本--今月の一冊
最終変更日(1996年5月31日)
このページでは,私がここ最近読んだ本についてのコメントを載せています.今月の一冊と題しながら,更新は1ケ月に1回というわけではなく,気の向いた時(コメントを書きたい本を読んだ時)に随時更新していく予定です.したがって,1ケ月の間に複数の本の紹介をすることもあると思います.
ジャンルは,小説,エッセイ,実用書,マンガ,ノンフィクション等,一切ゴチャマゼの中から選択していきます.なるべく新刊についてコメントを載せるように心がけますが,私の読書速度からすると,発行から数ヵ月おくれにはなってしまうでしょう.(最初から3月発行の本についてですから)
「数学でみた生命と進化」
- ジャンル:ノンフィクション/科学
- 出版社:株式会社 講談社
- 出版形態:新書(ブルーバックス)
- 著者:カール・シグムンド (Karl Sigmund)
- 訳者:慶応義塾大学冨田研究室
- 定価:980円(1996年3月20日発行の第1刷)
- コメント:「この本は数学についての本である.」とのっけから書かれているように,まぎれもなく数学の本です.行動生態学,分子進化学,集団遺伝学,個体群生態学などのさまざまな生物学に対する見解を,数学の一つのジャンルであるゲーム理論を通じて書かれています.とかく観念的な学問と思われる数学の,数学的論理性が当てはまりにくい対象と思われる「生物」に対しての応用例の紹介といったところでしょうか.
生物のさまざまなしくみが,「ゲーム」という視点でみるとよく理解できるというのを知るには好適な一冊.しかし,独特な言い回しの多い科学啓蒙書の訳書の常で,なかなか翻訳がうまくいかず,読みにくいのは多少ありますが(これは訳者のせいではなく,著者が難解な理論を判りやすく正確に述べようとすると,独特な言い回しや冗談が多くなり,その結果,日本語では判りにくくなってしまうからだと思っています.),日本ではこの分野の科学啓蒙書は少ないと思われるので,貴重な一冊といえるのではないでしょうか.
(1996.5.31)
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柴田光信/Mitsunobu Shibata/ shibata@enjoy.ne.jp/