特別講座
ビデオテープについて 
 
民生用ビデオテープの種類
種類
備考
β 今となってはソニーだけの規格。構造的にはVHSより画質は上だったのだが…。
VHS 今、ビデオテープと言えばこれ。言わずもがなやね。        
カメラ用にVHS-Cという小さいサイズのものもある。
S-VHS SuperVHS。だからS-VHS。VHSと全く同じ大きさで画質がよい。S端子はこいつのためにできた。     
VHSと同じようにCカセットもある。
W-VHS ハイビジョンのためのVHS。キレイだが高いよ。
8ミリ ビデオカメラのためのテープ。テープ幅8ミリだから8ミリテープ。
Hi8 画質が向上した8ミリ。
DVC デジタルのビデオテープ。まだあまり出回っていない。
DVCmini デジタルのミニカセット。デジタルビデオカメラのテープはこれ。
Digital8 普通の8ミリ、Hi8のテープにデジタル記録する新方式。

ビデオテープのお話

第1話 βとVHS

今となってはビデオと言えばVHSだが、当時はβ(ソニー)が先行していた。
画質的にもβの方がよく、その証拠に業務用のテープはβの親玉ともいえる
βCAM(略してベタカム)がシェアの9割を越える。ベタカムのない放送局はないのだ。
それがなぜ民生ではβが負けてしまったのか?それは松下の商売のうまさにある。
VHSは松下が開発したと思っている人も多いと思うが、実はビクターが開発したものだ。
βをバラバラにし、徹底的に研究した成果がVHSだ。
それはさておき、松下はまず、VHSをデファクトスタンダードにすべく、東芝、サンヨー等、
電気製品メーカーに働きかけ、VHSを作らせた。というより、βを作らせなかった。
そして、VHS普及の起爆剤となったのがHビデオだ。
ソニーはどうもこの手のが嫌いなようで、こっち系のソフトは作らせなかった。
(この精神は今でもプレイステーションに受け継がれている)
が、松下は逆にHソフトを売りにした。「VHSなら、こんなビデオが見れますよ」と、
購買層であるおじさん達を取り込んだのだ。画質がきれいなだけのβか、Hビデオが見れるVHSか…
おじさん達の選択は当然VHSに。
そしてVHSのレンタルも始まり、(もちろんHビデオも)VHSの普及は加速度を増した。
(ちなみにβはレンタルをほとんど許していなかった。…さすがソニー)
ただ、ソニーも指をくわえて眺めていたわけではない。更なる画質向上を目指し、EDβを開発。
が、VHSもデッキ回路の進歩によりβに負けない画質を得、βの巻き返しには至らなかった。
そしてβ敗退の原因がもう一つ。それはカセットの小ささだ。
VHSより2まわりほど小さいβ。コンパクトでいいのだが、そのため物理的に長時間テープは押し込めない。
せいぜい60分だ。それに対してVHSは120分テープも出現した。(現在では180分とかもあるしね)
ビデオの主な使い方であるテレビの映画を録画するには、
いかに画質のきれいなβでも使いものにならなかったのだ。ソフトを作る側にしても同じだ。
と、いうわけでVHSがデファクトスタンダードとなり、ソニー対松下の戦いは松下の大勝利に終わった。
で、βはなくなったのか?いやいや、いまだにソニーはβのデッキもテープも作っている。



第2話 VHS-Cと8ミリ

ビデオには「見る」という楽しみ、つまり、レンタルやセルのソフト、録画したテレビ番組を見るというのが
一つの楽しみ方である。この分野においては第1話でお話ししたとおり、VHS(松下陣営)の大勝利に終わった。
今回はもう一つの楽しみ方、「撮る」という分野でのテープのお話だ。
ビデオカメラはまず、当然ながらVHSやβのカセットがそのまま入るものが発売された。
そのころはCCDなんてものがあるわけがなく、業務用並にでかくて重いものばかりだった。
初期には業務用のようにカメラ部とデッキ部が分かれていた。
ちなみにうちでは、VHSでカメラとデッキが一体になったものが出てから購入した。
肩にかつぐタイプで、一体型とはいえでかくて重かった。夏なんか撮影していたら、汗だくになったものだ。
そのカメラを小さく、軽くするため、作られたのがVHS-Cだ。
これは単に小さいカセットの中にVHSのテープを 押し込んだものだ。
同じテープだから、アダプタに入れて普通のVHSデッキで再生できるので、とても便利なもの。
しかし、同じテープを小さいカセットに入れているのだから、
当然、長いテープは納まらないので長時間撮影できないという弱点があった。(最長40分)
そこで、ソニーが開発したのが8ミリビデオテープ。名前の通り、テープ幅8ミリで、VHS-Cよりも小さいカセットだ。
しかも、最長120分ものまで登場し、その使いやすさは言うまでもない。
そして、ビデオカメラ業界ではソニーがシェアを独占し、シャープも8ミリを採用していたので「液晶ビューカム」の
ヒットも手伝い、シェアを確保していた。
逆に、松下、ビクターは結局、最後まで8ミリを採用せず、VHS-Cを貫いていた。
しかしテープの大きさはどうしようもなく、つい最近まで8ミリにくらべるとずいぶん大きなカメラを発売していた。
もちろん、売れるわけがない。
松下、ビクターのビデオカメラが小さくなったのはDVになってからだ。ま、この話はまた今度。
ちなみに、画質的にはVHS-CはVHSにS-VHSが登場したようにS-VHS-Cってなものが現れ、
8ミリはHi8にそれぞれ進化した。さらに、Hi8EXっていうHi8のテープで走査線を増やした方式が
ソニーのビデオカメラに採用されている。(EXとは言ってもこれ専用のテープがあるわけじゃなく、普通のでOK)
しかし、録画時間の長さで勝利した松下陣営(VHS)がビデオカメラでは同じ理由で惨敗したのは皮肉なものだ。
そうそう、よく勘違いされるんだけど、8ミリテープをVHSデッキに入れるためのアダプタなんかないからね。
テープ幅も記録方式も違うんだからそんなアダプタは存在しません。あしからず。  


第3話 DVC
DVCはその名の通り、「DV」というデジタル圧縮で専用テープに記録する新しいメディアだ。
VHSにVHS-Cがあるのと同じようにDVCにも小さいテープ、DVCのミニカセットというものがある。
このミニカセットが現在デジタルビデオカメラに使われている。

DVCは今までのメディアとは違い、まずDVCという規格ができて、各社その規格に賛同して出てきたものだ。
と、言うわけでメディアのデファクトスタンダード争いというものはない。

…なんて言ってしまってはおもしろくないのでちょっと今回は業務用の話をしてみよう。
DVCには業務用の上位規格として松下の「DVCPRO」(ディーブイシープロ)と、
ソニーの「DVCAM」(ディーブイカム)という規格がある。
これらの規格は両方ともDVCとの(上位)互換はある。
ところが、DVCPROとDVCAMとの互換はないという少々ややこしいことになっている。
DVC、DVCPRO、DVCAMは全て圧縮方式は全く同じ。(DV圧縮)
と、言うことは理論的には画質は全く同じと言うことになる。
(しかし画を見ると、異なっている。これはカメラの性能、録画・再生デバイス等々様々な要因がある。
と、いうことは全く同じレンズ、CCD、各デバイス等々…全て同じであればDVCもDVCPROもDVCAMも
同じ画質と言うことになる。現実にそれを試すのは無理だが…)
ほな、何が違うか?記録するトラック幅がちがうのだ。
DVC(民生)<DVCAM(ソニー・業務用)<DVCPRO(松下・業務用)となっている。
トラック幅が細ければ細いほど、同じ長さのテープにたくさんの情報を書き込むことができる
(長時間録画できる)が、その分、エラーレートが高くなり、信頼性は下がってしまう。
細い記録幅で記録されたものを読みとるというのはデジタルとは言えど、難しいことだ。
どうしても読み落としというものが出てくる。
その読み落としはブロックノイズと呼ばれるノイズとして現れる。
業務用でそんなにたくさんノイズが出ては使いものにならないのでトラック幅を太くして信頼性を上げているのだ。
と、いうわけで信頼性はDVC<DVCAM<DVCPROということに理屈ではなる。
その「信頼性」を松下は売りにしている。
対するソニーは「録画時間、信頼性が両立しているうちのトラック幅がベスト」と主張している。
さらに松下は、ソニーに負けている録画時間を克服するために、「ミディアムカセット」という、
ミニカセットとスタンダードカセットの中間の大きさのカセットを出している。わけわからん。これは失敗だと個人的には思う。
ま、これらのことは業務用の話だから普通には関係ないけどね。  


余談 DVCPROテープと2層ダイヤモンドコーティングの誤算

実はDV方式の製品は民生機の方が先に製品化、発売されていた。
特にソニーのDCR-VX1000というカメラは非常に出来が良く、放送のサブカメラや
プロダクション(ブライダル関係など)にも民生機ながら充分使えるものだった。
DCR-VX1000はプロユースにも大変よく売れ、テープも「ダイヤモンドコーティング」された
ソニー製の耐久性のあるテープが売れた。
が、再生させ、編集できるデッキがない。デッキの発売が待たれていた。
そこに、松下はソニーより先にDV方式の業務用を製品化させた。DVCPROだ。
DVCとは上位互換があり、当然DVCで撮った映像をDVCPROのデッキで再生させることができる。
これにユーザーは飛びついた。
できればソニーのカメラを使っているのだからソニーのデッキが欲しいというのが本心だろうが、
ソニーはまだ業務用は製品化されていないのだから仕方がない。
ところが、この松下製のデッキに問題起こった。「起こった」と言うより「起こる場合があった」。
DVCは「蒸着型」と呼ばれるテープを使用している。DV規格を決めるとき、そういう約束をしたのだ。
それに対し、松下のDVCPROは「塗布型」と呼ばれるテープを採用していた。
このテープには研磨剤が含まれており、柔らかいビデオヘッドを削りながら録画再生するので常にその「カス」が発生する。
その「カス」がヘッドに食い込んでしまうこともあるが、削りながら動いているのでそのカスも一緒に削り落としてしまう。
常にヘッドクリーニングかけているようなもんやね。
だから松下製のデッキに松下製のDVCPRO用テープだけ使用する分には問題がない。
ところが、1台のDVCPROデッキに松下製の塗布型DVCPROテープとソニー製のDVテープの両方を使用した場合、問題が発生する。
ソニー製蒸着型テープは松下製塗布型テープの様に研磨剤が含まれていない上に
ダイヤモンドコーティングというその名の通り、硬いコーティングが施されている。
(これによって摩擦の少ない長寿命テープができた)
すると、
松下製のテープを使用して、ヘッドを削りカスを出す

ヘッドにカスが入る

ここでソニー製テープを使用する

研磨剤がないのでヘッドを削らない

カスが入ったままになる

カスがテープのダイヤモンドコーティングをはがす

この硬いカスがさらにヘッドに食い込む

さらにダイヤモンドコーティングされた硬いテープがそのカスをヘッドにしっかり食い込ませ、傷つけてしまうのだ。
これでビデオヘッドはアウト!
だから、松下製のテープだけを使えば常にヘッドをクリーニングしながら進むので問題ないし、
ソニー製のテープだけ使うのであれば最初からヘッドを削らないので問題はない。
1台のデッキに両方使うと問題が起こるのだ。
ちなみにソニーのDVCAMはヘッド自体が硬いので松下製の研磨剤の入った塗布型テープを使ってもカスを出すことはない。(摩擦でテープ傷めるかもしれんけど)
では、なぜ、松下は民生で蒸着型を使用しているのにも関わらず、わざわざ塗布型を採用したのか?
色々言われているが、正直なところは松下はソニーや他のテープメーカーのような
クオリティの高い蒸着型のテープが作れなかったというのが本音らしい。
とにかくソニーより先に製品化させたかった松下にしてみれば塗布型で行くしかなかったのでしょう。
…と、聞いていたのだが、元・松下蒸着テープ研究者の方から、以下のようなメールが届いた。

−以下引用−
 これは事実誤認です。そもそもMEテープはダイアモンド(正確にはアモルファス
カーボン)コーティングも含め、全部松下が特許を所有する技術です。よって他社
は松下のライセンスを受け生産しているに過ぎません。但しソニーとだけはメタル
ヘッドとのクロスライセンスとなっておりますが。ソニーの仙台工場も松下の門真
工場のデッドコピーに等しいものです。
−引用以上−

納得しつつも、そう言われると、新たな疑問が沸いてくる。
松下は民生DVでは最初から蒸着型を採用していたのになぜDVCPROは塗布型を採用したのか?
DVCPROでは塗布型の方が有利な点があったのか?
誰か教えて。

オリンピックにも採用され、CMもバンバンやってたけど、実は苦労している松下DVCPRO。
クオリティはDVCAMの方がいいという人もいるし…
その声に対応すべく、更に画質向上を図るため、
松下は圧縮率を変えた規格を発表したが、僕が見る限り、びっくりするような画質の違いはない。
DVCPROとDVCAMの戦いは始まったばかりであるが、
「良いものは後からでも採用して良いもの(売れるものを)作り、売れないものは切り捨てる」松下か、
「最初からとにかく最高のものをつくり、少々時代遅れになっても作り続ける」ソニーか、選ぶのはユーザーです。 


ほんの気まぐれで作ったコーナーなのに
思いのほか好評のため
調子に乗って質問なんぞ受け付けます
君の質問がこのコーナーを作る!(調子に乗りすぎ)
E-mail  kondo-y@okym.enjoy.ne.jp
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