厚さ1.2ミリのCDの表面には、ピット(穴、あばた)がらせん状に刻まれています。
らせんの渦の間隔は、1.6ミクロン、髪の毛の100分の1の細さで、
レコードの溝の間隔の100分の1でもあります(1ミクロンは1000分の1ミリ)。
ピットの幅0.5ミクロン、深さ0.1ミクロンという寸法は、どのCDも同じですが、
長さは1から数ミクロンとまちまちで、これが複雑な信号を送るミソとなるのです。
1枚のディスクには、約60億個のピットが並び、
内側は1分間に500回転、外側は1分間に200回転するように工夫されています。
これは、レーザーがピットを通過するときの速度を一定に保つためです。
半導体レーザー(一般に赤外線)がハーフミラーで反射され、レンズで集められます。
集められたレーザーがディスクのピットに当たったときには、
反射した光は四方八方に分散してしまい、光ダイオードへは戻ってきません。
一方、ピットとピットの間の平面に当たると、
反射光は元の経路を逆行して、ハーフミラーを通過し、光ダイオードまで到達するのです。
光ダイオードは光を電流に変換し、音声信号を先へ伝える、ということになります。
このように、CDはオンとオフの二進法で音声信号を伝えます。
重い星(太陽の30倍以上の質量)は、その一生の最期に超新星爆発を起こし、
その中心に残った質量が太陽の約3,2倍以上のとき、星は自分の重力により限りなく収縮し、ブラックホールとなります。
ブラックホールには表面がなく、質量によって導き出される「シュバルツシルト半径」の内側、
もしくは「事象の地平線」とよばれる領域の内側にはいると、
強い重力のために、光でさえそこから脱出することはできないのです。
中心には、密度が無限大、時空のゆがみが無限大で体積がゼロの、「特異点」とよばれる領域があります。
とはいっても、実際にはブラックホールと断言できる天体は発見されていません。
光を発しない天体を直接観測することはできないので、間接的な観測データをもとに次のような予想がなされています。
1:ブラックホールがもし連星をなしていれば、
ブラックホールは強い重力で相手の星の表面ガスを引き込んで、
自分のまわりに「降着円盤」とよばれる、回転するガスの円盤をつくります。
降着円盤から放出されるX線の観察と、中心にあると思われる天体の大きさと質量の関係から、
現在8つの天体が、ブラックホールではないかと予想されています。
2:強いX線を出す銀河「活動銀河」に、宇宙ジェットとよばれる現象が観測されています。
宇宙ジェットの時間変化や巨大なエネルギー量から、
その活動銀河の中心に、ブラックホールが存在するのではないかと考えられています。
ブラックホールの最有力候補として挙げられるのが、「はくちょう座X−1」です。
連星系をなしていて、質量は太陽の約8倍と考えられています。
相手の青色超巨星から流れ込む表面ガスが降着円盤を形成し、そこから放出される強いX線が観測されています。
中性子星(超新星爆発後に残った質量が太陽の3.2倍以下)としては大きすぎるので、
ブラックホールではないかとして、研究者の大きな関心の的となっています。
われわれの銀河系の中心にも、ブラックホールが存在しているのではないかという説もあります。
太陽系から1万7000光年のところにある銀河系中心領域には、
多数の電離したガス雲が存在していることが、電波などの観測によりわかっており、
それらの電離ガス雲に含まれるスペクトル線の解析から、その運動状況も把握されています。
その結果、銀河系中心のいて座Aスターには、太陽の600万倍程度の質量の、巨大なブラックホールが存在すると推定せれています。
その名をあまねく知られているという意味では、ブラックホールはわれわれにとって身近な天体ですが、
実際には、誰もその姿を垣間見た者はいず、またどこにあるかも分かっているわけではありません。
また物理法則を越えた存在であり、われわれの空想の世界を引き受けてくれる無限の力をもっています(と空想します)。
ある意味、ブラックホールは夢の領域といえるのではないでしょうか。
熱力学の第二法則は、自然のままでは、高温から低温へと必ず熱が移るといいかえることができる。熱力学の第一
法則、つまりエネルギー保存の法則だけでは自然の変化を記述できない。低温の物体が熱を1キロカロリー失って、
その分だけそっくり高温の物体に熱が移ったとしても、二つの物体のエネルギーの総和は増減しないのである。しか
し、このような現象は経験的に起こることはありえない。熱力学の第二法則は、自然が変化する向きを指しているとい
えるだろう。
一本の針金の一部分だけを熱くして温度を高くしておく。熱するのをやめると、温度の分布はだんだん平らになって
一様な分布に近づく。一様な分布から逆に一部分だけ温度が高くなることはありえない。
これを原子のレベルで見てみよう。針金の分子が一列に並んで、互いにバネで表された力で結ばれたモデルを考
える。一部を加熱することは、その部分の分子の振動が激しくなることである。この振動が次々と隣りの分子に伝わっ
て、どの分子も平等に振動するようになる。このように、分子の運動が平等化され、細分化され、全体の乱雑な運動に
変わっていくことをエントロピーが増加するという。
分子の運動は乱雑である。人間は、分子の集まりであるマクロな物体を持ち上げたり、動かしたりする仕事について
はコントロールできるが、ミクロな一つひとつの分子の乱雑な運動にまで細かく分かれてしまうと、これを制御すること
は不可能である。掃除や整頓は、マクロなレベルで、エントロピーを減らす努力をしていることといえるだろう。
エントロピーはいつも増加するのだろうか。熱は必ず低温から高温へと流れ、同じ温度になって釣り合うまで流れの
向きは変わらないのだろうか。マクスウェルは次のような悪魔(デーモン)を提案して、この問題に疑問を投げかけた。
気体分子の入った容器の真ん中を、隔壁によってA、B二つの部屋に分ける。このしきりに開閉できる窓をつけ、速
度の大きい分子がAからBへ進んできたときに限って、デーモンは窓を開けてそのまま通過させ、速度の遅い分子が
きたときには、窓を閉めてAへ戻してしまう。デーモンがこれを繰り返すと、Bには速度の大きい分子が集まるため温度
は高くなり、反対にAには速度の小さい分子が集まって温度は低くなる。こうすれば、自然の流れに逆らって、エントロ
ピーを減らすことができるではないか。
もちろん、そういう悪魔が実際にいるか、いないかは問題ではない。論理的にどこがおかしいか、明らかにしなければ
ならないのである。
マクスウェルの悪魔については、主に情報理論の立場からくわしい議論が積み重ねられてきた。主な解決の要点は、
分子の速さを識別するためには、容器の内部よりも高い温度の光源を用いて光を当てる必要があるということである。
この光を当てたためのエネルギー増加まで考えに入れると、やはり全体としてのエントロピーは増加することになってし
まうのである。
同じことは、生物が生きていくことについても成り立つ。人間にしても、食物をとり、呼吸をして、大変な努力を重ねて
体を構成する物質の秩序を保っている。これは体の組織の秩序を保ち、エントロピーを減らしているということだ。
しかし、排出物をはじめとして、周囲の環境に対しては、減ったエントロピーを上回るエントロピーの増加を放出しなけ
れば生きていくことはできない。生物は負のエントロピー(ニゲントロピー)を食べて生きている、という表現もあるくらいで
ある。
また、産業廃棄物やゴミ公害も、生産や都市生活が高度になり活発になったため、周囲の環境も含めてエントロピー
が増加するため、といえるだろう。