有名なヒトの皮膚寄生ダニ．疥癬の原因．輪郭が丸く，体表に細かい横しまがあり，背面中央に三角形をした表皮の隆起がある．（左の写真は幼虫の腹面）脚はすべて短く，1，2脚は長い柄をもつ吸盤状の構造をとるが，3脚，4脚を1本の鞭状の長毛をもつ．
卵から成虫になるまですべて，人間の皮膚の上で生育する．受精したメスは皮膚最外層にもぐりこんで，トンネルを作り，産卵をする．産卵をするとまたトンネルをつくり前進する．幼虫は産卵後3〜4日で孵化し，トンネルを出て皮膚上を歩きまわり，毛包孔に入りこんで，そこで成長する．成熟すると，皮膚上に出てきて交尾をおこなう．
このダニが寄生すると，疥癬とよばれる，伝染性の皮膚病となる．人から人への感染は皮膚と皮膚の接触によって起きる（SEXなど）．また，衣類や寝具を介しても伝染する．潜伏期間は1ケ月ほど．
治療は硫黄剤の軟膏，安息香酸ベンジルのエタノール溶液，クロタミトン軟膏などの外用薬が有効．なお，薬剤は患部のみではなく，頭部以外の全身に塗ること．また，副腎皮質ホルモンは使用しないこと（かえって症状が悪化する），不必要に長期塗布を続けないこと（基本的にはこれらは殺虫剤である）等に注意が必要である．

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柴田光信/Mitsunobu Shibata/ shibata@enjoy.ne.jp/