■レンズの焦点距離の計算式

 凸レンズや凹レンズなどの球面レンズの焦点距離(f)については、近軸光線(注1)に限った次の近似式があります。
lens_focus.gif

近似式1(薄肉レンズに対する式)
   f1 = 1/[(n-1) (1/r1 - 1/r2)]

近似式2(レンズの厚さを考慮した式)
   f2 = 1/[(n-1) (1/r1 - 1/r2) + (n-1)2d/(n r1 r2)]
  ここで、
   n: レンズ材質の屈折率
   r1: レンズ前面の曲率半径
   r2: レンズ後面の曲率半径
   d: レンズの厚さ
  (注)r1, r2 には凸、凹に応じて表のように正負があります。
曲率半径 r1、r2 の符号
レンズの種類r1の符号r2の符号
凸 凸
凸 凹
凹 凸
凹 凹


曲率中心が右側(レンズの向こう側)にある場合は+、左側(レンズ手前)にある場合は− となります。


焦点距離の厳密計算
 さて、ここではこれらの近似式に加えて、光軸に平行な光線がレンズの前面、後面で屈折して進行方向を変えて光軸と交わる点(焦点:F)を「光の屈折の法則」に沿って厳密に計算することによって焦点距離(f)を求める方法を紹介します。
レンズの焦点距離の計算(Excel)をクリックしてください。

焦点距離(f)は主点(注2)から焦点までの光軸に沿った距離ですが、簡易的にレンズ中心から焦点までの距離(f0)とすることがあります。ここではそれら両方の値を算出しています。
(注1)近軸光線とは光軸(レンズ中心軸)付近を通過する光線のことです。
(注2)主点とは入射光P0P1とレンズ通過後の光P2Fの延長線上の交点です。
(注3)Excelによる計算で片方が平面のレンズ(平凸など)の場合には平面の側の曲率半径を例えば1.E10とします。
(注4)近似式2による焦点距離の値は厳密計算によるものとよく一致します。

●(参考)厳密計算式(計算手順)
 上の凸レンズ(両凸)の図に沿って、焦点距離の計算手順を示します。
・x1 = (r1 - d/2) - sqrt(r12 - h2)  (注)sqrt:平方根(ルート)
・y1 = h
・sin(a1) = h/r1
・sin(b1) = sin(a1)/n = h/r1/n  (注)n = sin(a1)/sin(b1) より

 次に、点P1で屈折した光がレンズ後面(曲率半径r2)と交わる点P2を以下のようにして求めます。
・光の進路の式(直線)
  y - y1 = -tan(a1-b1)(x - x1)
・レンズ後面の方程式(円)
  (x - r2 - d/2)2 + y2 = r22
・直線の式を y について解いて、円の式に代入すると
  (x - r2 - d/2)2 + [y1 - tan(a1-b1)(x - x1)]2 = r22
・これを未知数xについて整理すると
  Ax2 + Bx + C = 0
  ここで、
   A = 1 + [tan(a1-b1)]2
   B = -r2 - d/2 - [y1 + x1tan(a1-b1)]tan(a1-b1)
   C = (-r2 - d/2)2 + [y1 + x1tan(a1-b1)]2 - r22
・この2次方程式を解くと、点P2のx座標(x2)が得られます。
  x2 = [-B + sqrt(B2 - AC)] / A  (注)凸の場合は2つの解のうち大きい方
  (注)後面が凹のときは x2 = [-B - sqrt(B2 - AC)] / A (2つの解のうち小さい方)
・y2 = y1 - tan(a1-b1)(x2 - x1)
・sin(θ2) = y2/(-r2)
・a2 = a1 - b1 + θ2
・sin(b2) = n・sin(a2)
  (注)sin(a2) > 1/nのときは後面で全反射するため、これ以降の計算はできません。
・θf = b2 - θ2

 従って、焦点距離は
・主点を基準にするときは
  f = h/tan(θf)
・レンズ中心を基準にするときは
  f0 = x2 + y2/tan(θf)
となります。
以上の式は、レンズ面の曲率半径r1、r2の符号を前記表のように約束すると、凹レンズや凸凹レンズに対しても成立します。
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