■中性脂肪と脂質異常症(食後検査値には注意せよ)

 勤め先での定期健康診断や自治体の集団検診では色々な項目について検査がなされます。 その中の1項目に中性脂肪(Neutral Fat)があります。

 血液検査での中性脂肪の基準値(正常範囲)は150mg/dl未満とされています。 これは空腹時の値で、この値を超えると脂質異常症(以前は高脂血症と呼ばれていた)と診断され、動脈硬化などを引き起こす危険性が高くなります。

 中性脂肪は食事と密接な関係があり、食後は必ず中性脂肪の数値は上がります。 自治体の集団検診などでは検査直前の食事制限などがないことが多く、例えば昼食の2時間後に検査するようなこともあります。 このときの検査結果が170mg/dlのとき、某市の集団検診で単純に基準値と比較して脂質異常症とされたことがあります。

 果たして、食後2時間後の数値170mg/dlは異常でしょうか、それとも正常範囲でしょうか。

 財団法人 近畿健康管理センターの資料によれば、空腹時(食前)に 82mg/dlであった中性脂肪値が食後112に上り、1〜2時間後に115、3〜4時間後に108、その後徐々に低下して食後9時間後にほぼ食前の値に戻っています(男性の場合。もちろんバラツキはありますが)。 食事の直後〜2時間後は食前の値の約40%アップになっているのです。

 このデータをもとに、前記検査結果170mg/dlから空腹時の中性脂肪値を推測すると、
   170 ÷ 1.4 = 122 < 150
となり、正常範囲内に収まっています。

 中性脂肪の結果判定は単純にうのみにすることなく、食事との関係を考慮して冷静に判断することが大切です。

 なお、脂質異常症と判定された場合は食生活の改善および適度な運動を心がけることが必要です。
[参考文献]
 1. Wikipedia: 中性脂肪
 2. (財)近畿健康管理センター: 健康診断における食後中性脂肪値のスクリーニングレベルの検討

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