超ひも理論

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はじめに(1/9)

超対称性(1/9)

ひも(1/14)

理論の概要(1/14)

意義(1/28)

問題(1/28)

<はじめに>

 まず最初に、「超ひも」理論とは、「すっげえひも」理論ではなく、「超対称性を持ったひも」理論である

ということをお知らせします。僕も最近知った(笑) そこでここでは、まず最初に超対称性を、続いてひも

を解説します。続いて「超ひも理論」の概要、意義、そして最後に現状を、という順番でいきます。なにぶ

ん純粋なアマチュア(好奇心のみ)なので、足らぬところはおろか、勘違い・間違いも出てくるかもしれま

せん。ご意見・ご批判をお願いします。


<超対称性>

 これはフェルミオンとボソンとの間の対称性のことです。自然界のすべての粒子は整数、または半整数

の「スピン」という属性(自転角運動量)を持ちます。このスピン半整数の粒子をフェルミオン(フェルミ粒

子)、スピン整数の粒子をボソン(ボース粒子)といい、通常の量子力学ではこれらは厳密に区別されます。

光子をはじめとする力の媒介粒子は前者に、クォーク(陽子や中性子などを形成する基本粒子)やレプト

ン(基本粒子のうち、電磁相互作用と弱い相互作用しか起こさない粒子)は後者に含まれます。

 超対称性出生以前は、フェルミオンとボソンはまったく性格が異なり、互いに水と油の関係にあると考え

られていました。フェルミオンとボソンの違いは、同じ種類のフェルミオンあるいはボソンが多数集まったと

きに、もっとも顕著に現われます。たとえば、ある一つの状態にフェルミオンである電子を2個以上つめ込

むことは許されません。これは「パウリの排他律」として知られます、これに対してボソンは、何個でもつめ

込むことができるのです。スピンの性質が違うだけで、この2つのグループは非常に異なる振る舞いを見せ

るのです。

 ある種のフェルミオンとボソンとは、もっと高いレベルをもった粒子が、対称性の崩れのために違った現

われ方をしたものにすぎない、と考えるのが「超対称性」です。間接的にですが、このような超対称性を支

持する計算結果もあります。


<ひも>

 “ひも”ですが、基本的にこれは円を描いています。つまり閉じたり開いたりしている。この“ひも”の色んな

パターンの振動により、素粒子が生成されます。

 なぜ粒子のように点ではなく、一次元上にひろがった“ひも”なのか。これは自由度の問題で、点だと、点、

それっきり。が、“ひも”だと同じ質量ゼロでも波うったり、形を歪めたり、回転したりと、いろいろな動きが考え

られ、その振動に対応する素粒子も無限に現われると考えられるのです。

 さてこの“ひも”、とてつもなく小さいです。10の-35乗m。原子核を構成する陽子の大きさが10の-13乗cm。

この陽子と超ひも理論の“ひも”の比は、ちょうど太陽系と陽子の大きさに匹敵するのです。今までで最高の

加速力を持つはずだったSSC(超伝導大型加速器)の円周は54マイルという見積もりでしたが、超ひもが存

在すると考えられる世界を検証するためには、物理学者は円周1000光年の素粒子加速器を建造しなけれ

ばならないのです(太陽系全体の周りはおよそ1光日)。

 ちなみに同じ“ひも”に「宇宙ひも」というものがありますが、これはビッグバン理論により導き出された宇宙

の相転移時に生成されたとする糸状の欠陥のことで、「超ひも理論」とは区別されます。


<理論の概要>

 まず、この理論は前提として、この世界の次元を10次元とします。われわれは3次元空間に時間の1次元を

プラスした4次元時空に住んでいます。座標はx、y、z、ict(i=虚数、c=光速度、t=時間)。なぜtだけじゃ

いけないのかっていうと、そうすると光速度不変の法則に破綻を生じてしまうからです。2乗すると-1になる虚数

の存在が、われわれにictの方向が見えない理由となっているのです。

 宇宙初期には10次元時空であったこの世界が、なぜ現在4次元時空なのか(もしくはそう見えるのか)?こ

れを説明する(しようと試みる)のが“時空のコンパクト化”です。まず円筒を思い浮かべてください。これが宇宙

です。これを横に4分割します。4段の重箱のように。これで4次元。今度は縦に6分割します。ショートケーキの

ように。プラス6次元。はい10次元。次元のコンパクト化は、円筒がどんどん細くなり、宇宙初期には存在した、

6次元がプランク長さ(10の-35乗メートル)にまで縮まってしまい、円筒が4分割された線になってしまった...

というように考えるのです。

 この10次元の世界で、“ひも”はいろいろな動きをします。開いたり、閉じたり、2つに分離したり、逆に1つに

合体したり。つまり超ひも理論では、素粒子の多様な世界は、1つの基本的な“ひも”の異なるモードとして統一

的にとらえられているのです。振動のモードは無限にあるので、対応する素粒子も無限です。そして、エネルギ

ーのもっとも低い振動のモードに対応するのがクォークやレプトンであり、またグラビトン(重力を媒介する)や

光子などの媒介粒子だといいます。


<意義>

 “究極の理論(TOE)”は、あと一歩の地点にまでたどりついています。強い力、弱い力、電磁気力の三つ

は、「大統一理論(GUT)」によって統一されました。重力を残すのみ。この一歩が、途方もなく大きな一歩

なのです。その理由は二つあります。

 第一の理由は、量子力学はミクロな領域をうまく説明する理論であるのに対して、重力理論はあまりに大域

的な理論であり、両者の守備範囲に大きなギャップがあることにあります。量子力学は巨視的世界で無効に

なるわけではありませんが、ただ、その本領を発揮する領域が異なるのです。

 第二のより本質的な理由は、量子力学は時間的理論であるのに対して、一般相対性理論は空間的(=幾

何学的)で、本来時間を含まないことにあります。このような事情から、場の量子論(ゲージ場の理論)に沿っ

た電弱統一理論→大統一理論の延長上におけるTOEは、絶望とまではいわないまでも、極めて困難なので

はと考えられています。

 超ひも理論は、重力の可能性を許すものではなく、むしろ重力の存在を要求すると考えられています。超

ひも理論のひとつのグループE(8)×E(8)群の構造からは、不思議な世界の存在が予想されます。つまり、

この群の構造をそのまま解釈すると、宇宙には二つのE構造が存在すると考えざるを得ません。そのうち一

方のEgの上に成り立つ世界は、われわれを作り出したり、われわれが住んだり見たりする天体を作った物質

や力を含んでいます。残るもう一方のEgの上に築かれた世界は、われわれが知っている三つの力−強い力、

弱い力、電磁気力−は存在しません。両方の世界を関係づけているのは重力だけ。このわれわれにはまだ

確認できていないもう一つの世界は、「影の宇宙」と呼ばれます。

 また、自然界のもっとも基本的な構成要素は、拡がりをもたない点状の粒子である、という古来からの、物理

学者の間に深く根を張る通念に、具体的に理論をもって挑戦状をつきつけたことにも意義があります。素粒子

物理の問題は、素粒子が点であるという定義から生じる。ゼロという数で割ると無限大になるように、点状の素

粒子が関わる計算は最終的には意味がないものになることが多いのです。


<問題>

 ここまで読んでいただければ解るように、まず「時空のコンパクト化」は問題でしょう。宇宙誕生のとき、時空

10次元であったという考えは別に退けるべきものではありませんが、問題なのは、その10次元のうち、われ

われの4次元を除いた6次元がどうなったか、です。物理的空間の次元の一部をコンパクト化する...その必

然性はあるのか。

 また、拡がりをもつ粒子を取扱おうとするときには、点状の粒子に通用した研究手法は使えません。したがっ

て超ひも理論は、量子電気力学(QED)や量子色力学とはかなり趣きの違ったものにならざるをえないのです。

さらに10次元では、一般相対性理論のリーマン幾何学とはまったく違った構造をしていると考えられます。こ

の未知の幾何学を発見(発明)し、それによって超ひも理論は語られる必要があるのです。

 そしてもっとも根本的な問題として、当面、理論があまりにも数学的で、物理的コンセプトがあまりはっきりしな

いことがあげられます。この理論には数え切れないほど多くのバージョンがあり、理論家には、そのうちどれが正

しいか判断する手段がなく、それぞれのバージョンを研究するグループ間で言葉さえ通じないという状況が生ま

れているといいます。

 さらにこの理論は検証が不可能です。超ひも理論が有効性を発揮するエネルギー領域(10の19乗GeV)に

到達する加速器は、前述した通り1000光年の円周を必要とするのです。物理学者がこの理論に惚れ込むの

は、数学的な優雅さや美しさ、整合性、というものに対してなのです。

 アインシュタインは自らの一般相対性理論について言いました。「この理論は、もう一つ別のものへ発展する

必要があるだろう。今では予想もつかない、いろいろな理由のためにね。私は、この理論を深めていく方法は

限りなくあると信じている」 その究極の理論が“超ひも理論”であるのかどうか、それを判断するのは数学者−

もしくは数学者と化した物理学者−なのかもしれません。