ホームページの写真は生まれて、約1カ月の稚ナマコ(ナマコの赤ちゃんです。正確にはマナマコの赤ちゃんです。)で,体長0.4ミリのものです。

何の因果かナマコの赤ちゃんを育てる仕事に就いて丸2年になろうとしています。

シーズン中の春から夏にかけては、それこそチマナコ(血眼)になって、稚ナマコの世話をしています。シーズンオフには色々と集めたナマコにかかわる資料をまとめようと思いながら、なかなかできませんでした。そこで、少しずつホームページに書いてゆくことにしました。

「ナマコ」の名の由来

 もともとナマコは「コ」と呼ばれていたようです。それで干したものを「イリコ」、生のものを「ナマコ」と呼ぶようになったそうです。また、珍味のコノワタ、コノコもこれに由来しているようです。

 他にもナマコには人の眼(マナコ)にあたるものがないので、マナコナシとか、ナマナコ(無眼)と呼ばれていたのが訛ったとも言われています。

ナマコは動かないものの代名詞のように言われていますが、結構動きます。特に生まれてから20日間はプランクトン生活をしていますから、活発に泳ぎ回っています。また、この間に何回も変態し、まったく違った形へと変身します。本当に不思議な生物です。

少しはなれますが、ホヤも変わった生物で、漢字で「海鞘」と書きますが、昔は「老海鼠」と書いていて、海鼠(ナマコ)が年老いて老海鼠(ホヤ)になると考えられていたようです。そこで、異形の生物のよしみでホヤのホームページを紹介します。

 

海鞘(ホヤ)のホームページへリンク

 

日本経済新聞の記事(97,6,15「知の冒険」)から

 「ナマコは省エネ型の優れた生物である。それ引き換え現代人は、エネルギーを大量に消費して、生物のサイズに合わない生活をあくせく送っている。限界は近い。高齢化社会の決め手はナマコ的生き方である。」(以下は新聞記者と東京工業大学本川達雄先生の対談の一部です。

 「ナマコはウニやヒトデの仲間で棘皮(きょくひ)動物です。マナマコを生で食べますし、内蔵はこのわたになる。中国料理では干しナマコを使う。うまいものですね。だから、どんどん食われてしまうかというと、そうでもない。サポニンという、魚には毒として働くものがあるし、皮のキヤッチ結合組織が緊急時に硬くなったり、柔らかくなったりして身を守からです。」

 「物がいっぱいある、早く出来る、量を増やせば幸せだと。しかし、エネルギーはどんどんなくなって、環境汚染も進んでいる。ところでナマコは砂を食って生きています。栄養価がそんなにないもので生きていけるというのは、あんまりエネルギーを使わないからです。現代人、ことに都会人は一生懸命、動き回って生きている。動き回ればえさはとれるし、もうかるだろうが、そのためにはたくさん食わなければらない。それには、ますます動き回らねばならない、と、これでは堂々めぐりです。」

「自分の住んでいる砂を食って生きていけるなんて、お菓子の家に住む夢の実現ですよ。ナマコはあまり動かずにノテーッとして省エネで倹約してやってきたら、世の中が天国になっちゃった。」

 

 個人的には異論もありますが、面白いとおもって読みました。

 

次も日本経済新聞の記事(97年日付不明の「知る食ロード」)から

 [能登のくちこ]

 「希少、高価、地域・季節限定…。話には聞いているが見たことも食べたこともない幻の珍味、その条件をすべて備えているのが、能登名産「くちこ」である。成熟した寒ナマコの卵巣を干し固めたオレンジ色の三角形を、あぶってかみしめると海の香気が口と鼻腔(びこう)にあふれ、酒はすべからく甘露となってのどを滑る。」

 

 ナマコの卵巣の形は素麺のようでつるっと口にはいる。味は同じ棘皮類のウニ(因みに普通食べているところはウニ卵巣である。)と似ている。私は能登の「くちこ」は食べたことはないが、自家製のものを食べた。何ともいえない風味であった。広島の地酒にぴったり来ると思う。広島産のものを作って欲しいと思う。