チヌが結んだ出逢い
〜「チヌに憧れて」 友波氏〜
私がチヌを釣り始めて、随分時間が経ちました。
当然、色々な出逢いもあったのですが、”彼”との出逢いは、私にとってとても意味深いものでした。
1999年3月19日。そのメールは私の元へ送達されようとしていました。
彼、そう友波さんがそのときどのような気持ちで私にメールを出してくれたのか、今考えるとこそばゆいような気持ちがします。
その日、私は家族で四国へ行っており、このメールが実際私のPCに届いたのは22日でした。
このメールを開いたときの気持ちは今も鮮明に覚えています。
実は私には気になっていることがありました。
周防大島に架かる大島大橋。この橋が無料化されて移行、以前にもまして釣り場は汚れていきました。
私のHPを見て大島に行こう!と思う人がその当時どれくらいいたか、というのは解りませんが、こうして周防大島の釣況や素晴らしさをホームページにアップし続けているということは、更なる釣り人を周防大島に呼び寄せているかも知れないのです。
ゴミ、釣り場の汚れ、交通渋滞等々....恐らく島外、特に広島方面から来る釣り人は、周防大島に住んでおられる方々には良く思われていないんじゃないだろうか?
そんな私に届いた一通のメール。「YUUMIさんはじめまして。いつも楽しくHPを見させていただいています。
私は、大島に住んでいる....」
その書き出しを見た途端、私はドキッっとしました。
このメールを実は待っていたんだと思います。周防大島に住まれている釣り師の方からのメール。
つまり、私は、”周防大島に住んでいる釣り師”としての友波さんに出逢い、自分がやっていることが救われたような気持ちがしたのでした。
今考えると、友波さんの実力からすればとても的を得ていないようなアドバイス的なメールを、”周防大島に住んでいる釣り師”に逢えた喜びに合わせて、送ってしまっていました。
それから、何度となくメールのやり取りをすることにより、友波さんの人柄を徐々に感じ取っていきました。
この人は本質的に似た人だ...そんな風に思い始めていました。
1999年5月3日。ゴールデンウィークの真っ最中です。一度悪天候で流れた友波さんとの初釣行。
時期はノッコミ真っ最中。私はこの年、ポイントを一つ開拓しており、その甲斐もあって、小型ばかりながら、なんとかチヌの顔をコンスタントに見ながら過ごしていました。
先ずは待ち合わせの某釣具屋の前。
友波さんを最初に見た印象。「ホッ」 です。なんとも人の良さそうな人。
おまけに歳は一つ違いですから、歳上の釣友が多い私としては、とてもリラックス出来ました。
挨拶もそこそこ。まずは友波さんのマイポイントへ。
友波さんの釣りをこの時初めてみたのですが、その丁寧さには驚きました。この人はやる...
そんな確信じみた気持ちになったころ、目の前でチヌ競技スペシャルが綺麗な円弧を描きます。急流に上手く流してチヌを掛けたのです。
そのポイント。潮の関係から1時間程度しか竿が出せませんでした。そこで、今度は先に述べたこの年開拓したポイントへ案内します。
磯歩き。
友波さんの磯足が遅かったのを覚えてます。
さて、場所換え後。またもや友波さん。今度は先とは違って潮の通らない場所です。でも釣っている。やはりこの人はやる...
その後、双方釣り合って、結果的には慣れたポイントということが手伝って私が1〜2枚多く釣りましたが、こんな気持ちの張りのある釣りは経験したことがなく、とても新鮮なものでした。(この人と竿を出すことは自分にとってプラスになる。)
そして、その日見た光景が、私を友波ファンにさせたのです。
友波さんは煙草を吸います。私は吸いませんから、吸わないからこそ余計に煙草の海や磯へのポイ捨ては気になったりするものです。
友波さんが私より一段高い左側の釣り座で煙草を吸い終えました。見るとは無しに見ていると、火を消して、それを自然に...本当に自然にベストのポケットにしまったのです。
「え?」 それは明らかに私を意識しての行動ではありませんでした。
衝撃的な気分でした。(この人は誰も人が見ていなくても自然にこんな風に行動できる人なんだ...)
こういう人は居そうで居ないのか、それまで出逢ったことがなかったのです。
月日が流れます。
恐らく、友波さんも、私も、お互いの釣りをいい意味で意識して、恐らく僅かばかりでも上達してきたと思います。
友波さんが隣で竿を振る。もう幾度となくそんなシーンを経験しましたが、隣で人が竿を振っているにも係わらず、自分の釣りが制約されない。そんな不思議な人です。遠慮が要らない。逆に気を抜くと、あっという間に釣果に差がついてしまう。好敵手?そうなのかも知れませんが...ただ私は友波ファンですから...
そんな月日が流れていたのです。
ある頃。私はちょっとしたキッカケで、釣りに意欲が湧かなくなり、ホームページ作りも重荷に感じていたことがありました。
友波さんは、私の隣で竿を出しながら、それを感じ取っていたようです。
「田中さんは、前ほど釣りが楽しそうじゃない...」
当然、表面上は釣りへの意欲の喪失など現さないで竿を出していたつもりです。
この人は不思議な人です。きっと強い人なんだと思います。
私が立ち直る最大のキッカケとなったのも友波さんの一言。
「釣りは自分が楽しめればいいんじゃないか」
目から鱗...何を重荷に思っていたんだろう。何を格好つけていたんだろう。気持ちが軽くなるのを感じました。
この時の私の考えていたことや心理状態は、それ自体ここには書けません。だから、上手く伝わらないと思います。
ただ一つ。友波さんが言ったから、目から鱗が落ちたんです。この人は「自分さえよければ」なんて行動は絶対しないし、恐らくそんな思考回路自体が存在していないと思います。その人がいった一言だから...なのです。
もうすっかりお馴染みだと思いますが、友波さんが立ち上げたホームページ「チヌに憧れて」。チヌに...といいながら、自然に、釣りたい魚を釣り、食べたい魚を釣り、そしてチヌを釣る。魚釣りの楽しさがそこには秘められています。
この「チヌに憧れて」の立ち上げのキッカケの一つとなれたことに喜びを感じます。
自然体に、海と向き合って、楽しんでいる素敵な人間。それが友波 という男だと思います。
その男のお陰で、今、私は釣りが楽しくて仕方有りません。