤差が角度θに及ぼす影響について検討します。
・θ = f(A, B) = atan(B/A) の計算式において、A、Bの誤差がθの計算誤差に及ぼす程度を調べる。
・A、Bを変数として、上式の全微分を考える。
dθ=∂f/∂A・dA + ∂f/∂B・dB
・y= atan(x) の微分が y' = 1/(1+x2) であることから、上式を計算して整理すると次式を得る。
dθ=(-B・dA + A・dB)/(A2 + B2)
例えば、A=100cm、B=50cm で、Aの測定誤差をdA=0.5cmとすると、θの誤差は
dθ=(50 x 0.5)/(100x100 + 50x50) x 180/π ≒ 0.11°
Bにも同程度の誤差dB=0.5cmがある場合でも、
dθ=(50 x 0.5 + 100 x 0.5)/(100x100 + 50x50) x 180/π ≒ 0.34°
程度に収まります。
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