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「どうしてお前だけなんだ!」
(「魔性の子」p429より)
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どこかに帰りたかったことはない。
ここは自分の場所でないなら。
ではどこが自分の場所か。
そんな夢を見ていられるほど弱くはなく。
信じ切れるほど強くもなかった。
そうしてどうでもいいと、言い切るだけの自分さえも
自分は持たず。
どこかに帰りたいとは思わない。
ただ、二度と、生まれたくはないと思うだけ
それはここでなくてもいい。
もう二度と生きたくないと思うだけ。
私は叫べた彼が、羨ましかったのだ。
ストーリー紹介
「彼は別に特異な姿形をしているわけではなかった。特別醜くもなく、特別鮮やかでもない」(p.22)
母校に「教師の紛い物(教生)」として戻ってきた広瀬は、教室の中に「異質な」少年を発見する。
周囲から不自然に浮いた存在――高里――に広瀬は興味を持つ。いわゆる「同種」の人間として。
この後に起こる悲惨な事件より、この「思い込み」こそが、実は悲劇であった。
「奴は台風の目だ。本人が静かなぶん周りが荒れる。すぐに分かるさ」(p.27)
不思議なのは高里本人だけではなかった。彼の周囲――クラスメート、両親、等も、彼を遠巻きに、
ある意味「腫れ物に触るように」扱った。彼に対して「何か」――悪意を持つ持たないに関わらず――
を行った人物は必ず「報復」ともいえる不慮の事故に遭遇するのだ。そうしてそれは高里本人の意思とも
無関係に起こるものだった。どうやらそれは高里が以前体験した「神隠し」に原因があるらしい。
次第に周囲から孤立し、更に迫害を受ける高里を広瀬は庇う。
彼と同じ「失われた過去」「帰るべき何処か」をもつ「同胞(故国喪失者)」として。
しかし――――――
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「人は誰も何かしら異端だ―――異端者は郷里の夢を見る。虚しい愚かな、けれども甘い夢だ」(p.430)
後は、衝撃のラストを味わって下さい。
一言
この作品には賞味期限が存在していると言われる。私の初読は18、無理矢理間
に合ってしまった訳だ。尤も、当時は、確かに賞味期限内だったけれども、今思う
とあの頃の方が「痛く」はなかった。それはあの時の私が、今よりも「おとな」
だったということではなく。ただ単に「わかってなかった」からでしょう。
何を?
「すべて」を。
「わかっていない」ってことは無敵だ。たとえ、「知らないでいる」というその状態
自体は罪でも。当時は、無邪気に「罪」をおかしていられた。なんの思いもなく。
いや、違うな。それは、「いま」の私が「むかし」を思い出してそう思っているだけで。
昔だってちゃんと「わかって」いたんでしょう。
いま、自分なりには「わかっている」と思い込むことができる程度には。
ええと、「魔性の子」と遠ざかっていっているな。ええと、そのうち続きかきます。
登場人物紹介