その頃のホームグランド、岩国港新港。
ですが、その頃から実は周防大島でも結構団子をやっていました。
なにせその頃は大島に渡るには大島大橋で確か1280円だったか1250円だったか忘れましたが、往復でそれくらいのお金を払わなければいけませんでしたので、そんなに頻繁には通えていませんでした。
ただ、今になって考えれば、橋が有料の頃の方が、やっぱり釣り場は綺麗だった...そんな気がします。
さて、そう言う状態で大島に渡っていたのですが、その頃の団子の大島のメインポイントがB埠頭でした。
ここの大波止の中央の曲がり部付近に釣り座を構えることが多かったです。
ここは足下から7〜9m沖まで敷石が入っているため、団子の投入ポイントはその沖になります。
経験上、敷石の際より、少し沖目の方がよい感じでした。
私が攻めていたのは15mくらい沖。もともと、ホームグランドの岩国港では、足下に敷石はありませんでしたので、さほど遠投していなかったこともあり、あまり団子の遠投、ということを深く考えなかったのです。
団子は寄せて、自分でポイントを作って釣る釣り方だとそう思っていました。当然、底に変化のあるポイントを選ぶのではありますが。
その日も、岩国港である程度自信をつけた私は、いつものように糠、海砂、荒挽き、ムギだけの団子を作り、パサパサの水分調整で着底3〜5秒の割れ...そんな団子を投げていました。
岩国港程ではありませんが、15〜30cm弱程度のチヌがそこそこいい調子であがってきます。
私の他のチヌ釣り師は、普通の棒浮きを使った団子釣りをやっている人が2人。その人を挟んで先端部分にブッコミ釣りをしている人が2人いました。
ここで言うブッコミ釣りというのは、2mくらいの筏竿を使って、中通しの錘、刺し餌を団子にくるんで釣るスタイルです。
この日の二人は団子用の大きな杓を使った超遠投。30mラインで釣っています。
さて、そこそこいい調子で釣る私。周りの釣り師より明らかにハイペースで釣り上げています。
軽量自立棒浮きを使ったいつものスタイル。少々自分の釣りに酔い掛かっていた....そんなタイミングだったと思います。
いきなり、ブッコミ釣りの釣り師の一人の短竿が大きく曲がります。
もう一人のブッコミ釣りの人とあーだこーだ言いながら....かなり大きそうです。
時間を掛けて取り込まれたのは、遠目にも45cmはありそう。
私はいい気になって20台の小チヌを釣っていたのです....
(偶然だろう???)
しかし、私のそういう気持ちは、すぐに叩き潰されました。
それから30分もしないうちに、また40台のチヌが取り込まれます。
ペースは遅いものの、取り込むのは良型ばかりなのです。
かなり愕然とさせられました。同時に、小チヌを釣って納得していた自分が恥ずかしくなってきました。
よし!遠投がいいなら....こと釣りに関して挫ける私でもなく、遠投には遠投で...ということで、20〜25mラインにポイント作りを始めました。
しばらくして、浮きにアタリが出始めます。
よしよし....バシ!・・・・・・さっきまでと変わらないサイズです。何故??
向こうはブッコミ。ということは、ハワセか?
浮き下を深くします。でも、釣れるのはやっぱり小チヌ。
どうすればいいんだろう?何が違うんだろう?当然、ブッコミと浮き釣りでは、団子が割れた後や、更にその後の刺し餌の動きも違うのですから、違って当たり前なのですが、その頃の私の頭では、そんな単純なことも冷静に理解できていなかったようで....
ふと、ブッコミの人を見ると、捕虫網のようなものに古いTシャツを袋状にしたものをつけて何かを取り始めました。
???
見ていると、どうにもフナムシを採取しているようです。
フナムシを餌にする、そんなことが頭の中になかったその頃。頭は疑問符だらけ。
そのブッコミの釣り師は、あのキモチワルイフナムシを蓋付きバケツに入れて、それを手で掴んで.....
想像して・・・ゾッっとして・・・・しかし、その後また良型のチヌが....
自分の腕の無さと、発想の貧困さを棚に上げて、その差はフナムシ!そう決めつけるのに時間は掛かりませんでした。
こうなればフナムシを.....が、波止の上にはそんなにフナムシはいません。波止の壁には無数についています。
心の中にある、このゴキブリ的気持ち悪さの持ち主を、波止に這い蹲って捕獲することなど出来るわけもなく....
そうして一日は幕を閉じたのでした。
その日の経験以来、フナムシ餌に対しては何だか特別な気持ちができてしまったようで....
知識だけは備わってきます。例えば、団子の中に数匹フナムシを混ぜてフナムシ団子を作れば、チヌを寄せるという点で相当な効果があること、オキアミへの反応が鈍くなる秋の時期に、フナムシはかなり効果的な餌であること....等々。
フカセでは時々フナムシを捕獲して針に刺してみることはあります。
でも、何故だか団子では、使おう使おうと思いつつ、未だにまともに使ったことが無いのです。
あの日、自分の釣りでは太刀打ちできなかった。それはフナムシだった...そんな訳はありません。単に自分の力量がないだけのことで、そのブッコミの釣り師の方の腕が良かったことも確かだと思います。
でも、なんだかフナムシに負けた....そんな気持ちが心の中に根付いたのかも知れません。
そして、今でも、いつかフナムシ団子で釣ってみよう...そう思い続けているのです。さて、実現するのは何時の日か....我ながら、理解不能な話でした。