日曜日

                                 洵           

 


日曜日の教会は、子供たちでいっぱいだ。
彼らの目当ては、金髪で青い目の、優しい神父様に遊んでもらうこと。
神父様はいつも最初に聖書を読む。
その、少しだけ退屈な時間が過ぎてしまうと、そんなに広くはない教会の敷地内では、「だるまさんが転んだ」とか「縄跳び」とかの楽しい遊びが始まる。
神父様はいつも、それはそれは楽しそうに遊んでくれるのだ。


ジョン・ブラウンは、子供たちの無邪気な遊びを楽しそうに見ている。
ジョンは子供たちの笑顔が大好きなのだ。
ニコニコしながら、ジョンが教会の前の石段に腰掛けていると、生垣の向こうから騒がしい声が聞こえてきた。
「まだわかんないのぉ?何回道を間違えれば気が済むのよぉ」
「綾子だって分かってないじゃん!大体本当はぼーさんが車を出すって言ってたんだよ!」
「車検っていうものがあってな。ぼーさんは安全なドライバーだから、その辺はしっかりしているのだよ」
「答えになってない!」
その声の主たちは間違いなくジョンの知人たちである。
仕事仲間であり、ジョンの大切な人達だ。
照れくさいので一回も言ったことはないけれど、ジョンは彼らのことが大好きである。
「松崎さん、谷山さん、滝川さん」
ジョンが前触れもなく声をかけたので、三人が一斉に目を丸くしたのが面白かった。
「ジョン!・・・って事はここが教会なんだ?」
最初に口を開いたのは谷山麻衣で、満面の笑みを浮かべている。
「久しぶりね、素敵な教会じゃない。・・ああ、ちゃんと生きてる樹があるわ」
「へえ、おおきに」
「おお、その関西弁しばらく聞いてなかったなぁ。元気にしてたか?」
「はあ、ぼちぼちです」
滝川法生は苦笑気味に、やっぱお前はいいわ、と言った。
「前にジョンが一回来てみたらって言ってたでしょ?だからね、ぼーさんと綾子を誘ってきてみたんだ」
「そうなのよ。それなのにこの子ったら手土産も用意しなさそうじゃない?だから、昨日私の家でケーキを焼いてきたわ」
「綾子の料理は結構いけるし、麻衣が手伝ったらしい」
「うん、そうなのー」
「味見だけでしょ?」
いつものやりとりは、場所がどこであろうと変わらない。
そこがまた、なんとも言えず嬉しかった。
「お子達がたくさんいらっしゃるから、ほんまに喜ぶと思います。おおきに」
「たくさん作った甲斐あったねー綾子」
「たくさん味見したの間違いでしょ?」
綾子と麻衣のやりとりはそのままどんどん進んでいく。
その様子を横目に、軽く肩をすくめた滝川はケーキが大量にはいっていると思われる紙包みをジョンに渡す。
「配ってこいよ」
「へえ。滝川さんたちも中に入っておくれやす。お茶ぐらいなら出せますよって」
「サンキュ」

ジョンが子供たちを集めてケーキを配っている間、三人はほほえましそうにその光景を見ていた。
「なあ。さっきもここ通ったよな」
「うん。何回か」
「誰もここを教会だって思わなかったのはなぜかしら」
「ぼーさんが、ここは保育園だろうって言ったからだよ」
「人に責任転嫁するんじゃない。・・・誰もが、そう思っただけだろう
が」
「・・・ジョンらしいよねえ」
「そうねえ」
「期待を裏切らない奴だよな」

ジョンの幸せそうな笑顔は、子供たちのおかげだけではなく、自分たちのおかげでもあるということに彼らはまだ気づいていないようだった。


 


Fin.   2000.6.25
                                  
 

                               

 

 

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