9月例会のようす

 場所   しまね国際センター(くにびきメッセ2階)
 日時   9月18日(土)10時半から
 参加者  9人

   学習会「冤罪・再審問題」

   記録映画「日独裁判官物語」
   USAキャンペーン

 学習会「冤罪・再審問題」 
(1) 参考資料 「冤罪はこうして作られる」小田中聰樹さん著 講談社現代新書
(2) 再審制度
・制度としては保障されていたが、再審開始の条件は「無罪のあきらかな証拠をあらたに発見した時」とされているため、とても「狭き門」で、ほとんど行われなかった。
・1975年5月20日、最高裁判所が「再審の場合も『疑わしきは被告人の利益に』 の原則を採用すべきだ」という「白鳥決定」をおこない、その後多くの再審無罪判決が出された。(免田栄さんをふくむ4人の死刑囚も無罪判決をうけた)
(3) 冤罪防止策(小田中聰樹さんの主張による)
 捜査、取り調べ  
○別件逮捕(本来追求したい事件とは別の容疑で容疑者を逮捕すること)をなくす
・逮捕は「住所不定」「逃亡のおそれ」「証拠隠滅のおそれ」がある場合だけ
・取り調べることだけを目的とした逮捕はできない  
○代用監獄(容疑者を警察署の留置所に入れたままで取り調べること)の廃止    
・容疑者は警察署とは別の拘置所へ    
→拘置所の増設(日弁連案では全国59ケ所)   
○取り調べの法的規制    
・開始時間、終了時間、休憩時間、継続時間の規定    
・食事時間、就寝時間の保障    
・弁護士立会い    
・録音、録画の義務化   
○供述調書作成の義務化(調書を一問一答式に)   
○第三者、複数による鑑定(血液鑑定などで争いがおきないように)   
○被疑者の段階からの国選弁護人制度    
・カネのない人は国の費用で弁護士をやとうことができる(国選弁護人制度)が、 現在は裁判になってからだけで、被疑者の段階では自分のカネで弁護士をやとわなくてはならない。少年事件の場合には裁判でも国選弁護人制度はない。   
○弁護士との充分な接見時間の保障  
 起訴   
○起訴、不起訴の判断に一般市民が参加する制度を(現在は検察官だけで決める)   
○捜査資料の全面公開・保管の義務づけ    
・捜査がわに不利な証拠も前面公開するべき。国家組織が集めた証拠と民間の弁護がわが集めた証拠とでは圧倒的に差があり、現在では弁護がわに不利。  
 裁判   
○「疑わしきは被告人の利益に」の原則の徹底   
○「違法な捜査の証明」を被告がわに義務づけるのではなく、「適法な捜査の証明」 を捜査がわに義務づける    
(たとえ容疑者が真犯人だとしても、違法な捜査がおこなわれた場合には無罪)   
○自白偏重をあらためる   
○第三者の供述調書を証拠採用しない→かならず証人しらべを  
 k裁判所、検察、警察の民主化   
○裁判官の自治・独立の尊重   
○陪審制度の復活、参審制度(一般の人を裁判官に参加させる)の採用
○法曹一元・裁判官は弁護士から採用  
○検察官の独立の尊重  
 l冤罪救済制度の改善   
○「なぜ冤罪がおこったか」の原因究明   
○再審手続きの充実    
・「無罪のあきらかな証拠をあらたに発見した時」から「無罪の疑いがある時」へ    
・再審にも国選弁護人制度を導入    
・証拠調べに被告がわが参加できるようにする   
○国家賠償制度の充実    
・裁判で無罪になった場合、現在ではわずかな刑事補償のみ    
・国家賠償請求の裁判では冤罪被害者が勝訴した例はひとつもない

 映画「日独裁判官物語」の話 
 9月4日(土)島根県民会館で島根県弁護士会主催の記録映画「日独裁判官物語」の上 映会がありました。
 この映画は日本とドイツの裁判制度を比較したもので、映画の最初には黒塗りの公用車 で出勤する日本の最高裁判所の裁判官たちと、スクーターにのって出勤するドイツの連邦 憲法裁判所の裁判官が対比されていました。
 ドイツの方では連邦憲法裁判所の所長へのインタビューをはじめとして、たくさんの裁 判官がインタビューに応じているほか、裁判所の中の風景や実際の裁判のようす(当事者 が同意すれば撮影は自由だそうです)がたくさん出てきますが、日本の方は撮影も取材も 断られてしまい、ほんの数人の裁判官や元裁判官がインタビューに応じているだけです。
 日本の裁判官は各地の官舎に集団で住み、周期的に転勤することもあって、ほとんど地 域社会と無縁にすごしています。また捜査令状の発行のいいかげんさについて新聞に投書 し、盗聴法反対の市民集会で発言しようとした裁判官が懲戒処分をうけるなど、裁判官の 思想、言論の自由はほとんど保障されていません。
 一方ドイツでは、裁判官の政治活動は大幅に保障されています。政党の幹部や地方の議 員になっていたり、核兵器反対運動などに参加している裁判官もたくさんいるそうです。 ボランティアで高校で法律の授業をしている裁判官も映画に出てきました。裁判官たちが 裁判のようすをえがいた喜劇を上演して、それをたくさんの市民が見にきたり、裁判所の 建物を使って詩の朗読会や絵の展覧会があったり、法廷を使って家庭内暴力についてのシ ンポジウムをするなど、裁判官・裁判所と地域社会との交流もさかんです。
 裁判所の建物は街のショッピングセンターの中にあったり、待合室には子どものオモチ ャがあったりします。法廷も日本のように高い壇はなく、参加者が気楽に対話できるよう になったいるところが多い、ということです。
 裁判には一般の国民が参加する「参審制度」も取り入れられています。たとえば「労働 裁判所」では、専門の裁判官3人のほかに地域の労働組合から1人、経営者団体から1人 がボランティアの「名誉裁判官」として裁判に参加し、専門の裁判官と対等の立場で討論 し、判決をする、ということです。
 ドイツでも最初からこうなっていたわけではなくて、1960年代から多くの裁判官、 市民が運動した結果、改革がすすんできたのだそうです。
 日本の裁判官・裁判制度はどうでしょうか。自分の権利がきちんと守られていない裁判 官に、他人の権利を守ることができるのか、かんがえさせられた映画でした。

 この映画の上映のあとではちょっとしたシンポジウムが行われました。その時会場の裁 判体験者の人々から、裁判官・裁判制度・弁護士などへの強い不信、不満をぶちまける発 言があったのが印象に残りました。

 USAキャンペーン
 松江グループも参加している、USA(アメリカ合衆国)へのキャンペーンの一環とし て、「スタンベルト」やその他の電気ショック器具の使用禁止をもとめるハガキを、連邦 刑務局長、執行長官、アリゾナ州知事、コロラド州知事に対して送りました。
 アムネスティによると、アメリカ合衆国の多くの拘置所や刑務所で、「スタンベルト」 などの電気ショック器具が使用されており、これは囚人のとりあつかいに関する国際的基 準に反しているほか、医学的影響もきちんと研究されていない、ということです

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