「函丈」

挙兵じたいは後悔しない。
だが、そうせざるを得なかったことに対する悔いがあった。  

(「中庭同盟」/発行協力:猫猫組 「函文」p.145)

 

芳国。恵州候の許を慶国禁軍左軍将軍が二通の書状を持って訪れる。
一通は景王赤子、そうして一通は孫昭――元芳国公主であった祥瓊からの手紙だった。

祥瓊は自らが犯した罪を償うために恭国へ向かうという―――

               「貴方の父上のものを盗む。―――どうか許して頂きたい・・・・・」(p.146) 


∽この短編で得られる情報∽

・祥瓊の慶国での身分は女御(最下級の官)


∽一言∽

  このお話の存在を知る前。月渓を補完してみようと試みていたことがある。月渓が芳王を切った理由は判った。でもそれに至る間での課程というか葛藤を知らなかったからだ。月渓は芳王の臣だった筈である。ならばどうやってその法を根拠に行われている非道を避けて生き残ったきたのか、とか。本当に切るしかなくなる前に、「彼は何をしたのか」とか。そういうこと。(いや、何かしたら殺されていたのだろうから、それは「後からその当時の事柄を責める、第三者の無責任な視点」なのだが)おそらく書かれていないだけで、いろいろ思うところがあったのだろうが、しかし―――、という訳で、せこせこと妄想してみた。小野主上がもうすでに書かれていることを知らずに。これは、かなり悔しいことである。何が悔しいのかというと、自分がその物語の存在を知らなかったということだ。私は十二国記が好きだ。愛している、と言ってもいい。主上のつづられた「十二国記」世界の物語ならば、どんな些細な物語でも知りたいし、読みたい。

  しかし、それは本屋さんで手に入る代物には書かれていなかった。コミケとか行ったことがない、ご本人にファンレター等も書かかない、それでも、その作品を、作家さんを好きなファンがいる。そんな人たちには作家さんや作品の情報というと、出版社、そうして本屋さんが与えてくれるものが全てで、なのに、自分の知らない世界では、このようにして、「私の知らない十二国記世界」が展開されていたのだということが悔しい。いや、もちろん作品の存在を知ったときは嬉しかった。どうしても読んでみたくて、読んでみたくて。実際読めたときは、感動して涙が止まらなかった。でもこれは私の知らない世界のものなのだ。同じ「十二国記」をえがいてあるものなのに。

 

 


NOTICE!

「函丈」は猫猫組さんというサークルさんが京都私設情報局に掲載された小野不由美さんの短編を纏めて編集発行なさった『中庭同盟』という同人誌に書き下ろされたものですが、現在は古本屋さんで探すしか入手方法はないと思われます。小野先生ご本人に問い合わせ等はなさらないでください。また、発行元のサークルさんにご迷惑のかからないようにお願いします。



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