■年金の数学(4): マクロ経済スライドによる年金改定

 年金額は従来、賃金や物価の伸びに応じて増えて来ましたが、平成16年(2004年)の年金制度改正によって、今後の年金額改定は物価変動のほか、被保険者数(年金を支える力)の減少・平均寿命の伸びも反映させ、その伸びを賃金や物価の伸びよりも抑えることとなりました。この仕組みがマクロ経済スライドです。
 (1)賃金や物価がある程度上昇する場合にはそのまま適用します。
 (2)賃金や物価の伸びが小さく、適用すると名目額が下がってしまう場合には、
    調整は年金額の伸びがゼロになるまでにとどめます。
    従って、名目の年金額が下がることはありません。
 (3)賃金や物価の伸びがマイナスの場合には、調整は行いません。
    従って、賃金や物価の下落分は年金額を下げますが、それ以上に年金額が下がることはありません。

 マクロ経済スライドは、年金受給世代が増え現役世代が減少する少子高齢化社会においても、年金制度を持続可能とするために、人口バランスの変化と一人当たりの年金額との関連付けをする年金額改定の仕組みなのです。

具体的な調整方法(改定率の算定法) 〜 2025年まで 〜

 ・被保険者数の減少率 = 0.6%
 ・平均寿命の伸び率を勘案した調整率 = 0.3%
 ・これらを加えたスライド調整率 = 0.9%
として、賃金や物価の上昇率(P %)とスライド調整率(0.9%)の関係に応じて以下のように決定します。
 (1)P ≧ 0.9% のとき: 年金改定率 = P - 0.9 (%)
 (2)P < 0.9% のとき: 年金改定率 = 0.0 (%)
 (3)P ≦ 0.0% のとき: 年金改定率 = P (%) … 賃金や物価の下落率をそのまま反映
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 なお、平成 12〜 14 年度に物価が1.7%下落したときに年金額を引き下げなかったため、当面は物価が上昇してもこの下落分が解消されるまでの間、年金額は引上げず、また物価が下落したらその分が「マイナス改定」されることになっています(物価スライド特例措置)。

[参考文献]
 1.厚生労働省年金財政HP 用語集
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