スカパー(日本映画専門チャンネル−シネマホリック)で放映された、津田寛治さんのインタビューです。 Q: 上半期話題作の「模倣犯」という事ですけども、まず津田さん御自身は、原作をお読みになりましたか? 津田: はい、もちろん、読みました。 Q: その時の感想は? 津田: 僕、この話しを頂いて慌てて読んだんですよ。 とにかく早く読まなきゃと思って、朝から晩までみっちり没頭して読んだんですね。その間、睡眠時間、3時間とか4時間しかなくて、もうお尻がちょっと「痛っ」てなるぐらいまで、ずーっと読んで、やっぱ3日かかったんですよ、それで。3日間どっぷり模倣犯の世界、原作の宮部みゆきさんの模倣犯の世界に入ったんですね。もうやっぱり立ち直れなかったですね、しばらく。ほんっとにもう、ピースと浩美が憎くて憎くて、被害者の方が可哀想で可哀想で・・・。 ふっと気付いた時に、この憎い奴、俺、演じるんだと思った時に、もうどうしたらいいんだろうって、ちょっと戸惑いましたね。 Q: 森田監督のこだわりのキャスティングで、御自身ではどうして自分が浩美役に選ばれたんだろうと感じましたか? 津田: インする前、お話を頂いた時には凄く嬉しかったんですが、何で俺が浩美なんだろう?ていうのはありましたね。 Q: 実際その答えは? 津田: 実際クランクインして、浩美をやってみたら、もう、不思議なぐらい自分がハマっていったんですよ、浩美に。 で、何の苦もなく、浩美になってる自分がいて、その時にやっぱり監督の洞察力の凄さにびっくりしましたね。ああ、俺の中に浩美がいたんだ。凄く浩美に近い俺っていうのが自分の中に居たんだって、演じてみてわかりましたね。 Q: 森田監督は、津田さん御自身、非常に、憧れの監督という風に伺っておりますけども・・ 津田: はい、そうですね。 もう、ほんとに「家族ゲーム」を初めて観た時に、僕、生まれて初めて、意識して邦画の映画監督の名前を覚えたんですよね。 それが森田芳光って名前で、で、その監督の作品をこれからずっと観て行こうと思って、今までほんと、35ミリの作品も全部観てるんですよ、監督の作品は。だから次の新作は何だろう何だろう、と思ってて、まさか作品のオファーって形で次の新作を知るとは思わなかったので、ほんと、夢のようでしたね。 Q: 初めて会った時、何か言われました?アドバイスみたいな事も含め。 津田: あ、はい。そうですね。やっぱり浩美とピースというのは、リズムが凄く大事だから、二人の会話のリズムって所を注意して、それを念頭に置いてやってくれれば大丈夫だよ、と言って頂きましたね。 Q: 出来上がり、完成作品っていうのは、ご覧になりましたか? 津田: はい、観ました。この間観まして、僕にとって凄く、人生の中でも要になる作品だったんで、それだけ思い入れも多くて、そういう気持ちも一入で観たんですけども・・・もうそんな気持ちは全部ぶっとびましたね。最初からもう「なんじゃこれ!」て感じの映画で、俺の個人的な思い入れとかそんなのは弾け飛んじゃうぐらい、パワーを持った作品だったんですよ。で、ある意味エンターテーメントではあるんですけども、エンターテーメントっていう枠では、くくりきれないぐらい、凄いパワーを持っていて、そのパワーは何かを人に伝えようとか、何かに対して警鐘を鳴らしてるとか、そういう類いのものではないんですね。その作品自体がまるで生き物みたいに、ぐわーっと生命のオーラを出してるんですね。しかもそれはおぞましいぐらいに脈うってるっていうか、例えるならハ虫類・・・蛇、ぬるぬるした蛇みたいなものに、巨大な蛇に巻取られてる、でもその蛇の鱗っていうのは、一枚一枚剃刀で出来ていいて、巻取られるたんびに、肌がえぐり取られる様な、観客がそういう気持ちになってしまうような、そういう映画だったんですよ。 だからもう、ホントびっくりして、でもう、観てるうちから、どんどん背筋が冷たくなっていって、これを観た人はみんなどう思うんだろう?それを考えるとまた背筋が冷たくなって。 だから、あの映画が、今の現代の邦画シーンの中で、どういう風に受け入れられるのかっていうのが、凄くやっぱり興味深いですね。 Q: 中居正広の映画という部分での、演技という部分では、近くでご覧になってて、どうでしたか? 津田: やっぱり凄かったですね。 役に対する取り組み方っていうのも、何ていうか、あからさまに「取り組んでるんだっ」ていう凄い、過剰なスタイルっていうのは一切取らないで、あくまでナチュラルで、かといって決して不真面目ではなく、凄く真面目に取り組んでらして、でも知らない物はちゃんと知らない、わからない事はわからないってちゃんとそういう自分をオープンにいしているっていうか。その中で凄く真面目に取り組んでいる。で、なおかつ周りの人にも気を遣ってる。そういういくつもの事を一度期に、多分、中居さんはやってらしたんだと思いますね、現場では。 だから中居さんの作り上げたピースっていうのも、たぶんあそこに居た、現場に居た人達の度胆を抜くようなものだったんだと思うんですよ。だから誰も想像していなかったていうか・・。ひょっとしたら中居さん自身もそれは想像していなかったかもしれないし、そういう風にして出来上がったピースにやっぱり、僕の中の浩美像というのは、相当影響されましたから。そういった意味でも、ほんと中居さんといっしょにお仕事出来て良かったなーと思います。 *最後に津田さんより視聴者にメッセージ* 「模倣犯」という映画、これはあの僕流なんですが、考えて観るよりも感じて欲しい映画です。 ですからこれを観て、何が言いたかったとか、そういう事を観た人同士で討論するよりも、「とにかく凄かったね」「とにかく怖かったね」「おもしろかったね」という自分が体感したその事だけを、感じてもらえると凄くいいなーって思います。 …02.6/20 |