■年金の数学(2): 各種係数の算式の誘導
年金や預金の積立額、受給額(受取額)の計算に便利な次の係数があります。
・終価係数: k1 = (1 + r)n
・現価係数: k2 = 1/(1 + r)n [ = 1/k1 ]
・資本回収係数: k3 = r (1 + r)n/[(1 + r)n - 1]
・年金現価係数: k4 = [(1 + r)n - 1]/[r (1 + r)n] [ = 1/k3 ]
・年金終価係数: k5 = [(1 + r)n - 1]/r
・減債基金係数: k6 = r/[(1 + r)n - 1] [ = 1/k5 ]
ここで、r:年利率、n:年数 です。
これらはいずれも資本を複利運用した場合の金額、利率、年数の関係を表すものです。 通常は係数表を使用することにより、複雑な計算を行うことなく、簡単に必要な数値を求めることができますが、ここではこれらの係数のうち、終価係数(k1)、資本回収係数(k3)および年金終価係数(k5)の計算式を誘導してみましょう。 係数 k2、k4、k6は定義よりそれぞれ k1、k3、k5の逆数です。
・終価係数: k1
現在手元にある元金(S0)を複利運用した場合の、一定期間(n)後の元利合計を求める際の係数。
i 年後の元利合計をSiとすると、
S1 = S0(1 + r)
S2 = S1(1 + r) = S0(1 + r)2
・
・
Sn = Sn-1(1 + r) = S0(1 + r)n
故に、定義式: Sn = k1・S0 より
k1 = Sn/S0 = (1 + r)n
・資本回収係数: k3
現在手元にある元金(S0)を複利運用しながら一定期間(n)で取り崩す場合の、
毎年の受取額(t)を求める際の係数。
S0 1 2 3 4 n-1 n 年数
|------+------+------+------+------+------+-- --+------|
t t t t t t 受取り
1年後の元利合計 S1 = S0(1 + r)
この中から年金(t)を受け取ると、残りは S1-t
2年後の元利合計 S2 = (S1-t)(1 + r) = S0(1 + r)2 - t(1 + r)
この中から年金(t)を受け取ると、残りは S2-t
3年後の元利合計 S3 = (S2-t)(1 + r) = S0(1 + r)3 - t(1 + r)2 - t(1 + r)
この中から年金(t)を受け取ると、残りは S3-t
・
・
n年後の元利合計 Sn = (Sn-1-t)(1 + r)
= S0(1 + r)n - t[(1 + r)n-1 + … + (1 + r)2 + (1 + r)]
この中から年金(t)を受け取ると、残りは Sn-t = 0、すなわち Sn = t
これより、
S0(1 + r)n = t[(1 + r)n-1 + … + (1 + r)2 + (1 + r) + 1]
右辺の[ ]内は初項1、公比(1+r)の等比数列の和であるので、
S0(1 + r)n = t[1 - (1 + r)n]/[1 - (1 + r)]
= t[(1 + r)n - 1]/r
故に、定義式: t = k3・S0 より
k3 = t/S0 = r(1 + r)n/[(1 + r)n - 1]
・年金終価係数: k5
複利運用しながら一定金額(t)を毎年(期末に)積み立てる場合の、
一定期間(n)後の元利合計(Sn)を求める際の係数。
0 1 2 3 4 n-1 n 年数
t t t t t t 積立て
|------+------+------+------+------+------+-- --+------|
Sn 元利合計
1年目の期末に積み立てた金額tのn年後の元利合計A1は
A1 = t(1 + r)n-1
2年目の期末に積み立てた金額tのn年後の元利合計A2は
A2 = t(1 + r)n-2
・
・
n-1年目の期末に積み立てた金額tのn年後の元利合計An-1は
An-1 = t(1 + r)
n年目の期末に積み立てた金額tのn年後の元利合計Anは
An = t
従って、これらを合計すると
Sn = A1 + A2 + ・・・+ An-1 + An
= t[(1 + r)n-1 + (1 + r)n-2 + … + (1 + r) + 1]
= t[1 - (1 + r)n]/[1 - (1 + r)]
= t[(1 + r)n - 1]/r
故に、定義式: Sn = k5・t より
k5 = Sn/t = [(1 + r)n - 1]/r
(注)これらの3種の係数には、k1 = k3・k5 なる関係があります。
年金の数学(1): 各種係数表
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