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bookshelf 〜comic

 潮路の本箱の裏側は漫画でいっぱい……。
 ということで少女漫画のぺーじです。古いものが多いのはご愛敬(笑)。
 個人的な趣味で作ったコーナーですので誤解、偏り等々あるとは思います。『これが正しい情報だ!』『自分はこう思う!』といったご意見があれば、メールまたは掲示板までお願いいたします。なお、文章中作家の方の敬称は『さん』に統一しております。

 作家買いしてしまう作家 

清原なつの 『花図鑑』ほか 〜理系の描くSF世界

 花(植物)をモチーフに、愛と性を(! 当時の編集部が付けたキャッチフレーズ)描き続けた連作。少女や女性の様々な人間もようをつづっています。
 昭和51年に『グッド・バイバイ』でデビュー以来(投稿作は『チゴイネル・ワイゼン』)、りぼん、ぶーけと佳作を発表し続けているお気に入りの作家さんで、その大部分はリアルタイムで読み続けてきましたが、最近単行本(アンソロジー除く)をやっとコンプリート出来ました。クールで、独特のスタンスで描く理系の(!)漫画家、それがこの清原さんです。語れば頁は尽きないのですが、またどこかでコーナーを設けるとして、ここでは簡単に。
 ジャンルはこの『花図鑑』以外にSFのシリーズや花岡ちゃんという愛すべきインテリ女子大生のシリーズなどあります。『飛鳥昔語り』『光の回廊』など歴史物にしても最後に一捻りが必ずあったりして、どれもはずれなし、オススメ品ばかりです。
新書サイズ、ワイド版の単行本はほとんど絶版で手に入りにくくなっていましたが、2002年、ハヤカワよりそれらを組み替えて文庫化が始まりました。単行本未収録作品も何本か入っています。この『花図鑑』も長らく入手困難な名作として知られてましたが、文庫化されました。珍しい長編『千利休』や、未収録作をまとめた『清原なつの忘れ物BOX』1,2が出ています。現在は雑誌『Flowers』やその別冊『凜花』に読み切りが掲載され、単行本『人魚姫と半魚人王子』『雨降り姫と砂漠王子』(お伽ファンタジーシリーズ)が出ています。

 遠藤淑子 エヴァンジェリン姫シリーズ『王室スキャンダル騒動』など 〜ハートフル人生劇場

 ヨーロッパの小国の王女エヴァンジェリン姫が貧しい国のため、お付きの執務官オーソンと繰り広げる騒動の数々。
 遠藤さんの作品はハートフルな人生劇場です。そして本人も言われるように説教と動物が欠かせません。読んだあとには何か、心に残るものがある漫画です。ほかに『マダムとミスター』『いつか夢の中で』『山アラシのジレンマ』などがあります。最近の作品としては『ヘヴン』と『狼には気をつけて』。これまでもときどきSFを描いてきたこの方ですが、『ヘヴン』は本格的なSFとして作られています(SFファンには意見がありましょうが……)。
2002年秋、復刊の声に答えて『王室スキャンダル騒動』が文庫で復活しました。ほか『天使ですよ』『スイートホーム』など続々と文庫化されています。

 山口美由紀 『フィーメンニンは謳う』『朝からピカピカ』ほか 〜ジャンル,時代を問わない少女漫画

 学園コメディ、ファンタジー、SF、そして近年は江戸時代物とジャンルはなんでもござれ、そしてカラーを描かせたら少女漫画界でも屈指の絵師(しかもデジタル化いっさいナシ)、山口さんの作品は読後感がとても爽やかです。『朝ピカ』でハマったのですが、初期の連載作品『V-Kカンパニー』も80年代白泉社のいい味を出してますし、大作はないですが、ぽつぽつと描かれるSFも完成度高いです。個人的には珍しい形の転生を扱った『わたしに降る雨』が好きかなあ。

 川崎苑子 『土曜日の絵本』『りんご日記』ほか 〜等身大の少女像 

川崎さんの描くヒロインはたいてい少女。それも個性的だけど、どこか親近感のある女の子です。『りんご日記』のりんご然り、『ポテト時代』のそよ子然り。
今はレディースコミックに活躍の場を移しましたが、それでも感情移入しやすい女たちを描き続けるのは、得意とするところです。

『土曜日の絵本』全4巻(集英社文庫)、『ポテト時代』『いちご時代』上下(ソノラマコミック文庫)北村夏名義の『私に似た人』(あおばコミックス)と文庫化されてましたが、また入手が難しくなってますね……。

 水上澄子 『花かざりの道』『リンデングリーンの小鳥たち』ほか 〜優しさの投影 

70〜80年代のなかよしとその増刊で活躍した水上さん。その繊細なタッチには今でも根強い人気があり、復刊運動も盛んです。
シリーズものもありますし、単行本未収録ですがSFも描いてます。それらを通じて、優しさ、強さ、哀しみの中の希望を綴った作品は一度読むと忘れられないでしょう。

 たとえばこんな作品

 今市子 『百鬼夜行抄』 〜勧善懲悪ばかりでは

怪奇小説家で自身も霊能力者だった祖父を持つ飯嶋律はやはり強い霊感の持ち主。望むと望まずに関わらず、妖怪たちと縁の切れない毎日は続く。ほか中身は式神の父、無自覚の妖怪体質従姉の司、トラブルに巻き込まれやすい巫女くずれ(?)従姉の晶等々、周囲の人々も個性的。
BL系でも知られたこの方ですが、やはりこの妖怪もので本領発揮されていると思います。絵柄の細かさもさることながら、緻密に計算されたプロット、隅々まで書き込まれたディテールは今さんならではというところでしょう。
ハマった私は挙げ句、こんなことまで書いちゃいました。

鳥、特に文鳥飼いにはたまらない鳥コミック『文鳥様と私』、こちらもおすすめです。

 流水りんこ 『インドな日々』 〜虚より実は面白い?

ホラー作家である作者が、インド放浪の日々をつづったエッセイ漫画。暴動アリ、葬儀アリ、結婚アリ、動物(虫)アリと盛りだくさんです。
あおば出版の鳥コミックで注目していた方ですが、この人に語らせるインドはサイコー! 朝日ソノラマより出ている『ほんとにあった笑っちゃう話』などに連載中です。
ほか『インド夫婦茶碗』は同じ作家の育児(メイン)コミックです。これは『本当にあった笑える話』『最高の主婦達』(ぶんか社)に掲載。育児モノが苦手でなければ、こっちも面白いです。

 志摩ようこ・原作 名木田恵子 『白夜のナイチンゲール』 〜北欧の幻想の中で

白夜の国フィンランド。母を早くに亡くし、また父を事故で失ったジャンキンとラベリンの兄弟は、古井戸の中の地下の森で少女を見つけます。その少女ミシュリヌは彼らの父によって生まれたときから、言葉を知らず育てられたのでした。次第に二人共がミシュリヌに恋をしますが、彼女の出現に疑問を持った幼なじみステファンによって、ミシュリヌの意外な正体が暴かれます。
原作は名木田恵子さんです。なかよしの連載でしたが、編集方針か、りぼんに比べると原作付きの漫画が多いように思います。どう影響されたかといいますと、ちょっと独特の絵柄なんですね、志摩さんという方は。でも髪や衣裳がきれいで、この頃随分真似して描いたりしてました。ちなみに志摩さんは曽祢まさこさんの実の妹さんです。 ほかに)『ロリアンの青い空』『リリアーナの黒髪』。
2000年、この作品と『ロリアンの青い空』が文庫化されました。こちらにコメントしています。

 このジャンルならコレ

 歴史 

 長岡良子 古代幻想ロマン・シリーズ 『葦の原幻想』ほか 〜日本古代史

大化の改新から聖武帝の時代の日本を描いた連作です。その多くは役の小角にゆかりのある超常力者摩由璃か、藤原不比等にまつわる話ですが、衣裳や名前などリアルで、膨大な史料を読んで描かれたという感じがします。歴史の勉強にもいいかも。おおすめは『天離る月星』『眉月の誓い』『夢の奥城』です。

 風間宏子 『ビオランテ』 〜珍しいエリザベス朝時代の物語

イギリス、チューダー朝時代の物語です。権力争いにまつわる陰謀に巻き込まれ、両親を殺されたエルシノア。成長した彼女は男装して両親の仇を討とうとしますが……。
ちゃおで連載時に一回だけ読んで、それきりになっていました。続きが気になって探していたのですが、偶然古書店でジュールコミックスとして出ているのを見つけだしたものです。若き日のエリザベス1世が登場する作品は珍しいですね。
この方の珍しい歴史物として、ところどころで話題にされますが、ジュールコミックス版は長らく入手しにくくなっていました。
ですが2012年2月ぶんか社より文庫上下巻として発売されるそうです。名作の復刊、喜ばしいことですね。

 小野弥夢 『緋の風』 〜コスチュームものもよろし

フランス革命前夜、捨て子として引き取られた青年ジャン=ルイと、その義理の従姉妹マリアンジュは幼なじみ。二人は恋人同士だったのですが、家の事情からマリアンジュは年上の貴族のもとに嫁がされることに。実はその貴族こそジャン=ルイの実の父親で、マリアンジュのおばとの悲恋のもとに生まれたのでした。昔の恋人の面影をマリアンジュに求める貴族との結婚に、必死に抵抗するマリアンジュでしたが、時代は革命へと流れ……。
『Lady Love』などの作品のある小野さんですが、こんな歴史物も描いてらしたんですねえ。
2000年、文庫化されました。

 SF 

 萩尾望都 『スター・レッド』 〜影響を受けた凄い設定

火星生まれの星(セイ)は科学者の義父に拾われ、正体を隠したまま育ちます。その昔、流刑の地であった火星では囚人の子達が生まれますが、その子達は環境に適応し、髪は白く目は赤、透視や瞬間移動の能力を備えていました。世代を経るごとに能力は増し、星はその五代目で力も最大になっているのです。そのことはいわゆる〈火星人〉だけの秘密でしたが、その後移住した人々によって〈火星人〉達は追い立てられ、行き場を失います。星も正体を暴かれそうになり、火星へと帰りますが……。
SFを描かせたら第一人者の萩尾さんの作品で、代表作に揚げてもいいのではないかと思います(『11人いる!』や『銀の三角』も捨てがたいですが)。白い髪に赤い目、超能力を使う火星人という設定は衝撃的でした。それが人類がたった何世代かで進化(退化?)した形だなんて。ネーミングも星・ペンタ・トゥパール、ファーストネームを漢字で、しかもカタカナでルビを打つ、それからペンタは第五世代の意味ですが、このどちらの発想にも感動しました。いろいろなところで影響を受けた作品です。

 水樹和佳 『月虹』 〜地味ながら良質のSF

東西の対立が未だ続く21世紀、ソビエトから姉と一緒に亡命したソミューは謎の人物プラズマと出会います。そのことがきっかけでソミューの目は光を取り戻しますが、実はソミューとプラズマはかつて滅びた惑星セレスの生き残りだったのでした。
萩尾さんや竹宮さんほどの派手さはありませんが、水樹さんのSFも傑作が多いです。科学的考証も完璧。 ほかに)『樹魔・伝説』『イティハーサ』
水樹さんの作品はハヤカワから続々文庫化されています。ほかのどこでもなく、あのハヤカワからってところがすごいですね。

 ファンタジー 

 佐藤史生 『夢みる惑星』 〜隣に竜がいる異世界

アスカンタの王モデスコとその異母妹の間に生まれたイリス。王位をという父の言葉を背に、幻視者として谷の大神官となるべく彼は育てられます。成長後、谷で予知された〈大変動〉を前に異母弟である新王タジオンと対立しながらも、イリスは人々を避難させようとしますが・・・。
初出はプチフラワー、この雑誌は多彩なジャンルの作品を生みだしています。この『夢みる惑星』もしっかりした舞台設定で、雰囲気たっぷりの〈真性〉ファンタジーです。
ほかに『ワン・ゼロ』『ムーン・チャイルド』『心臓のない巨人』などのSFや『七生子シリーズ』などの現代ものも秀作揃いです。
この『夢見る惑星』には『竜の姫君』『雨の竜』という後日談があり、それぞれアンソロジー『アリス・ブック1,2』(実際はローマ数字)ほかに収録されています。

 あしべゆうほ 『クリスタル・ドラゴン』 〜繊細かつ緻密な魔法に囲まれて

アングロサクソン人が進入する前のエリン(アイルランド)の物語です。部族の中でただひとり黒髪に生まれたアリアンロッドは、取り換えっ子と呼ばれながらも女魔法使い(ドルイダス)の修行を始めます。その修行も終わらぬうち、邪眼のバラーの一族に襲われ、アリアンと族長の娘ヘンルーダを除いて一族は全滅します。復讐を誓ってバラーのもとに潜入しますが、邪眼によって失明、捕らえられていたヘンルーダはバラーの呪いを受けます。からくも逃げ出した二人ですが・・・。
魔法使い(ドルイド)達には修行が終わると杖が渡されるようですが、アリアンは〈杖なき者〉という定めの持ち主。その杖を求めて旅をする宿命とのことです。舞台は北欧、ローマと次々と広がります。一時連載が中断していましたが、再開されました。あしべさんの緻密な絵柄とあいまって、素晴らしい魔法の世界が広がっています。

 紫堂恭子 『辺境警備』『星が生まれた谷』 〜また別の世界の物語

都でちょっと失敗し、辺境の地に飛ばされてきた隊長さん、サウル=カダフ。西カールの小さな町には気のよい人々、兵隊さんたちに、少し陰のある美貌の(!!)神官さんがいました。酒好き、女好きで都を恋しがる隊長さんでしたが、次第に辺境にも慣れてきます。だが、神官さんが都へ帰ったところから、過去の事件が再び彼を巻き込んでしまい……。
ブームで、量産されてきたファンタジーですが、これは本物の一つです。絵柄といい、コメディーの入り具合といい、設定もすばらしいです。『グラン・ローヴァ物語』は同じ世界設定で描かれた別の物語になります。

 コメディー 

 大和和紀 『アラミス'78』 〜破天荒なコメディー・シリーズ

女性高校教師と留年歴のある男子高校生の話……とこれがコメディになってます。幼児体型ながら素晴らしい(?)ファッションセンスの持ち主谷杏子センセのキャラクターもさることながら、教鞭をとるその高校もなかなかユニークです。 ほかに)『N・Y小町』

 かわみなみ 『シャンペン・シャワー』 〜好きなものは好き

サッカー漫画です。作者がサッカー大好きで、それで出来上がった作品らしいのですが、サッカーブームのはるか以前の漫画としては凄いんじゃないかと思います。
南米の国エスペランサ、弱小サッカーチーム、ヴィトーリオは再起のため奥地からアドルという少年をスカウトしてきます。野生そのままのアドルはチームに勢いをつけますが、敵チームの主力マルロがそれをねたんだことから、騒ぎは起こります。
最初はアドルのカルチャーギャップを中心にギャグがすすめられていたのですが、ヴィトーリオが勝ち進んだり、エスペランサがワールドカップに出場したりとだんだん変化していきます。もちろん、アドルが好きになる魅力的な女の子も出てきますが。ギャグの系統といい、テーマといい異色の作品です。
復刊を望む声も多かったようで、2002年、文庫化されました。全3巻。ただし、番外編『ダイヤモンド・ガイ』は未収録。

 亜月裕 『伊賀野カバ丸』 〜こち亀にも取り上げられたギャグの王道

コメディ、というよりはギャグです。笑えます。ギャグのパターンは少年漫画だと指摘する意見もあります。
伊賀野影丸(通称カバ丸)という時代錯誤に育てられた忍者少年が、都会で引き起こす大騒ぎの数々。一応学園ものです。
Youコミックスより続編でカバ丸の息子こカバ丸の活躍する『伊賀のこカバ丸』が5巻まで出ています。文庫版(3巻まで)なら入手可ですね。

 加藤四季 『高校天使』 〜ありそうもないけれど

四コマ漫画ですが、なんか憎めない童顔の高校教師が繰り広げるおかしさが好きです。コミックス全3巻、完結しました。
ほか『お嬢様と私』(ジェッソコミックス、全3巻)もなかなかの読み応えです。こちらにコメントしています。

 絶版だけど探してみよう

 三岸せいこ 『夢見る星に降る雨は』『ヴィクトローラきこゆ』 〜ミュージカル映画のごとく

 SF、ファンタジー、コメディの要素がふんだんに入った作品集です。
 『夢見る星に降る雨は』は失恋し、地球から逃げ出した少女クロエがとある惑星で、地球文化に詳しい家庭教師として雇われる話です。クロエはご存じの『ダフニスとクロエ』のクロエ。やがて帰っていく恋人トリスタンの由来は『トリスタンとイゾルデ』でしょう。マザーグースもちょこちょこ出てきます。
 各話、いろいろなところから素材が取られていて、それを探し出すだけでも楽しいのですが、書店で見かけないというのは寂しいですね。古き良き時代の、ぶーけの作品です。

 江口孝子 『たすけて怪傑黒頭巾』『気分はSpace Fantasy』 〜個性的な作風

 三岸さんと同様、80年代に多かったりぼんでデビュー(70年代)、その後ぶーけで活躍という作家さんのひとりです。同じように寡作で、単行本はこの二冊きり。古書の世界でもなかなか見かけなくなってきたのですが、味のある少し捻りの利いたいい話を描く方でした。こちらにもコメントしています。

 少女漫画ではないけれど

 島崎譲 『青竜の神話(サーガ)』 〜少女漫画にはないテンポのよさ

少女漫画ではないのですが、女性に関連したおすすめということで。
幕末の時代、放浪の一匹狼草壁豹馬は爆発に巻き込まれそうになった少女タエと赤ん坊を助けたことから、伊賀忍者の間につたえられた予言に関わることになります。
忍者、時間移動能力、予言の救世主、宇宙人の侵略というアイテムが、幕末争乱期にうまく織り込まれた異色作です。テンポのよいストーリー運びでしたが、連載は未消化のままいったん終えられているのが残念。『悪竜の系譜』という続編が一時、再開したのですが、こちらも未完です。
少年マガジンに掲載されましたが、作者は女性。文庫化されているので、入手可能だと思います。

 新谷かおる 『砂の薔薇』 〜やっぱり女は強し

主人公の女性がめっちゃかっこいいんです。
〈薔薇のマリー〉こと真理子・ローズバンクは民間対テロ組織の指揮官。テロによって夫と子供を失い、今はその憎むべきテロをなくすため、闘い続けます。
女性を描かせたらそのへんの少女漫画家には負けない新谷かおるさんの作品です。掲載はアニマルという成年誌ですが、まあ女性が出てくること出てくること……。少女漫画だといっても、それほど違和感ないかもしれません。

 周良貨・夢野一子 『あの女(ひと)に賭けろ!』 〜こんな形の強靱(つよ)さもあるんですね

これも少女漫画でなく、モーニングに掲載された、銀行につとめる総合職の女性を主人公にしたものです。
原島宏美は大手銀行の総合職一期生。バブル崩壊後、時代遅れといわれながらも、前線である支店、中枢の本店でその人望を活かして活躍します。のちに頭取となる上司に睨まれたり、派閥抗争に巻き込まれたりしますが、理想とする銀行に近づけるため努力は惜しみません。
エリートを志す女性といえば、きつい性格を想像しがちですが、この主人公はなにかほわんとした印象です。それでいてきっちり計算の出来るひとで、しかも相手が協力したくなるようなタイプですから、うらやましくなってしまいます。銀行の内部を描いたストーリーはもちろんしっかりしていますが、個人的には宏美の服装センスが好きですね。

 こうの史代 『夕凪の街 桜の国』 〜21世紀にのこすもの

題材は〈原爆のもたらしたもの〉。広島出身の作家がヒロシマについて描いた秀作です。掲載誌はアクションでした(一部書き下ろし)。
一作目『夕凪の街』は昭和30年、広島の街で被爆による心の傷を抱えながら生きていこうとする女性皆実の物語。これだけだと、よくある形です。二作目『桜の国(一)』はその30年後、皆実の姪七波と家族にひそかに落ちる〈原爆〉の影。そして単行本書き下ろしだった『桜の国(二)』はさらに20年後、成長した七波が父親の奇妙な行動を見かけたことから、予定外の広島訪問となり過去を振り返る……この三作目が前二作の解答になっています。ああ、こういうことだったのだと、種明かしではありませんが、納得し安心できるものが与えられます。読み手も描き手も敬遠しがちな重いテーマにあえて取り組み、ある形の〈もの〉を読み手に与えられるのはすごいことだなと思いました。
ほか見所として、トーンを使わない画面処理はなかなか。店舗など建物が時代を経てところどころに出てきて、これを探すのも一興です。それから皆実の両親ときょうだいの名前、これが全部広島市内の地名なのは作者のお遊びですね。
その後発刊された『この世界の片隅に』上中下も同じ時代を描いていますが、こちらもまた力作、佳作です。こちらにもコメントしています。

 ★おまけ★ 『少女漫画好きに100の質問』答えてみました。

 ★おまけ2★ eine Tasse Tee 少女漫画に関するよもやま話です。

Last Update 12/1/24

written by 潮路 

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