ミャンマー(ビルマ)でミャンマー(ビルマ)映画を見ました。

 2000年の9月にミャンマー(ビルマ)の首都ヤンゴンに行きました。
 ヤンゴンは人口約250万人。町の繁華街にはたくさんの映画館があり、人々でにぎわ
っています。上映している作品はインド映画や香港映画が多く、ハリウッド映画もあるよ
うです。ある映画館のロビーには「タイタニック」「ラッシュアワー」「ロウニン」「ラ
イオンキング」などのハリウッド映画、そして中華人民共和国建国50周年記念の中国映
画「国歌」のポスターが飾られていましたが、実際に上映しているのはミャンマー映画の
ようでした。他に「ロミオ・マスト・ダイ」をやっている映画館もありました。
 映画は朝10時や11時から3時間おきに上映され、夜9時ぐらいからが最終回となり
ます。切符はインドや他の東南アジア諸国と同じく座席指定で、前の方が安く後ろになる
ほど高くて、だいたい100チャット(約25円)から400チャット(100円)まで
6段階くらいに分かれているようです。切符売り場は安い席と高い席とで分かれていて、
次の回の売り場と予約の売り場にまた分かれているのですが、その前にはダフ屋が何人も
いて、大声でワメキながら入場券を売っているのです。どうしてこんなことになっている
のか、その理由はわかりませんでした。映画館の前には軽食の屋台やさまざまな物売りも
いて、それぞれが大声でワメイているので、とてもにぎやかです。
 私はミャンマー映画を見たのですが、ポスターはビルマ語で書いてあったので、作品の
題名も映画館の名前もわかりません。この映画館は他よりちょっと安くて、いちばん安い
席は70チャット(約18円)、いちばん高い席で200チャット(約50円)でした。
これはこの映画館が定員400人くらいで、他の映画館よりも小さいからではないか、と
思うのですが、他の映画館には入っていないのでよくわかりません。私は100チャット
の切符を買い、前から10列目くらいでした。
 客席は8割くらい埋まっていて、日曜日の最初の回だったせいか、家族連れが多かった
ようです。そしてほとんど全員がおやつのヒマワリの種を食べていて、その皮を床に吐く
ので、映画の間じゅうパチンパチンと種をかみ砕く音が響き、私の足にも容赦なく隣の人
の吐き捨てた皮がかかります。そして最後は床じゅうヒマワリの種の皮だらけになりまし
た。上映作品は喜劇じたてで、非常に直接的なギャグ(イスからころげ落ちる、モノにつ
まづいて転ぶ、背広をさかさに着るなど)が多く、そのたびに大爆笑がおこり、観客は大
喜びします。ミャンマーの人々はああだこうだ言いながら見るのが好きなようで、上映中
も大声の話し声がします。
 まずスライド式の文字だけの広告が10本くらい続き、次に国旗が映し出され国歌が流
れて観客は全員起立、そのあと本編が上映されます。ビスタサイズのスクリーンのままで
スタンダードサイズの作品を写したので、スクリーンの両脇が余っていました。フィルム
の状態は悪く、音響も悪くて、カットによって音がぜんぜんちがっていたりします。

 私が見たのは2時間半くらいの作品で、本来休憩が入るらしく真ん中あたりで字幕が出
るのですが、なぜか続けて上映されました。言葉が全くわからないのでこまかいことはわ
かりませんが、だいたい次のような筋の作品でした。
 最初は坊さんたちが托鉢して歩く姿から始まります。そのうちの一人が主人公で、彼は
父親と思われる人の臨終に立ち会い、周囲に説得されて僧侶をやめ、父親が残した会社の
経営に乗り出します。会社に関係する有力者たちとの交渉に四苦八苦するようすが、喜劇
じたてでえがかれていきます。そうした中で、非常に有能で有力な女性が彼の協力者とし
てあらわれ、二人は一気に恋におちます。二人の気持ちが通じ合うと、突然海岸のリゾー
ト地のシーンとなり、二人は歌いだします。このへんはインド映画に似ていますが、歌は
この映画の中では恋のシーンの二回だけで踊りもないので、インド映画のようにやたらと
歌い、踊るのとはだいぶんちがいます。ラブシーンになってもせいぜい抱き合う程度で、
キスなんかはしないのはインド映画と同じです。
 映画の前半ではこのようにミャンマーの上流階級の生活が描かれるわけですが、これは
当然、一般のミャンマーの人々の生活とは全くかけはなれています。男たちは背広を着て
ネクタイを締め、女もファッションモデルばりの服装(実際にファッションショーのシー
ンも出てきました)をしていて、やたらとカメラを出して写真を撮りまくる男などが登場
するのですが、一般のミャンマーの人々はカメラなど持っていないし、男女、年齢をとわ
ずほとんどの人がロンジーという民族衣装のスカートを着て、はだしでゾウリをはいてい
ます。
 恋する二人は女の両親に結婚の許しを求めに行きますが、父親の一言で恋は破れます。
男はヤケになってヤンゴンを飛び出し、山賊に身ぐるみはがれてしまいます。次に男は何
かの祭りに紛れ込みますが、祭りの最後に気球が空に浮き上がると、ロープが足にからま
ってそのまま飛んでいってしまい、田舎の村に落下します。
 田舎では人々は全員がロンジーを着ていて、全くのはだしの人もたくさん出てきます。
女たちは全員がタナカという木の白い液を顔にぬる、ミャンマー独特の化粧をしています
(この化粧はヤンゴンでも子どものほぼ全員、女性の8割くらいがしていました)。一人
の男はこわれたラジオをずっと持っていて、しょっちゅう耳にあてて音を聞こうとして、
これがギャグのひとつになっていました。(ヤンゴン近郊でもテレビがある家はすくない
らしく、私は学校がえりの子どもたちがテレビのある家の戸口に群がっているのを見まし
た)
 男は今度は村の娘と恋に落ちますが、ここでも娘の父親の一言で恋は破れ、牛の引く荷
車で(ここには自動車は全くないようです)村を出ていこうとします。しかしその途中で
思い直して、娘のもとに戻ります。二人の恋がいよいよ実るとまた歌がはじまり、歌いな
がら二人はボートに乗ってお寺にお参りに行きます。
 さていよいよ二人の結婚式の日となりますが、そこへ男の行方を突き止めた都会の人々
が車を連ねて乗り込んできます。このへんは都会と田舎、金持ちと農民の生活の対比を鮮
やかに示すシーンとなっていました。都会の女は男にどっちを選ぶのかと迫ります。田舎
の娘は「私は身を引きます」という感じでその場から走り去り、畑で泣き崩れます。その
むこうに車の列が村を出ていくのが見え、娘はいちだんと激しく泣くのですが、その時彼
が彼女の肩にやさしく手をふれ、二人が抱き合ってハッピーエンドとなるのです。
 映画の最後は都会の人々が男は全員出家して僧侶となり、女たちがその托鉢の行列にい
ろいろとお供え物をする(ミャンマーの仏教では女性は僧侶にはなれません)というシー
ンで映画の最初に戻るのですが、これもギャグになっていて観客は大笑いしていました。
しかし結末が分かったとたんに席を立ち、最後まで見ない人も何人もいました。

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