【ハ行】
◎背徳主義
:既成の道徳に無頓着、無関心な考え方。この立場は、既成の道徳を激しく非難する。たとえばニーチェ。
ただしこれは道徳そのものが不要、というのではなく、“人間性をころし、人々の精神的なくびきとなっている
既成道徳を打ち壊し、新たな道徳をつくりあげよう“という考えに基づく。
◎汎神論
:「万有神論」「万有神教」。この世の一切のモノ(存在)は、神のアラワレ(現象)あるいはウツシモノであり、
そのうちに神が宿っている。つまり一切の存在は神、神すなわち自然、という考え方。
ギリシア思想、スピノザ、シェリングなどがこれをとる。
◎ヒエラルキー
:もと、キリスト教の坊さんの階級序列のこと。“上下関係の明らかな序列”。
◎否定的媒介
:否定しながらも、相手方の性質を受け継ぐこと。
たとえば、18世紀フランスの機械的唯物論は、ヘーゲルの弁証法的観念論によって否定的媒介され、
その後マルクスの弁証法的唯物論に発展した。
◎フェミニズム
:社会的、経済的、その他の面において、女の権利や利益、福祉などを男と同程度に引き上げようとする
社会運動。また、そうした主義、主張。「女権拡張運動」「男女同権運動」。
◎不確定性原理
:量子力学の原理の一つ。量子力学で取扱うような微粒子(例えば電子)の測定には、その位置と運動量を
同時に正確に測ることはできない、という原理。これは、もし位置(運動量)をより正確に測ろうとすると、
その測定装置の影響が粒子に及んで、運動量(位置)の方が食い違ってくるため。
◎プラグマティズム
:19世紀後半、アメリカに生れ、主にアメリカで育った、行為や現実に重きをおく、反形而上学的傾向の
思想明確化運動。C.S.パースが、それまでの哲学理論や思想の複雑さ、意味の曖昧さに耐えかねて、
“思想の意味をはっきりさせる方法として、その思想がどんな行動を生み出すかを考えてみよう”
と提案したのに始まる。
◎平行論(心身論)
:精神と身体の関係を説明するために考えられた二元論的理論の一つ。
(1)精神と身体は全く別物であって、この二つは相互に無関係である。
(2)しかし、精神の変化や出来事の一つ一つに対応して、それとは別にではあるが、同時に身体上の変化
が必ず存在している。またその逆に、身体の変化に精神の変化が対応している。
◎弁証法
:「弁証法」にはいくつもの流派がある。
(1)話し合いを通して、互いに理解を深めていく際の技術。これが、ソクラテスおよびプラトンの弁証法。
(2)個人の中に思想が生れ、変化し、別のものになりうる内面的な劇をとらえ、さらにその思想が、
より高い考え方に置き換えられ、脱ぎ捨てられていく外面的な劇にまで追求。ヘーゲルの弁証法。
(3)思想の発展は、思想そのものの力だけによらない。思想を広い現実の中におき、現実の発展の中で
思想の発展の法則をたどる論理学。マルクス、エンゲルス、レーニン、毛沢東の論理学。
(4)人間その他の動物によってすでに為された発明、発見の例を集め、新しい真理の発見の方法の法則を
見つける。これは、ゲシュタルト派心理学者たちの仕事にある。
(5)思想を記号の働きと捉え、その記号がどのように記号同士から集まり、どのように外の事物を指し示し、
どのように人によって用いられるかを調べる。パースから、オグデン、リチャーズ、モリスへ。
(6)曖昧な考え方を解きほぐすことを目的とする弁証法。エムプスンやキャプランの仕事。
(7)キルケゴールの質的弁証法。人生問題処理の上での意志の役割を論じた選択の論理学。
【マ行】
◎マキャヴェリズム
:自国の利益をもたらすようなことなら、国家の、あるいは為政家のどんな行為(ことに国家間の間柄のそれ)
も許されるべきだ、とする政治上の判断。
◎マルクス主義
:マルクス、エンゲルスによって形成、発展させられた、哲学的、社会的、経済的理論。
資本主義社会における矛盾(プロレタリアートの不幸)を批判、その変革を目指す労働者運動の指導理論。
マルクス主義を構成するものは、次の三部門。
(1)唯物弁証法:マルクス主義の哲学的基礎理論。自然、思惟、社会を含む世界全体の一般的基礎知識。
この理論の原理を社会に適用したのが史的唯物論、自然に適用したのが自然弁証法。
(2)経済学:社会の土台である経済的諸関係の分析を通じて、資本主義社会の運動法則を明らかにし、
その没落と社会主義建設の合則性を明らかにする。
(3)科学的社会主義:「資本主義の没落と、その社会主義への移行の必然性」に基づき、
その移行の形態(社会革命)、その原動力(プロレタリアート)、その方法を明らかにする。
◎メタ言語
:他のコトバの性質、語彙、文法などを説明するために用いるコトバ。
英語で書かれた日本文法があれば、英語がメタ言語。
【ヤ行】
◎唯物論
:“この世界を構成するものは精神的なものではなく、物質的なもの(自然)である”とする考え。
(1)機械的唯物論:17世紀フランスに栄えた。どのように物質と結びつくと、精神の働きを生むのか。
この問題を@自然科学ですでに確かめられている法則、とAそれらを空想によって押し広げられて
得た仮説、とによって答える。
(2)弁証法的唯物論:人間の精神が物質の発達によって生じた状態でありながら、その独自の発達によって
石や水などと違い自分の意志によって動く能力をもつものとなったことを認める。そうして、単純な物質から
生物、人間へと進化する、物質の歴史の中でこの人間の特質を考える。
◎ユートピア
:「理想社会」。実践によって確かめることのできない理想をたてる人を「ユートピアン」と呼ぶ。
マルクス主義者によって、マルクス以前の社会主義者は「ユートピア社会主義者」と呼ばれる。
◎様相
(哲学)「モノのあり方」「存在の仕方」「存在の形式」。普通、次の三種があげられる。
@現実:実際にそのままあること。
A可能:やがてそれになり得る、という可能性をもつものとして。
B必然:それ以外ではあり得ないものとして。
(論理学)命題の性質による分類、またその種類。普通命題とは、「AはBだ」といった定言的命題をさすが、
これに対して、「AはBとなるはずだ」(蓋然的)、「AはBとなることができる」(可能的)、
「Aは必ずBとなる」(必然的)といった命題の種類。
【ラ行】
◎リゴリズム
:倫理学上の考え方の一つで、「厳粛主義」と訳される。人間のもつ自然的・肉体的・感覚的な欲望、感情、
情熱を厳格に抑え、理性の命じるままに格(ノリ)をこえない行動をすることが、道徳生活の理想だ、とする。
実例では、ストイシズムやカントの道徳説がその代表。
◎理性の詭計
:ヘーゲルが歴史の歩みについて考えた言葉。歴史の動きは必ずしも理性的に進行せず、
情熱的・反理性的なものが働いているようにみえる。しかしこれは理性が、歴史の進行にあたって、
情熱的なものを利用し、自らはその背後にあって労せずして成果をおさめようとするからだ、という考え。
◎労働価値論
:モノの値打ちは、そのモノをつくりだすのに必要な労働の量によって定まる、と考える学説の総称。
17世紀のペティに始まり、ボアキュベール、スミス、リカード、フランクリンなどによって受け継がれたが、
マルクスによって大きく科学的に進歩した。彼によれば、「労働」には二種ある。
@具体的労働:そのモノをつくるのに直接つかわれた人間のハタラキ。
A抽象的労働:モノをつくるのに必要と社会的に考えられている労働。
◎論理学
:一般に、正しく考えるための筋道を研究する学問。“正しい思考はいかに行われるべきか”、
“正しく思考するための条件は何か”などを研究する。
(1)指し示される内容が違う場合:@形式論理学、A認識論、B形式論理学+認識論(知識学)
(2)自己の哲学理論を打ち立てるための特有の哲学論理学。カントの先験的論理学、フィヒテの知識学、
ヘーゲルの弁証法、フッサールの現象学的論理学、リップスの心理学的論理学など。