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 この作品は1999年冬のコミックマーケットにおいてSounds of Singles というサークルが発行した『秘密のアスカ』という同人誌内で、多くの作者方と同列に扱っていただき、初出展となりました。今回はHTML版としての公開です。誌面の四分の一近くを占有してしまうほどの長文を掲載していただいたことには感謝の念が絶えません。
 フィクション、という言葉の語源の通り、この作品はしょせんフェイクでしかないのです。ことさらそれを実感してしまうのは、現実世界でいろいろな人間の恋愛の形を見ているときなのですが、小説の世界よりも現実はさらに複雑で奥が深い。
 なぜならば創作という活動は基本的に一人で行われるものですが、現実というのは多くの人間が関わってしまうために複雑になってしまうのです。それぞれの心理状態を把握するというのは至難の業ではありますが、ヒューマンドラマを描こうとするならば達成しなければならない課題には違いないのでしょうね。
 だから今の私の実力では登場人物を絞ってもこの程度のものにしかならない、という現実を突きつけられることとなりました。人物を増やせばよいというものではないのですが、やや物足りなさは残ってしまいました。ただ今回のように中学生の恋愛をテーマとした場合、年齢的な制限を考慮するとどうしようもなかったのかもしれない、と思います。
 初期では登場が少なかった綾波レイですが、友人の指摘後、登場する場面がこれでも増えています。だけどまだ少ないという感触は否めない。ですから彼女にスポットライトを当てた『SOLA』という作品も制作しました。ですから綾波レイの再登場はまた後日ということでお楽しみに。
 この『あいのうた』と『SOLA』という二部作によって、エヴァ――神のプロトタイプ――が存在しない近未来は初めて完結していると言ってもいいでしょう。そう言いきれるほど、書き終わった後の充足感がありましたね。
 もし作中に気に入った箇所があれば、Something Elseの「あいのうた」という曲を聴きながら、読み返してみられると良いのではないでしょうか。新しい発見や新しい気持ちが生まれたりするかもしれないと思います。個人的にすごくお奨めの名曲ですから。
 最後になってしまいましたが、このような拙作を掲載許可していただいたSounds of Singles の皆様、そして製作段階で何度も付き合ってくださった戸田さん、石津、中川、中本の友人三氏、彼らは度重なる慇懃無礼なお願いにも快く対応して頂きました。本当に感謝しています。
 そして最後まで付き合ってくださった読者の皆様に対しては、最大級の感謝を。

 皆さん、本当にありがとうございました。
 それではまたの機会に。


初出:1999.12.25
同人誌「秘密のアスカ」

修正:2000.08.01
Web edition


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