寄生虫妄想

ダニが原因であると断定する前に
 ダニはいないのに,思い込みによってなんだか痒くなっている場合がよくあります.
私のところへ相談が来るものの中にも単に思い込みによるものと想定されるものがときどきあります.
 このような,実際には虫は寄生していないのに,かたくなに虫の寄生,あるいは被害を信じて疑わず,他人が訂正不能なほどの妄想を抱く場合,専門家は寄生虫妄想と呼び,一種の病気として対応します.
 この病気は本来精神科の領域のものですが,精神科の受診を極端に嫌うのもこの病気の特徴で,また,当然,自分自身は病気と思っていないので病院には行かず,ひたすら保健所,害虫駆除業者,昆虫学者などに救いを求めることが多いようです.
 もちろん,頼られる側としては対策のしようはなく,かといってそのままにしておくと,だんだん言うことが激しくなり,極端な場合,虫を駆除するためだといって,家に火を放つなどの行動をとる人もあるという,頼られる側としては非常に厄介な病気です.
 基本的には患者さんの正確な知識と冷静な判断に頼るしかないというのが現状なわけです.そこで,下に寄生虫妄想の生まれる素因と状況,典型的症状を列記してみました.もしダニで困っているという方で思い当たる節があるということであれば,今一度冷静になって考え直してください.
原因 好発年齢,男女比 好発部位 虫の種類 症状や訴えの特徴 感応
 以上,どちらかいうと精神的な要因を中心にいろいろ述べてみましたが,上のようなことがあったとしても,もちろんすべて精神的な要因によるものとなるわけではありません.本当に皮膚に寄生虫がいたり,ダニによる刺咬症の可能性は否定できませんし,他の内因性の疾患の可能性も高いです.
 また,仮にダニによる被害があったとしても,冷静になって考えてみれば,実は体の何カ所かが刺されただけということが多いと思いますし,刺されても然るべき対処をとれば刺されなくなるはずです.神経質になって,殺虫剤の過剰な処理や,皮膚を掻きむしるようなことはかえって悪影響をあたえます.神経質にならずに,おおらかな対応を心がけるのがよいでしょう.
上の文章を作製するにあたって次の本を参考とさせていただきました.

「PCOのためのダニ対策の手引き」
(社)日本ペストコントロール協会編 発行 


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柴田光信/Mitsunobu Shibata/

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