<2001年のイベント>
ビルマ難民ティン・ウィンさん親子懇談会のようす
・ 2001年10月27日(日)松江市国際交流会館
・ 参加者 約30人
ティン・ウィンさんは1954年ビルマのマンダレー生まれで、現在40代後半。ノーベル平和
賞受賞者アウン・サン・スー・チーさんが書記長をつとめる国民民主連盟(NLD)
の幹部だった人です。1988年の民主化運動で半年間逮捕、投獄、拷問を受け、1994年の自主憲法制定委員に選出されたのち、弾圧が強
まったのでビルマを脱出、非合法に手に入れたパスポートで1996年に日本にやっ
てきました。本当はアメリカやヨーロッパに行くつもりだったけれど、ビルマにとっ
てた最大の援助国である日本で活動することに意味あると考えたのだそうです。
日本政府はほとんど難民認定をしないのですが、彼は強力な証拠があったために申請から2年後の1999年、難民として認定されました。しかし日本の難民認定は、ただ「強制
送還の心配がない」というだけで、それ以外の公的支援はほとんどありません。政府
が設立した「難民支援センター」があるのですが、これは70年代後半のベトナム難
民をうけいれるための施設で、ベトナム難民であれば生活支援や職業あっせんなどの
サービスが受けられるのに、それ以外の難民には積極的な支援はほとんどしていない
ということです。
彼は5ケ国語を話せる能力を持っているのですが、交渉の末にセンターから紹介され
た仕事は不法滞在の外国人を多数使っている群馬県のプレス工場で、時給は900
円。危険な作業でケガをする同僚もいるが、ほとんど補償などはない、ということで
した。彼は時々国連難民高等弁務官事務所で通訳のバイトをするそうですが、その時
ほど仕事の喜びを感じることはない、と言っていました。
講演には娘のヘイマー・ティン・ウィンさんも参加していました。彼女は父親が日本
で難民認定を受けたあと、「家族統合プログラム」の支援を受け、「インドの親戚の
結婚式に行く」という口実で母親や兄弟と一緒にビルマを脱出、1999年に日本に
来て、「難民支援センター」で4ケ月間日本語を教えてもらい、現在高校2年生。友
達に教科書の漢字にフリガナをつけてもらいながら勉強している、ということでし
た。
現在日本政府はビルマの軍事政権に対する、最大の援助国です。日本から送られた援
助のトラックが軍隊によって民衆の弾圧に使われている、という有名な例もありま
す。ティン・ウィンさんは、もし日本が軍事政権への援助を中止すれば、ビルマの民
主化は短期間で達成されるだろう、と言っていました。
日本には約1万人のビルマ人が滞在していますが、難民として認定されたのは36人
だけです。日本政府は難民認定をすることでビルマ政府との関係が悪化するのをおそ
れている、といわれています。しかし日本は難民条約の加盟国であり、正当な理由を
持つ難民は保護しなければならない法的責任があります。日本政府が積極的に難民を
認定し支援するように政策を転換することは、周辺の国家に対しても圧力となり、よ
い影響をおよぼすはずだ、ということでした。
日本は難民条約に加盟していますが、日本政府は、日本に保護を求めてやってくる人々を、条約にもとづく難民として認定することには非常に消極的です。そして難民として認定した場合にも、その生活や就職を支援する体制はほとんど整っていません。教育についてのほ配慮もほとんどありません。
人権教育ワークショップ のようす
わたし・あなた・みんなの人権 あたらしい学びの人権教育
・2001年9月30日(日)
・松江市国際交流センター
・参加者 11 人
・進行役 佐々木宏知さん ( 広島開発教育研究会会員 地球市民教育ひろしま代表)
人権教育については、これまで人間の権利を現実から学ぶ、さまざまなとり
くみが重ねられてきました。しかし人権という問題が「重い」ために、かえって
「暗い」「自分には関係ない」といった反応も多く、効果があがりにくい現実が
あったように思われます。人権教育は「頭で理解させる」のではなく、「心・体で感じさせる」ことが必要
です。 そのため近年、参加型の人権教育への関心が高まり、積極的な実践がみら
れるようになってきました。
今回はフルーツバスケットなどのゲームを通じて、人権について学ぶ体験をおこないました。
「事件のことは絶対に忘れられない、犯人は絶対に許せない」「罪はしっかり償ってほしい、しかしどうしたら償わせたことになるのかわからない」「死刑にすることで償わせたことになるとはどうしても思えない」「死刑にして一件落着、などということは絶対に納得できない」といった話で、話す方はもちろんですが、聞く方も気合が必要でした。
話の中で特に強調しておられたのは、
・犯罪被害者の支援体制をきちんと整備することが絶対に必要だ。犯罪によって大きな経済的損害を受けることも多い。いきなりマスコミの標的にされることもある。法的な援助や、経済的、精神的な支援が必要であり、そのための支援組織が整備されるべきだ。
・日本では法的根拠はないのだが、死刑判決が確定したあとは死刑囚は親族以外とは面会させない慣例がある。しかし自分は犯人と面会してみて、非常に得るものが大きかった。殺人という罪をどうやって償わせればいいのかはわからないが、被害者と加害者が直接会って話をすることは両方にとって必要なことだ。たとえケンカになってもよいから、どんどん面会できるようにするべきだ。
現在、日本の殺人被害者の遺族の中で、死刑廃止運動に関わっているのは原田さん一人だということです。しかし原田さんによると、実際にはそう思っている遺族はけっこういるのだけれど、「遺族は死刑を望んで当然だ」という社会の「常識」があり、なかなか表に出せないでいるのだそうです。原田さんもいろいろ批判やいやがらせを受けることも多いという話でした。しかし原田さんは、そうした批判をする人は、遺族の本当の気持ちは分かっていないのではないか、と言っていました。