7月例会のようす
 場所  しまね国際センター(くにびきメッセ2階)
 日時  7月11日10時から
 参加者 5人

   1子どもの権利条約学習会
   2エジプトの情報

 
 1 子どもの権利条約学習会
(1)「子どもの権利条約」とは
(2)条約のおもな内容と論点
(3)報告書、審査、勧告
(4)勧告のおもな内容
(5)「子どもの権利」の保障は人権保障の完成だ(投稿)

(1)「子どもの権利条約」とは
 ・1989年11月20日、国連総会で採択
 ・日本政府が批准したのは1994年5月22日
  世界の191カ国のうち158番目
 ・現在、世界の191カ国のうち189カ国が批准している。
  いちばんたくさんの国が参加している人権条約となっている。
 (批准していないのはアメリカ合衆国とソマリアだけ。ソマリアは現在内戦中で中央政 府が機能していないので、実質的にはアメリカ合衆国だけということになる)

(2)条約のおもな内容と論点
・条約名→「児童」か「子供」か「子ども」か?
  法律用語では「児童」。しかし「児童では学校に行っている子どもが主体になってし まう」といった反論もある。
・前文「きわめて困難な条件のもとで生活している子どもが世界のすべての国に存在」  
 →子どもは「保護の対象」か「権利の主体」か?
 →とくに途上国の子どもたちが対象で、先進国の子どもは対象としない条約なのか?
・第1条「子どもとは18歳未満」
 →先進国のほとんどは18歳成人制
・第2条「差別の禁止」
 →婚姻年齢(男18歳、女16歳)  
 →非嫡出子(結婚していない男女の間に生まれた子どもは遺産相続権が2分の1)  
 →少数民族の権利
・第3条「最善の利益」
 →文部省通達「教育関係の法令の改正は特に必要ない」  
 →少年司法、少年法改正は本当に子どもの最善の利益が考えられているか。
・第7条「名前・国籍を持つ権利」
 →不法滞在者の子どもは無国籍になってしまう。  
 →外国人母の非嫡出子は父親が認知しないと日本国籍がとれない。
・第9条「父母と分離されない権利」
 →オウム真理教信者の子どもたち
・第10条「父母に面会する権利」
 →アウン・サン・スーチー氏の子どもたち
・第12条「意見表明権」  
 →校則、学校行事、懲戒処分などに子どもの意見表明権が保障されているか
 第13条「表現の自由」
 第14条「思想、良心、宗教の自由」
 →日の丸、君が代
 第15条「結社、集会の自由」
 →文部省通達「高校生の政治活動禁止」
 第16条「プライバシーを守る権利」
 
→家庭、学校、施設での検閲
 第17条「情報へのアクセス権」
 
→学校図書館の充実、有害情報からの保護
 第18条「父母の第一義的責任」
 
→子育て支援は充分か?
 第20条「家庭を失った子どもの保護」
 
→養護施設における体罰
 第21条「養子の権利、国際養子縁組の推進」
 第22条「難民の権利」
 
→日本政府はほとんど難民認定をしない
 第23条「障害児の権利」
 
→特殊学校、養護施設を強制しているのではないか?
 第24条「健康に生活する権利」
 
→環境汚染、有害物質からの保護は充分か?
 第26条「社会保険の給付を受ける権利」
 第28・29条「教育についての権利」     
 →校則、体罰、登校拒否する権利、教育条件、教師の労働環境
 第30条「少数民族の子どもの権利」
 
→アイヌ民族、在留外国人
 第31条「余暇、休息、レクレーションの権利」
 第32条「経済的搾取からの保護」
 第33条「麻薬などからの保護」
 第34条「性的虐待からの保護」
 
→児童ポルノ、児童買春
 第35条「誘拐、人身売買の防止」
 第36条「すべての搾取の禁止」
 第37条「18歳未満への死刑、無期刑の禁止」
 第38条「15歳以下の戦闘行為参加の禁止」
 第39条「虐待、非人道的扱い、戦争などの被害者の子どもの回復のための援助」
 第40条「刑事手続きの保障」
 
→少年司法
 第42条「政府の広報義務」

(3)報告書、審査、勧告
・条約批准国は批准2年後、さらに5年ごとに実施状況と問題点を報告する。  
 ・国連総会で選出された「子どもの権利委員会」が報告書を審査→改善点を勧告する。
 ・「子どもの権利委員会」は政府報告とは別に市民、NGOからの情報を求めている。
 ・日本政府は1996年5月、第一回報告書を提出。
 ・DCI(子どもの権利を守るための国際NGO)日本支部が中心の「市民・NGO報 告書をつくる会」も報告書を提出。
 ・世界初の「子どもによる子どものための報告」も提出、審査でも子どもが発言。
  (「制服廃止を訴えて国連に叱られた日本の甘ったれ高校生」というデマ報道)
 ・1997年11月に予備審査、1998年5月に本審査→6月に勧告が出された。

(4)勧告のおもな内容
 ・裁判での援用(条約は国内法に優先する)例を報告してほしい。
 ・条約を実行し、実施を監視する政策調整機関を設置してほしい。
 ・子どもに関するデーター収集システムを確立してほしい。
 ・独立した監視機関「子どもの権利オンブズパーソン」を設立してほしい。
 ・条約の内容を教育、司法関係者に広めてほしい。少数言語に翻訳してほしい。
 ・NGOと協力してほしい。
 ・非嫡出子差別、少数民族差別、男女の結婚年齢差を撤廃してほしい。
 ・子どものプライバシー保護のためにさらに努力してほしい。
 ・暴力やポルノなどの有害情報から子供を保護してほしい。
 ・国際養子縁組の子どもの権利を保護してほしい。
 ・家庭のない子どもに家庭環境にかわるものを提供する体制を強化してほしい。
 ・子どもの虐待について正確な情報を集めてほしい。  
 虐待を正しく処罰してほしい。被害者の不服申立手続きを確立してほしい。
 ・障害児を施設に収容する以外の方法、社会に包み込むための活動をしてほしい。
 ・エイズ防止対策、性教育を強化してほしい。
 ・極度に競争的な教育制度をあらためてほしい。  
 過度なストレスや不登校・登校拒否を防止する対策をとってほしい。
 ・人権教育を学校の教育課程に体系的に導入してほしい。
 ・学校、家庭での体罰、いじめを根絶する包括的なプログラムをつくってほしい。
 ・子ども買春、子どもポルノと闘うための包括的な行動計画をつくってほしい。
 ・薬物、アルコール乱用防止のための広報活動を強化してほしい。  
 犠牲者のリハビリプログラムをつくってほしい。
 ・少年司法システムを見直してほしい。代用監獄を見直してほしい。
 ・今回の政府報告書、国連からの勧告を広く広報してほしい。

(5)「子どもの権利」の保障は人権保障の完成だ(投稿)
 今から200年ほど前のフランス革命などの革命がおこった時代に<人権>という考え は生まれました。
 しかし、1789年のフランス人権宣言が「すべての人は生まれながらにして自由で平 等である」と宣言した時の「すべての人」とは、フランス人で、白人で、ある程度以上の 財産があって税金をおさめている、男性のことであって、それ以外の人間には自由も平等 もみとめられていませんでした。
 この場合、<それ以外の人々>に対しては、「お前たちには充分な知識も判断能力もな いから、一人前にあつかってやることはできない。オレたちがお前たちのこともよく考え て保護してやるから、文句を言わずにオレたちに言われるとおりにしろ」という主張がさ れていたのです。つまり<それ以外の人々>(もちろん私をふくむアジア人は全員コレ) は<子どもあつかい>されてきたのです。
 その後の長い間の人々の努力によって、<人権>は貧乏人にも、女性にも、黒人にも、 アジア人にも広まってきました。老人や障害者、少数民族の人々にも、それぞれ固有の権 利がみとめられるようになってきたのです。これはあきらかに歴史の進歩といえるでしょ う。現在これらの人々が<子どもあつかい>されることはありません。
 その中で、最後に<子どもあつかい>されるべきものとして残っているのが<子ども> です。これは「子どもには充分な知識も判断能力もないのだから当然だ」といえるかもし れません。
 しかし人権思想の発達は「能力のない者には権利はない」という考えを発展させ、「能 力のない者にも権利はある」という考えを生み出してきました。たとえば老人や障害者の 中には充分な判断能力がない人もいるかもしれません。周囲の人々や政府の手助けを受け なければ生きていけない人だっています。しかしこの人々に「保護をうけているくせに、 自分の権利を主張するなんてけしからん」などという考えは現在では通用しません。この 人々にも当然のこととして個人として尊重される権利があり、自分の権利を堂々と主張し てなんの問題もないのです。
 同じように子どもたちも、充分な知識や判断能力がなくてもやはり権利の主体者である はずです。子どもとして充分な保護や教育を受けると同時に、自分の権利を主張できなく てはならないのです。<子どもは保護の対象であると同時に権利の主体である>という考 えを確立したことこそが、この「子どもの権利条約」が持つ大きな意義ではないかと思い ます。  私は、子どもたちに<人権>が認められることはフランス革命以来の人権思想の発達の 歴史の完成だと思います。子どもたちに<人権>が保障されることこそ、すべての人間に <人権>が保障されることであり、それはつまり、私の<人権>が保障されることだと思 うのです。

 2 エジプトの情報
 松江グループが担当しているエジプトの情報について
・Wagiha Sayyid Ali さんが殺人の容疑で死刑判決を受けた。
・Ahmed Isma'il Othmanさんが首相暗殺を計画した容疑で軍事法廷で死刑判決を受けた。
 エジプトでは殺人、過激派、麻薬関係の容疑者に広く死刑判決が出されています。アム ネスティの調査では、去年は74人が死刑判決を受け、48人が死刑を執行されました。 今年も36人が死刑判決を受け、8人が執行されたということです。
 こうした死刑判決、死刑執行に反対するため、次回までに文案をつくってきて、次回例 会で手紙書きをすることになりました。

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