7月22日。久しぶりに周防大島で紀州釣りをして、その翌週の28日。
ペース良く、また周防大島に向かう。そうそう、毎週に近いペースで大島に向かうのが本来の僕のペースだ。
家を出たのは十分すぎるほど日が昇った6時半頃だから、釣り場に着くのはどうしても8時頃になってしまう。まぁ紀州釣りだしね、いいだろう、ということにしておく。
ときどきメールをいただいている友人から、10枚ほどは釣れる、という情報を貰ったポイントへ向かってみる。
ここ、10年くらい前に来たことがあって、そのときはサシエが全く触られなかった。
それ以来、なんとなく足が遠ざかっていたのだけれど、釣る人が釣れば、釣れるらしい。確かに周防大島にしては水深もあり、手を出さないのは勿体ないポイントではある。
情報では内波止の外向き、ということだった。
が、とりあえず外波止の様子を見る。ここから外向きに釣っても面白そう。が、南風が強く、外向きはちょっとしんどそうだ。
内向きは...竿は出せるが、どうにも...アミエビ臭い。
どこもそうなのだけれど、底カゴサビキのアジ釣り自体をどうこう言うつもりもないのだけれど、アミエビを波止にぶちまけてそのまま帰るのは止めてくれないかな。
流せばいい。たったそれだけのことなのに。
一旦車に帰る。外波止だと荷物を運ぶのも面倒なので、内波止に向かってみる。ここなら荷物運びは楽そうだ。
こちらもアミエビ臭いのは臭い。外波止よりはマシかな。
まぁ、折角いただいた情報どおり、ここから外向きに釣ってみよう。
水深は15〜20mほどある。
これでエサ取りの中層アタックが多かったりすると、団子も相当気合いをいれて握らないといけないなぁ...
しかし、そんな心配は必要なかった。
紀州マッハと紀州マッハ攻め深場を半々に混ぜ、細挽きサナギ、押し麦で作った団子はなかなか割れない。
海の中の活性は極めて低い。オキアミが残る。
延々と...時間経過。正午を回る。相も変わらず...ときおりフグが餌を囓るだけ。
この日は14時には竿を畳まないといけない予定。もう、こういう忙しない釣りは嫌になってくる。
ああ、ゆっくり釣りたい。
13時を回った頃。ようやく団子周りが賑やかになってきた。
コーンも取られる。
よしよし...しかし、遅いんだよな、ったく。
結局2枚釣って、タイムアップ。

それにしても、10枚釣れるポイントで2枚とは...
本当に下手くそだな。俺。
そう、下手なのだ。僕は。
しかし、そのことを忘れて今年も旅立つ僕がいる。
「了解です。魚、持って行きますね。Kabe兄。」
あろうことか、岩国帰省予定のKabe兄に魚をお裾分けする約束までして。
夏の恒例行事ともなっている、北灘湾掛かり釣りツアー。
今年もクーラー2つをコロコロに載せて、背中のリュックに短竿を突き刺して、そして電車で柳井港を目指す。8月10日の夜。
ここからフェリーに乗って約2時間半。フェリーを降りればそこには松山の兄貴分、すなちゃんの笑顔が待っている。
毎年、フェリーに荷物を載せるのが大変。行きはクーラーが軽いからいいのだけれど、帰りは魚と氷で相当な重さになる。
しかも、フェリーから降りるタラップの幅より、大きい方のクーラの幅が大きいため、コロコロで引いて降ろすことが出来ず、ふらふらしながら持ち上げて降ろしていた。
ところが、今年はダイヤ改正の関係か、いつものフェリーでなく、途中、周防大島伊保田港に立ち寄るフェリーになっていて、これだと、車を降ろす正面の...ええっと、何て言うんだ?...ともかく車が降りるゲートから人も乗り降りできる。幸い行きも帰りも予定通りの便であれば、伊保田経由のフェリーになるので、今年はこの点では随分楽ができた。
もう一つ、例年と違うのは、乗客が実に多いこと。
お盆の帰省客なのだろう。去年などは、行きはフェリーに僕しか乗っていないという、申し訳ない貸し切りフェリーだったし、毎年、とても空いているので、違和感がある。
日付が変わり、11日。
ともかく、すなちゃんと約1年ぶりに再会して、車に荷物を積み込み、いつものように釣具屋に寄る。
ボケ(テジロ)、オキアミ、サナギ、ネリエ(魚玉ハード。普通の魚玉がなかった。)。以上がサシエ。
団子材はすなちゃんと同じものを揃える。オカラダンゴ、荒挽きサナギ、そして釣具店オリジナルブレンドの団子材。
いつものように...そう、すなちゃんはゲストを決して退屈させない。フェリーの中でうつらうつらして、頭の中が少しばかりボーっとしていた僕なのだけれど、すなちゃんとああだこうだと話をしていると、いつの間にかテンションが上がってきているから不思議だ。
コンビニで食料を調達し、いつものマリーナに到着。
荷物を降ろし、周辺が明るくなるまで待つ。慌てない。
星が多い。光害が少なく、空気も澄んでいるから、こんな海辺でも、その星の多さには圧倒される。
海を見る。僅かな明かりで底が透けて見えている。どうにも例年以上に澄んでいるようだ。こういう相違点はとても気になる。大丈夫かな?
星がその存在をあやふやにして、養殖イケスなどが充分確認できるくらいに明るくなってから、すなちゃん船長は船を出す。帰ってきたなぁ。ウネリのない内湾の穏やかな海。北灘湾だ。

さて、どこに船を掛けるか?
すなちゃんが言うには、イケスの数が減っているとのことで、掛けるのに適当な空イケスが見あたらない。当然、船を掛けることができるのは空のイケスだけだ。
「まぁどこでもいいんじゃないっすか。どこでも釣れるでしょ?寄せりゃいいんだから。」
そんなノリで船を掛け、団子を作る。
スタート。

団子が僅かに煙幕を引きながら深い海底へと沈んでいく。
・・・あれ?
・・・なんもおらんのちゃう?
・・・ねぇすなちゃん。何もいないっすよねえ。
何も釣れん。というか、何も団子をつつかない。おかしいぞ、今年の北灘は。
すなちゃんは、「シロギスが食べたい。まずはシロギスだな。」などと言っていたら、本当にシロギスを釣った。
底で何も団子はつつかないのだけれど、海底から1.5〜2mほど持ち上げると様相が一変する。
団子から餌が抜けて(餌を抜いて)、少し持ち上げておくと、25〜30cmのまるまるとしたアジがほぼ確実に釣れる。
目的には反するものの、これを無視する手はないし、これを無視したことがばれると、女房にも、そしてKabe兄にも怒られる。アジは旨いのだ。
なお、Kabe兄は地元岩国高校の甲子園第1試合を応援に行く関係で、翌日日曜の夕方に岩国に帰ってくることにしたらしい。では、魚は要らないか、というとそうではなく、Kabe兄の実家に魚を届ける、という役目を担っている。弟分としては兄のイイツケは守らないとイケナイ。
せめて日頃のお世話に感謝を込めて、しっかり美味しい魚を釣って届けたい。
しかしなぁ。アジばかりじゃぁなぁ。赤いのがいい、と言われているんだよなぁ。
ようやくすなちゃんの竿が動く。お、チヌっぽい。けど...26cm。瀬戸内サイズだ。
すなちゃんは最初に言っていた。ここ、人が入っていないから、寄ってきたらデカイのが...
ちょっと話は違うが、さすがすなちゃん。本人はかなり不満らしいのだけれど。
あまりに釣れないので一度場所移動してみる。
しかし、ここもまったく底には何もいない。どうせ何もいないのなら、朝から団子を打ち返して、少し団子に反応が出始めている元の場所の方がいいだろう、ということで、元の場所に戻る。
また、ただただ打ち返すものの、チヌは掛からない。団子アタリは小さいながらも頻発しているのだけれど、団子を割るほどの激しいものでなく、どうにもすっきりしない。
しかし、昼前。またすなちゃんの竿が動く。海面に竿を突っ込んでのやり取り。良型か?


これは48cm。さすが、すなちゃん...はいいのだけれど、僕には釣れないのか?
(あ、そういえば下手だったんだ。思い出したぞ。今年の北灘の活性じゃぁ、僕はヤバイのではないだろうか?)
そうしていると、今度はすなちゃんが美味しそうな40cm弱の真鯛を釣る。
あれ、Kabe兄が欲していた魚だよなぁ。僕に釣れるのかなぁ。
サングラス越しに真鯛を見つめる僕の眼差しにすなちゃんが気付く。
「これ、いる?」
「あ、要らないならもらいます。」
「要らないことはないけど。」
「いや、Kabe兄が喜ぶだろうなぁ、と思って。」
真鯛、ゲット。
Kabe兄のご両親に食べていただく以上、キチンと血抜きしておかなければいけない。
団子をつけて放り込んでいた竿を放り投げておいて、真鯛をシメ、海に浸けてしっかり血抜きをする。
海水氷を張ったクーラに放り込んで一仕事終える。
あれ?竿がなんだかずれているなぁ。船縁に立てかけていた竿が横にずれている。
竿を持ってラインの回収...「あれ、何か付いてる。」思わず口に出る。
何か引いてる。
「おいおい、まさかチヌじゃぁないだろうな。これがチヌだとさすがに虚しいぞ。置き竿でチヌはなぁ...(すなちゃんにネタ提供するだけじゃないか。)」
祈りも虚しく、海面下に銀鱗が輝く。げ、チヌだ。
26cmほどの小チヌ。あああ、こりゃ数年間ネタにされるなぁ。ははは。
しかし、この置き竿チヌ(後に置き竿事件と呼ばれる...のか?)は幸運をもたらしたらしく、その後、海の活性が本来の北灘のそれに近づいてきた。
すなちゃんは、ほぼ毎投チヌ、真鯛などを掛けている。
実は内緒なのだけれど、一度、チヌと断言してホゴ(カサゴ)を釣っていた。ホゴとチヌを間違えるとは...
もう一つ、実は内緒なのだけれど、ボラは釣らない、と豪語していた割に、チヌと断言してしっかりボラを釣ったりもしていた。僕より沢山釣ったな。
もう一つだけ内緒なのだけれど、フグといえば田中優海、といわれるほどなのに、この日はすなちゃんしかフグを釣らなかった。
まぁそのあたりの内緒話は内緒にしておくとして、ともかくすなちゃんの実力発揮状態だ。
こうなると、僕の方は...毎年のことだった。最初こそチヌを掛けていたのだけれど、活性が上がれば上がるだけ、僕にはチヌが食わなくなってくる。いや、正確にはアワセることができなくなってきた。
団子が思うように割れないのだ。
すなちゃんにそういうと、「ん?団子にオキアミ入れてる?はみ出すみたいに入れてると、魚がつついて団子割れるよ。」
・・・なるほど。
確かに団子は割れ始める。しかし、とてもじゃないがすなちゃんのようなペースでは魚は釣れない。

すなちゃん。再び良型、47cmを釣る。
アクシデント発生。
釣った真鯛をシメて、血抜きをしていたときのこと。
危ない、と解ってはいたのだけれど、船とイケスの間から海に手を突っ込んだ。波の周期からして大丈夫、と踏んでいたのだけれど、不意に船が速くイケスに寄ってきた。とっさに手を引こう、と思ったのだけれど、真鯛を握っていたため対処が遅れた。
これは本当に危ない。船とイケスを組んでいるパイプとの間で、手がゴリっと嫌な音を立てた。丁度手首関節のすぐ上の骨が盛り上がったあたりだ。
骨...と一瞬これ以降の釣りを諦めないといけないかな?すなちゃんに迷惑を掛けるな、と思ったのだけれど、しっかり日光に当たってカルシウムの足りている僕の骨はそれなりに丈夫だったようで、骨には異常なさそう。
しかし、腫れてくるし、それなりに痛い。海に手を突っ込み、しばらく冷やす。
釣り再開しても、バケツに海水を張って、団子を落とす間などは手を冷やしておく。
手首は問題なく動く。まぁ大丈夫だな。と安心していたところ。
急に手の甲の筋がおかしくなって竿が握れなくなってきた。明らかにぎこちない動きになるので、それまで内緒にしていたのだけれど、すなちゃんに状況を話しておく。
「危ないよ。病院、いく?」
間抜けな僕に嫌な顔一つせず、もう頭が切り替わっている。
「いやいや、そもそも僕は大げさですからね。こうやって釣り続けているくらいだから、大したことないっすよ。」
30〜40分すると、嘘のようにこの状況は改善。以降の釣りには影響がなくなった。
さて、それはそれとして、釣れないなぁ。と、思っていたときだった。
念のため言っておくと、これは置き竿ではない。
団子が割れ、よく解らないアタリを無視して、しばらくじっと耐える。餌はオキアミ。
グッっと、比較的解りやすいアタリ。ビシッ...と、実は頼りないアワセを入れ、やり取りに入る。
ん?そんなに引かないなぁ。また小さいのだろう。
比較的簡単に底も切れた。
しかし、中層から上あたりで、急に竿を絞り込み、穂先が海面に突き刺さる。う〜ん、なんだろうなぁ。
「お、行ったんじゃない?」とすなちゃん。僕としては、大した引きでもないし、まさかなぁ、と思う。
ようやく魚体が見える。確かにいいサイズではあるけれど、まぁ50cmを越えている、ということはないだろうな、と思う。しかしすなちゃんは、これは行ってる、と言う。
玉網で掬い、検寸してみる。

あ、ほんとだ、いってる。
チヌ51cm。
しかしさすが北灘。このサイズでも魚体に老いを感じさせない。

とりあえず形になってよかったな。
その後、さらなる良型を願って手返しを続けるものの、徐々に活性が落ちてきてしまう。
すなちゃんはぽろぽろと釣っているものの、僕の方は全く。ときおり小振りな真鯛、アジを釣り上げる程度。
やけになって、ボケを針に刺し、団子の中に小ボケを4〜5匹握り込んで団子を落としてみた。
すると、綺麗にアタリ。おお、いいじゃん。と思ったら、これも小振りな真鯛だった。
では、と、未だ未開封のネリエを取り出し、大きめに針に丸めて、団子で包んで落としてみる。
当たってる。いつ合わせるん?これ?
ああ、そうね、浮きで釣ってるときと同じね。しっかり引き込んでから、か。しかし、しっかりラインが張られている状態でしっかり引き込むまで待つって...俺、出来ね。
3投でネリエは諦める。
16時前、一枚チヌを釣る。もういいな、と思う。
納竿時間は16時半の予定だ。
例年、僕がここでひたすら粘ることも、帰りのフェリーに間に合わなくなりそうになったり、実際間に合わなかったりする原因になる。そのことをようやく学びつつある。
もっとも去年、一昨年の花火大会は不可抗力だけれど。
そう、去年、一昨年と連続で、三津浜港での花火大会にぶちあたり、帰りが1便遅くなり、柳井港まで迎えに来てくれる女房に苛められたのだ。
16時過ぎ。竿を畳む。
釣れる度にチヌと真鯛はシメていたのだけれど、それもペースを乱すので、途中からストリンガーに掛けていた。これをシメないといけない。
すなちゃんは、再び活性の上がって来つつある海底に、まだ団子を落としている。
もう少し釣れば、まだ釣れるのだろうけれど...ああ、時間に追われるのは嫌だなぁ。帰りたくはないのだけれど。

(釣果の一部。あとは海水氷のクーラの中。)
結局、チヌは9枚。その他、真鯛、アジ。丸ハゲ。Kabe兄の実家と我が家で半分に分けても、それなりにしっかり食べるだけの量は確保できた。よかったよかった。
すなちゃんからは、「こっちのも持って帰る?」と申し出いただいたのだけれど、あまり沢山持って帰ると、それはそれで大変なので、それは遠慮した。すなちゃんの魚は、それでなくても、あちこち行き先がある。
二つめのアクシデント。
暑さにふらふらしながら荷物を車に積み込み、三津浜港を目指す。
ん?渋滞??
「なんでこんなとこで混むんやろ。盆の渋滞なら逆方向だろうに。」
こりゃ、この調子じゃ絶対間に合わないぞ、フェリーに。
今年は女房の機嫌を損ねるだけじゃなく、Kabe兄の実家へ魚を届けることができなくなる、という問題もある。
気を揉みながら先に進むと...これは交通アクシデントだった。事故だ。追突事故があって片車線がふさがれていたようだ。
ここから先も落ち着かない行程が続く。
三津浜港到着はフェリー出航15分前。ホッ。
すなちゃん、今年も本当にありがとうございました。楽しかったっす。また来年もよろしくね。
「明日は別に早く帰ってこなくていいからね。」と女房。
こういう日は最近では極めて貴重だ。
では、折角だから僕の好きな釣り場へ行って、ゆっくりと団子を握ることにしよう。
例によって起きたのは5時半。家を出たのは6時10分頃。
周防大島着は7時20分ころ。さらに車を走らせて目指す釣り場の駐車スペースに到着し、荷物をコロコロに載せて運んで、釣り座に到着したのはすでに8時過ぎ。
ふぅ、と、抜けるような青空を仰いで、一息入れる。この時間、すでに日差しは照りつけているものの、その暑さはまだ気持ちがいい。
団子を作る。
紀州マッハと同攻め深場を1:1。細挽きサナギ...あ、思ったより前回の残り分が少なかったなぁ...まぁいいか。ということで、やむなく若干少なめに入れる。アミエビは...どうしようかな。まぁ気持ちだけ入れておこうか。指先で摘んでバッカンに放り込む。
サナギ粉に水分を馴染ませるように海水を入れてよく混ぜる。
竿と玉網の柄、それと浮きケースをロッドケースから出して、仕掛けを作る。
おおそうだ。そういえば今日は男鹿の友人が紀州釣り大会をやってるんだったなぁ。大会の成功を祈ってメールを入れておく。
さて、釣り開始。と思った頃にはすでに9時頃。本当にスロースタートが板についてきたな。
すでに暑い。気持ちいい暑さが時間を追うごとに「あちぃ」と口から出てしまうような暑さになってくる。
今日はポカリの900mlサイズを一本買ってきているが...この時間からすでに封を切って飲み始めるようでは、足りないような気がするなぁ。
素針を団子に握って、まずは棚合わせ。
団子がまったく割れない。魚が居ない。
ここではよくあることで、より始めると今度は団子が持たなくなる。
ん?あ、押し麦入れるの忘れていた。
押し麦を取り出すと...ん、げ、虫が...小さな虫が無数に開封済みの押し麦の中に入っている。
夏はいかんなぁ。
気にせず団子に入れる。
3投ほどで棚を決める。まずは浮き下を水深とトントン+α程度にして、魚の気配が出始めるのを待つ。
針に刺したオキアミが触られ始めるのは早かった。活性は高いようだな。
団子アタリは微少で、まだチヌは寄っていないようだ。
ミィーンミィーンミィーンミィーィ
シャァーンシャァーンシャァーンシャァーン
蝉時雨
ふと、その中に
ホーシ、ツクツクツクホーシ、ホーシ、ツクビーツクビー...
ああ、夏も終盤に入ってるんだなぁ。
しかし暑い。先々週の大島での紀州釣りの際には風が強かったため、さほど暑さは感じなかったのだけれど、今日はときおり風がそよぐ程度で、とにかく暑い。ポカリを飲む。
オキアミは瞬殺状態になってきた。しかし、詰め気味でもサシエに魚が触った瞬間がよく解らない。
ともかく、ハワセ幅を逆に大きくしながら、チヌが当たってくるまで、とにかく団子をしっかり握ることだけ意識して待つ。しっかり団子を握っておけば、チヌが触ってくれば解るはず。
早々にコーンの缶詰を開ける。いつものように半分くらいを口の中に放り込む。
今日のように暑いときは、アオハタコーンの塩分と糖分がありがたい。汗を書いたらともかく塩分糖分。
コーンも触られる。しかしとにかく団子アタリがジビジビという感じで小さい。団子が割れた後に感じられるアタリも非常に小さくてアワセを入れる気になれない。
ベラ系か?フグか?チャリコか?
まぁもう少し耐えよう。
11時を回ってしばらくして、ようやくそれらしい固い団子アタリが見え始めた。
満潮潮止まり前の時合いだ。
コーンではなかなか食い込まないが、しばらくコーンでじらしておく。
足下にいたフナムシをパシリ、と叩いて捕獲。針に刺す。
これでようやく1枚目が掛かる。満潮前で15m少しの水深で小さいながらもチヌの引きを味わい、そしてその瞬間だけは暑さを忘れる。
小振りなチヌをそのまま引き抜く。
続いてフナムシを針に刺すが、これはいつの間にか餌を盗られた。
う〜ん、握りが甘いか。
コーンに戻して団子をさらに強く握る。鍛え方の足りない手は、なんだか下になっている左手の手首あたりが痛い痛い、といっている。
しかし、思うようにコーンでアタリが出ない。
今度はネリエ(魚玉)を針につける。
ネリエの場合、他のサシエに比べてかなり丁寧に握らないといけない。満遍なく周辺から力を加えて、団子の芯に対してズレた力が掛からないように気をつける。
これに反応。団子が割れ、一呼吸置いてからスーっと永易浮きが海面に引き込まれる。
アワセ!
幾分重量感を増した引きが伝わってくる。青空に向けて突き立てた竿をグゥーンと絞り込む。
さすがに引き抜けないサイズを玉網で掬う。これは38cm。
ここで潮止まりを迎えたようで、チヌアタリは遠ざかったように感じた。
「アジィ〜、アジィ〜、アジの開きぃ〜、ああ、アジの開きになってしまいそうだぁ〜。」
人間、一人で過酷な状況に追い込まれると、訳の分からないことを口走る(俺だけか?)。
すでにポカリは半分以上なくなっている。気温はどんどん上昇する。
下げ始めの時合いに入ってもよさそうな時間なのだけれど、どうにも上手くアタリが出ない。
少し変化を加えてみようか。
永易浮きSサイズ(純正)を使っていたのだけれど、浮きの浮力を上げてみることにする。人間が考えるのと逆の方向に変化を加えた方が結果が出ることありますよ。以前永易さんから聞いた深い言葉。
確かに、フカセをやっているときでも、食い込みが悪いとき、ワザと浮きが過浮力になるように設定することもある。
紀州釣りの場合にそのまま適用できる例えではないが、一見逆に見えることが正しいことはよくある。
自作の永易浮きモドキのMサイズ(くらいかなぁ)をセット。
途端に団子アタリが明確に見え始める。これは当然といえば当然。
さらに、そのまま本アタリに素直に移行する。餌はコーン。
これは33cmのチヌ。
次は餌をネリエにしてみる。これもそのまま本アタリへ。小振りなチヌを引き抜く。
よしよし、このまま連発...と思ったのだけれど、ここでまた海の様子が変わる。
反応が鈍くなると、とにかく暑い。
そこに海がある。綺麗な海がある。何故俺はここに飛び込まないのだ?
我慢大会やってる訳じゃぁないのだ。幸い人もいない。午前中は人がいたがすでに帰ってしまっている。
ほら、波止の付け根から外向き。小さいながらも綺麗な砂浜と磯場がある。あそこで泳げばいい。
だれもいないのだから...まあさすがに素っ裸、というわけにはいかないが、パンツ一枚で泳いで、帰りはパンツ無しでズボンを履けばいいじゃないか。
そういう誘惑と戦いながら、それでも僕は団子を握る。
しかし、帰り際には泳いでやる、という決意が漲ってきている。
時間は過ぎる。浮きを永易浮き純正Sサイズに戻したり、団子を持たせるために攻め深場を追加したり、少しずつ変化を加えてみるが、どうにも...
コーンを刺していた。
潮は止まっている。
団子が割れてから少し間を開けて、そして仕掛けを回収...ん?げ、居食いだ。
コーンで居食いするなよなぁ...これ、絶対外れるぞ...
案の定、浮きが見えるくらいまで浮かせたときに針が外れた。
こういう状況を招くのは、何かしら設定がおかしいのだろうけれど、暑さですでにボーっとしている僕には難しいことを考えるゆとりはなかった。
13時半。ポカリはもうゴクゴクっと飲んだらすぐに無くなってしまいそうな量しか残っていない。
立ち上がるとふらふらする。さっきから少し頭が痛い。
やはり歳をとったのか。それよりなにより、日頃冷房の効いたところで過ごしているから、暑さに対して弱くなっているのだろうか。
昔は真夏でも飲まず食わずで過ごせていたのになぁ。
しかし、それにしても「アジィ」。
耐えに耐えて、小振りなチヌをフナムシでもう一枚追加。
このころ、アタリが他にも出ていたのだけれど、どうにもうまく合わなかった。
そのアタリもすぐに途絶え、泳ごう、と思っていた砂浜に向けて素潜りで遊ぼうとしているらしいカップルがやってきて、帰りにパンツ一枚で泳いでやろう、という彼のささやかな夢は打ち砕かれた。
14時半。竿を振り始めてまだ6時間も経過していないが、とうとうポカリが空になり、そして彼の情熱は蒸発した。
「もう限界だってば。」
荷物を片付けながら彼が残した最期の独り言だった。

車を出し、最初の自動販売機でアクエリアス500mlを買って一気に飲み干す。
まったく水分が足りない。
いつものコンビニでリアルタンクとかいうリアルゴールドの大きいサイズのような炭酸飲料を買う。ビタミンやら糖分やら補給した方がいいよ、と身体が言っている。
鮭のおにぎりと、塩のきいたお菓子を買って、これらを貪りながらエアコンを効かせた車で家に向かうのだった。
次から、倍は飲み物を買っていこう。
今年も最下位争いをしている我らがカープ。
少し前だったら、こんな成績で、かつもう消化試合とも言える時期に来てしまうと、広島市民球場はガラガラだったのではないか?と思う。
久しぶりに”野球を見るために”広島市民球場に来た。野球を見るために、と言ったのは、ちょうど一月ほど前に「2007夏 広島から」を聴きに行っているからだ。
満員の市民球場。さださんも言っていたけれど、これくらいいつもスタンドが人で埋まっていると、選手もやる気が違うだろうなぁ。
・・・が、3塁側と2階席には空席が目立つものの、その他外野席含めて殆ど席が埋まっている。
今年のカープは...いや、カープファンはノリが違う。球団自体もファンサービスに力を入れているし、球場問題でファンの関心も高くなっている。
それに、先発は”男”黒田。おまけに、つい先日、前田が2000本安打を達成したばかり。この日は入場者全員に祈念ポスターの配布もあった。
なるほど、条件が重なった訳だな。
本当は、どうせなら外野席で燃えたかったのだけれど、今回は1塁側内野席だ。
黒田も本調子でなく、ベイスターズ先発のホセロもストライクが入らない。
3連続フォアボールで満塁のところに梵の人生発の満塁ホームラン。初回から点を取られた黒田だったけれど、ヒットは打てなくても点が入って、少々締まらない試合ではあったものの、緊迫感をもって観戦できた。
カープは間違いなく広島の宝。僕ももっと応援に来よう。
さて、カープ観戦後、連れと一緒にお好み焼きを食べて、そして帰宅。家に着いたのは23時半ころ。
辛いなぁ。
夜遅いので庭のヨド物置から釣り道具を引っ張り出すのも気が引ける。
「まぁええか。朝、普通に起きて釣りに行こう。」
普通、というと6時。寝るのが遅くなったため、これでも朝は眠たかったのだけれど、体内時計を業務用に切り替えておくと、自然に6時前に目が覚める。
6時のアラームを待ってから起き出す。
身支度をして、とりあえず大地(犬)の散歩。
なにせヨド物置へは、大地のハウスの前を通らないと辿り着けない。
大地の方は、朝、ほぼ決まったような時間に僕が顔を出すわけだから、それはもう朝の散歩だと思って、目を丸く開いて、首を少しかしげて、期待感にワクワクしているのを絵に描いたような姿で待っている。
これを無視するほど僕も無神経ではないので、諦めて散歩に先に行くことにしていたのだ。
散歩から帰って、車に荷物を積み込む。
家を出たのはもう7時過ぎ。
アヲハタコーンを切らしていたので、近所の24時間スーパーへ行って、コーンや飲み物を買う。前回の経験もあるので、500mlのポカリを2本と、もう一本ミネラルウォーターを買っておく。
周防大島へ。
大島に着いたころにはすでに9時。
あまり遠くまで行くととんでもない時間になりそうなので、今回は手軽なポイントで気楽に竿を振ろう。
一昨年、永易さんらが来たときに竿を出した護岸の様子を見る。
誰もいない。
ふと、正面の波止を見ると、団子師が2人。あそこは昔よく行っていた場所だ。
たまには団子師が団子を投げているところで竿を出すのもいいか、と考えて、この2人の間に入れて貰った。
充分なスペースもあったし、何より、こうして間に入っておけば、隣に底カゴサビキの釣り人が来ることがないはず。落ち着いて釣りができそうだ。
団子作り。
紀州マッハと、同攻め深場を1:2程度にブレンド。細挽きサナギを幾分多めに。そして押し麦。アミエビは気持ちだけ。
最近竿を出していたポイントに比べると、ここは水深が浅い。満潮時で竿1.5本程度だろう。エサ取りも厳しくないため、いつまで経っても崩れない団子...という展開が怖い。このため、崩れやすく調整しやすい設定にしたいところ。
攻め深場を入れなくてもいいのだけれど、そこは根性のない僕のこと。握りやすくしたいという心が見え隠れするな。
左右両側の釣り師とも、ぬか団子(マッハ含む)ではないかも知れない。
ちら、っと見てみると、スカリは入っていないようだ。
さて、どんなもんかな。
棚取りに4投ほど。少し詰め気味で様子を見てみるが、案の定、オキアミは盗られない。
2時間ほどいきなり経過させてしまう。
なぜなら、まったく何も触らないから。
そのころからようやくサシエが盗られ始め、盗られ始めると、ひたすら盗られ始める。
左右の釣り師の状況を見ていると、やたらアワセが入っていて、草フグが針について上がってきている。
まぁそういうことなのだろうな。
さらに1時間半経過。ちょうど干潮の潮止まり前の時合い。
はっきりした団子アタリがようやく見え始めた。
と...永易浮きが入る...アワセ!
・・・え...
拍子抜けするほど軽い。浮いてきたのは20cmを少し超える程度の小チヌ。やれやれ。やっぱりそういうことになるのかな。ここだと。
・・・続かない。
正直、続く、とタカを括っていた。う〜ん。やっぱ下手だな。
潮止まりになるとまた餌が残る。
ポカリはようやく一本が空になった。
日差しはキツイ。しかし海を渡ってくる風は、もう秋のそれだ。ポロシャツの中を風が通過して、体温をそっと奪い去っていく。
気持ちいいな。
もう、海に飛び込みたい、という衝動も起こらない。秋なんだなぁ。
気がつくと、左側の釣り師は帰り支度。
そこへ今度は賑やかな集団がやってきて、波止から外向きに竿を出し始めた。ボラを釣ったりなんだりで大騒ぎだ。
そして、今度は港内向きに地元の若い釣り師。
あ...サビキだ。
丁度波止が折れ曲がっている付近に釣り座を構えていたため、曲がり部を挟んでサビキ師と竿を並べる形になった。
ちょっと嫌だな、と思っていると、思った通り、底カゴサビキが僕の団子投点近くに飛んできた。やれやれ。
少しずつ投点をずらしていくことにしよう。
下げ潮が動き始めたタイミングで、ようやく2枚目。
これは気分転換に寝浮きをつけていたとき。もたれるように寝浮きが立ち、じわりとしずんだところにアワセを入れた。これは28cm。魚玉をサシエにしていた。
そしてやはりこの一枚でアタリが止まる。
あとはひたすら草フグっぽいアタリだ。魚玉をつけると、確実に針が持って行かれる。
さらに2時間ほど粘って、またそれらしいアタリが出たのだけれど、アワセを入れた瞬間に竿先が跳ね上がった。タカ切れだ。
浮き取りパラソルで永易浮きを回収。道糸もついて帰ってきたので、仕掛け全体を回収。
浮き止め糸を結び直して、サルカンに道糸をつないで再開。
コーンも盗られたりしていたのだけれど、このころにはコーンは触られなくなっている。
オキアミがときどき残ったりして、お、雰囲気?と思うと、やはりネリエはフグにやられる。
では、と、波止を走るフナムシをピシャリと叩いて捕らえ、これを針に刺したが反応がない。しばらく放っておいてみたら、浮きに反応が出ないまま餌が無くなっていた。
時間は14時半。
実は、今日もちょっとしたおとぼけをやらかしている。
食べ物を買ってくるのを忘れた。しかし、いつもロッドケースや荷物を入れているバッカンにカロリーメイトが転がっているから、それでも安心していたのだけれど、こういうときに限って、どこを探ってもカロリーメイトが出てこない。
食べるものがないと、余計に空腹感が募る。
もう...実は11時頃から空腹と戦っているのだ。
ええい、もうやめた。
毎回毎回、何かと理由をつけての短時間釣行。今日も実質5時間ほどだろうか。いやいや。まぁそれもいいか。
気楽に、楽しめるように楽しむ。
そういえば太刀魚食べたいなぁ。週末出勤が続くからもう今年はシーズン初旬の良型は無理かなぁ。
照りつける日差しと、吹き抜ける涼風。何にしてもいい季節だね。
小さいけれど、塩焼きだね。
いつまで経っても秋の気配が感じられない。
いや、「ああ、朝は涼しくなってきたなぁ。」などと大地君の散歩のときに思ったとしても、出勤するころにはもう「あぢぃ」と独り言を言いながらダラダラ歩く状態になっている。
日本は常夏になってしまうのだろうか?などと、バカなことを考えてしまったり。
さて、そんな夏の終わり。竹下さん(「黒鯛団子釣り名人への道」)が来る。
久しぶりの安芸さん(「広島湾のチヌ釣り」)からのメールにそう書かれている。
9月の22日と23日。釣りはこの二日間、ということでのお誘いなのだけれど、22日土曜は出勤。したがって、23日だけご一緒させてもらうこととした。
22日の夕方。早めに仕事を切り上げて、帰りの電車。途中の駅で降りて、15分ほど歩いて釣具屋に到着。
久しぶりに釣具屋の中でゆっくりとあれこれ見ながら時間を潰す。しかし、困ったことに、どうにも釣り具への興味が薄れてきているようで、そろそろ間が持たないなぁ、と思っていた頃、久しぶりの顔が見えた。
「久しぶりです。」
この日一日の釣りでかなり疲れている雰囲気だけれど、なんだか嬉しそうな竹下さんだ。
どうやら、この日は爆釣したらしい。
安芸さんとも久しぶりだ。
ここでの再会は、当然翌日の餌などを仕入れる目的。
僕が北灘釣行ですなちゃんから教えて貰っている掛かり釣り用団子ブレンドの拙い知識...そう、すなちゃんに言わせると、日本一飲み込みの悪い男だからなぁ...を多少なりとも利用しようと、ここで待ち合わせたのだ。
が、結局のところ、安芸さんと竹下さんは、安芸さんの紀州釣り団子(糠、砂ベース)にフカセ用の集魚材を混ぜることに決めたらしく、すなちゃんから教わっている北灘ブレンドは結局僕だけが使うことになった。
ただ、どうも北灘で使っているものと同じ団子材のようなものなのだけれど、明らかに違う、という団子材しかなくて、やむなくこれで妥協した。
さて、どうするかな。
リールはチヌジャッカー、バイキングST44ともに、北灘用の2号のラインが巻いている。さすがに広島湾の筏で2号はないだろうから、Lハード1.5号を購入。針も3号を買っておく。
安芸さんの車で結局家まで送ってもらい、幸か不幸か渋滞気味で時間がたっぷりあり、車中で竹下さんの近況など聞きなどを聞く。釣りだけでなく、仕事においても、力のある人の話には感心する。
あけて翌日。朝の4時起床。・・・辛い。
ここのところ釣りに行く、といっても、平気な顔で5時半とか6時ころに起き出して、竿を出す頃には9時近い、というとても釣り師とは思えない状況が続いているので、この普通の釣り師の起床時間(の中でも遅い方)が非常に堪える。
それにも耐えて準備をして、4時50分ころに安芸さんの車が自宅前に停まる。
ふ、と、嫌な予感がした。前にもそういうことがあったよなぁ。やめてくれよぉ〜...
慌てて玄関に...
♪ピンポーン
あっちゃぁ〜
2階からドタドタ、とう足音が聞こえて、「大丈夫?」と女房の声。
あぁあ、絶対大丈夫じゃないぞ。帰ってから大変だ。
どっちだぁ、こんな朝っぱらからチャイムならしたのは。携帯鳴らしてくれよなぁ〜
ちなみに想像通り、帰ってからの女房の攻撃は、三日三晩続いたそうな。
さて、渡船場。
相当数の釣り師が来ている。ほとんどフカセだ。そういえば今年は広島湾にフカセに出ていないなぁ。
筏釣り客は3組。
今回は思う筏に乗れない、と聞いていたが、さてさてどこに乗せてもらえるのか?
・・・ん?こんなところにあがるの?
位置的にはヤクショウ鼻の南東あたりで、大野瀬戸の大野より1/3あたりか。海の真ん中にポツリと浮かんだ筏、という感じだ。
こんなところにチヌがまとまった数いるのだろうか?このあたりの底は砂もしくは砂泥だと思う。昔、ゴムボートを浮かべてカレイ狙いをしたことがあるが、そんな感じだった。
水深は15〜18mくらいだろうか。
カレイの筏釣りでは、牡蠣筏にコンパネを一枚自分で敷いてその上にあがるのだけれど、この筏はコンパネが8枚ほど固定されている。当然、牡蠣もぶら下がっていない。筏釣り専用、ということかな。
一番大野側に竹下さん、真ん中に安芸さん、宮島側に僕。
団子を作る。すなちゃんに教わっている通りにね。
がまチヌ筏中硬1.2mは、筏では少し短い。掛かり釣りより筏釣りの方が水面からの高さが高くなるので、1.4mくらいがいいのかな。
バイキングをセットして、針は3号。
オキアミを刺して軽く団子を握り、そっと海面に落とす。ポチャっと僅かに海水を跳ね返しながら、団子は沈んでいく。
さて、「団子ツツキ」は居るだろうか?何も居ない、というのだけは勘弁してくれよぉ。
安芸さんはこの日、バイキング筏44を買ってきている。これまでも筏釣りは何度かやられているのだけれど、スピニングリールを使っていたとのこと。両軸か片軸のリールが使いやすいと思いますよ、と少し前に話をしていたのだ。
僕の説明が悪くて、使い方がよく分からなかったようで、フリーにしたリールを指で押さえずにアワセを入れたりと、悪戦苦闘されていた。
都度都度、説明していたのだけれど、それにしてもバックラッシュが多い。
う〜ん...何故??
「あ!安芸さん、それ右巻きで使ってるんでしたよね。それ、ラインガードの向きを直してないんじゃないですか?」
バイキングはST44にしても筏44にしても、スプールの周縁の竿側に、ラインが外にこぼれないようにするラインガード(径の太い針金みたいなもの)がついている。これが逆に周縁の竿と反対側を覆っているのだ。ラインは竿側から出て行くので、少しラインが緩むと、容易にラインがスプールから外にこぼれてバックラッシュ状態になってしまうのだ。
しかし困った。これはドライバーがないと直せない。
しばらくしてフト安芸さんの方を見てみると、ラインガードの向きが直っている。
「え?ドライバー持ってきてるんですか?」
「え、そうだよ。これだけ荷物が多いからねぇ。ははは。」
まさに備えあれば憂いなし、だ。
竹下さんは最初は長竿で紀州釣りスタイル。
その後、少し長めの筏竿を安芸さんに借りて、リールは持参してきた鳴門リールをセット。
ギア比1:1の鳴門リールだと大変だろう、と思うのだけれど、僕が予備で持ってきているチヌジャッカーは2号ラインを巻いたまま。
竹下さんも鳴門リールでやる、と言われるので、これはそのまま様子を見ることに。

心配なのは空模様。
雨は免れないだろうな、という予報と、僕自身の予測もあって、当然レインウェアを持ってきている。
筏の上には屋根などないし、ビーチパラソル立てが用意してあるなどとは知らなかったため、ビーチパラソルも持ってきていない。逃げ場もないので降り出したら濡れるがまま、ということになる。
最初のまとまった雨は午前中。
降り出したな、と思ったら、もう阿多田島や、その手前の可部島、宮島あたりも雨に包まれ靄って見える。
雨粒が大きくなり始めた。
レインウェアを出して着込む。
安芸さんもレインウェアを着ているが、竹下さんはそのままだ。
どうしたの?と聞くと、レインウェアを安芸さんの家に忘れてきたとのこと。
さすがいい男だけのことはあって、ずぶ濡れだ。
・・・が、この程度はずぶ濡れとは言わない、ということが、もう少しあとで解ることになるのだけれどね。
この雨は20〜30分ほどであがり、今度は日が照りつけ始めた。
レインウェアを脱いで、乾いたコンパネの上に広げて乾かしておく。
さて、海の中の状況なのだけれど、これがなんともしゃきっとしない。
団子ツツキは多い。しかしチヌアタリではない。
着底直後の団子ツツキはコノシロ。これは時折針にも掛かる。
針に掛かったコノシロはいつもなら当然海にお帰りいただくのだけれど、安芸さんと一緒、となると、安易にそんなことはできない。
安芸さん、当然要る!とのこと。それに異論はない。今夜は安芸さんの家で菩薩さんの料理を味わうことになっているのだけれど、ここではコノシロも驚くほど旨い。珍味、といっていいと思うのだけれど、コノシロのスナズリの刺身などは、他所では味わえない一品だ。
その他は、草フグか。
団子ツツキもパワーが無くて、極軽く握り、しかも団子から抜けやすいように団子の外側近くにサシエを入れているにもかかわらず、いつまで経ってもサシエが抜けない。
筏釣りは初めての竹下さん。この状況ではしんどいだろうなぁ、と思っていたら、何のことはない。
気がつけばチヌらしい魚とやり取りをしている。

さすがだなぁ。
その後、僕も夏チヌサイズを1枚、安芸さんも夏チヌサイズを1枚。
このサイズならもっと激しく当たってきてもいいのだけれど、どうにもチヌアタリが続かない...のか、チヌアタリを捉えられないのかよく分からない。そもそも筏釣りは初心者レベルなのだからね。
確かに、3人が一枚ずつ釣った時間帯は、団子アタリにカツンというアタリが出ていて、チヌが寄っていた感じはあった。しかし、その後はまたその雰囲気も消えてしまっている。
雨は時折ぱらつくが、レインウェアを出すほどの事はない。中途半端に濡らすと面倒なので、畳んで仕舞っておく。
昼を回り、おそらく下げ初めの時合いに入ったのだろう。東に流れていた潮が西、つまり筏の下方向に流れ始めている。
再び竹下さんが口火を切る。
団子周りはいい感じになってきている。
ガツンという(たぶん)明らかなチヌの団子アタリが出ていて、上手くこのタイミングでサシエを抜いてやれば喰いそうな感じ。
ガツン...そしてサシエが抜ける。
跳ね上がった穂先分、僅かに穂先を送る。
僅かだけれど、クンッと竿先を押さえ込むアタリ。(これだよな。) アワセ!
ガツンっと竿を持つ左手に重量感が伝わってきた。よっしゃ!(ボラ、ってことないだろうなぁ)
元気に突っ込んでくれる。短竿でのやり取りは、穂先を海面に突っ込んで、場合によってはリールごと竿を海面に突っ込んでこそ、見た目に迫力があるものだ...と、北灘ですなちゃんのやり取りをみて悟っている。
若干オーバーアクション気味に、竿先を海面に突っ込まさせつつ、時にラインを送りつつ、チヌを浮かせる。そう、ちゃんとチヌだった。
玉網ですくい取る。よし。
これは42cm。
しかし、この一枚の写真はない。あとで撮ろう、と思ったのが失敗だった。
安芸さんももう一枚釣り、みんな仲良く2枚ずつ、となり、納竿間近となったころ、また空から強烈なプレッシャーを感じ始めた。本降りになりそうだ。
海の方は先の一枚以来、今にも釣れそうな雰囲気が続いてる。雨を気にしながらも、釣りに集中。
そしてそれなりにまとまった雨に。
安芸さんはすでにレインウェアを着ている。
僕は、せっかく乾いたレインウェア...そして、もうすぐ納竿、という状況から、レインウェアを出すのを少し渋った、というところもあるし、すでにズボンが結構濡れてしまっている、ということもあって、ますます暗くなる空を見ながらも、結局レインウェアを出さなかった。
そして竿を畳み、バッカンを洗ったりしているときだった。
いきなりの土砂降り。そう、これこそが土砂降りだ!と言わんばかりの土砂降りだ。大きな雨粒が大量に、しかも風も伴い叩き付けるように降ってくる。
スコール、といったらいいかも知れない。
この段階でレインウェアを着る、ということも考えたのだけれど、さらにズボンが濡れているため、これはやめておいた。
なぜなら着替えがない。
自分の車(エクストレイル)であれば、少々濡れていても気にならないのだけれど、安芸さんのクレスタでは...シートを水浸しにする訳にはいかない。
いまさらレインウェアを着れば、ズボンもレインウェア(のズボン)も、両方びしょ濡れにしてしまう。
幸いこのままならレインウェアは完全に乾いているので、車に乗る前にレインウェアのズボンに履き替えれば、パンツが少々濡れていても車を湿らすことはないだろう。
雨は激しさを増す。袖口から水がしたたり落ちる、というより流れ落ちるほど濡れている。
おまけに風もあり、寒い。風邪を引いてしまいそうだ。
当然、デジカメなど取り出せるような状態ではない。
ふと、これほどびしょ濡れになったのはいつ以来だろう?と考えてみる。
ここのところ、雨が降りそうなら釣りに行かない。また、遠征に行くと雨が降らない、という状況が続いていたので、まとまった雨の中、竿を出した記憶がない。
それに、少々の雨ではこれほど濡れない。これではまるで海に落ちたようだ...あ、そうか。そうだな。これは2002年6月にBa2さんと友波さんと大島で竿を出したとき、海に落ちて、デジカメと携帯を臨終させたとき以来なんだな。
あのときも大変だったなぁ。車のシートに友波さんにもらったビニールシートを敷いて、ズボンを脱いで...でも着替えがないからヒップガードを後ろ前反対につけて帰った。ちょっと見た目、短パンに見えないかなぁ、と思ったのだけれど、今思い出しても実に変態的な格好だった。
そんな過去の光景を頭の中に思い返しながら、渡船は港へ向かう。風が当たって寒い。
車を屋根の下に入れて、荷物を積み込み。ズボンを脱いで(パンツは脱いでいない。念のため。)、レインウェアのズボンを履く。上はTシャツを一枚持ってきていたので問題ない。
問題なのは竹下さんだ。着替えがない。
ビニールシートをシートにおいて、なんとか座れるようにする。
そうなんだよなぁ。竹下さんが来るときは、結構台風が来たり、雨風が強かったりするんだよなぁ。
嵐を呼ぶ男。そうなのかも知れない。まぁ楽しい嵐だからいいけれどね。
夜。例によって焼酎一本と自分が飲む炭酸飲料を買って、雨の中安芸家に向かう。
竹下さんはかなりお疲れで眠そうだ。
菩薩さんは料理中。
そして、料理が次々に出てくる。チヌの刺身は炙ってある。そして、この日歓迎された外道であった良型のアジはタタキに。コノシロは刺身。当然スナズリの刺身もある。どれも旨い。同じ刺身、といっても、どれも一工夫されていて、実に旨い。
僕の釣ったチヌの半身はこの刺身。そして残りの半身は尾頭付きで唐揚げになって出てきた。これには驚いた。これだけ大きなもの揚げるとは。聞けば、半身ずつ揚げた、とのこと。いやはや。
おまけに味にも驚いた。一口食べると、次を口が要求するようなおいしさだ。う〜む。
さらに、チヌの昆布締め。シャリの上にすだちを薄く切ったものを載せて、これをチヌの昆布締めで巻いたお寿司。う〜む。唸りっぱなしだ。昆布締めにはすだちが実によく似合う。
そうそう、アジの塩焼きも。思わず無口になってしまうほど、皆必死でつついていた。
僕がHPを始めるきっかけとなった二人。気心の知れた仲間と美味しい料理をつつく時間は、あっという間に過ぎていく。
「じゃ、竹下さん。またどっかで会いましょう。」そう、どこで会うか解らないんだよね、この人とは。
少しばかり不完全燃焼だったこの日の釣り。安芸さんには、また筏、ご一緒させてくださいね、と伝えて、また、雨の中を家に向かった。
今年の夏の雨は、なんだか本当にスコールのように降るなぁ。気候が変わっちまったのかなぁ。
さすがに朝晩の気温はぐっと下がってきて、もう秋、といってもいいだろうね。
日頃エアコンの効いたところにいるので、いつも夏がとても短く感じられるのだけれど、今年は長い夏になった。
釣行回数激減の夏だったのだけれど、それでもこれほど夏の暑さが骨身に染みているのだものね。
さて、話はいきなりに変わるのだけれど、僕は基本的に餌釣り派だ。
開高健さんのように、疑似餌で魚と知恵比べすることに面白みを見いだす釣り師も沢山いて、それはそれで解るような気がするのだけれど、僕は自然にお魚さんに餌を食べてもらって、そのお魚さんを僕が食べる、というヒネリのない釣りが好きなのだ。
もっとも、フカセにしても紀州釣りにしても、そしてきっと投げ釣りなんかにしてもそうだと思うのだけれど、釣りたいお魚と、あまり歓迎したくないお魚が同居している海に向かうと、ヒネリのない釣りのはずが、ヒネリまくらないと釣れない、ということで、結局、お魚との知恵比べになる。
なぜいきなりこのような話をするのか、というと、今回、僕からもっとも縁遠いと思われる釣りに行ってみたからなのだ。
エギング。
僕がエギングに辿り着くには大きくは3つの障壁がある。
まず、疑似餌、ルアー、当然エギも含め、先述したように、あまり熱意をもって取り組めない。
というより、釣れる、という確信が持てないという、ルアー釣り初心者の陥りやすい悪循環にすらとっぷり浸かっている。
次に、瀬戸内で、しかもこの時期、という前提になるのだけれど、大きいイカが居ない、という点。
僕はアオリイカに関する知識はほぼ皆無なのだけれど、聞くところによると、イカは一年しか生きられないとか。春に産卵して、秋に沢山食べて、沢山釣れて、春にもっとも大きくなって、ノッコミをまた釣る。
つまり、秋は人生...いや、イカ生の半分程度しか過ぎていなくて、広島界隈ではどうにも胴長が大きくて15cmくらいのような雰囲気がある。
ひょっとすると大きなものも居るのかも知れないけれど、僕の周りのエギンガーが釣っているイカはその程度のようだ。
僕は基本的に大物に恵まれない人生を送っているのだけれど、基本的には大きな魚が好きだし、できれば大きな魚を釣りたい、と思っている。最近はいつものような小型が釣れ始めると、ワザと設定を変えてみたりもしている。なかなか効を奏さないが。
つまり、そういう気持ちだけは大物志向の僕としては、どうやってもその程度のサイズにしかならないこの時期のアオリイカにはあまり興味が湧かないのだ。
そして、これが最大の障壁なのだけれど、僕の趣味は魚釣りなのであって、決して魚介類釣りではない。つまりはイカは魚ではないので、やはり興味が湧かないのだ。
ああ、もう一つあった。タコなら食べたい一心で釣りたい、という気持ちがあるけれど、イカは、如何に味が絶品と言われるアオリイカであっても、それほどの気持ちになれない。イカの刺身よりは魚の刺身の方がいい。
と、これほど文句を並べながら、何故エギングに行ったか。
それは、経験もしたことがないのに、好きだ嫌いだと声に出すのは格好悪い、からである。
あれほど、沢山の釣り人を魅了するエギングだ。きっと僕の知らないような楽しさがあるはず、とも思った。それで仮に楽しければ、それはそれでぶつぶつ言わずにエギンガーの仲間入りをすればいい、とも思った。
最近、いろいろな意味で、既成の自分の枠から半歩でもはみ出してみたい、と思っていることの現れかも知れない。
ご多分に漏れず、うちの会社の釣り仲間は、ほとんどエギンガーになっている。
端島、という島がある。岩国港から沖合に22km。連絡船「すいせい」で1時間ほど。
ここに行く、と、会社の釣り仲間が行っていて、後輩のNが誘ってくれた。
前日の金曜が東京出張で、最終の飛行機で帰ってくることになっていたため、何れにしても土曜は朝早くから釣りに行く気になれなかったところ、船の関係で、僕が行くとすれば6時40分ころに迎えに来てくれる、という。
ちょうどいいな、という思いもあった。
Aさん。ときどき釣りに一緒に行っていて、ここにも登場しているのだけれど、彼は新しい釣りにもすぐに乗って、そして道具を買う。気がつくと、似たような道具を幾つも持っている、という特性がある。
エギングロッドなども3セットほど持っている、という話を聞いていたので、竿、リール(PEライン付き)、さらにエギも含めて、すべて借りることにした。一応、小型のクーラだけ持って行く。
ほぼ時間通りに迎えに来てくれて、岩国港へ。久しぶりにターミナルに入る。
この岩国港新港界隈は、僕がチヌ釣りの、とくに紀州釣りの基本を勉強した、とても思いで深い場所。どれだけ通ったことか。当然、それだけ通えば、その辺でできない用事でトイレに行かないといけない自体にも多々見舞われて、その都度、このターミナルのトイレを借りていた。
女房(結婚する前を含む)と一緒に釣りに来ても、ここがあるので安心だった。
切符を買う。片道1730円。「高ぁ〜」声が出る。
往復で約3500円。それだけ出すなら、渡船に乗ればぁ、とも思ったのだけれど、まぁいい。
すいせいは心地よく走る。デッキへ出れられないのが難点だけれど。
黒島に寄って、次は端島。
それなりの数の釣り人が、タラップを降りて、思い思いに散らばっていく。
泊まり込みでくる人も多いようで、皆、大荷物だ。
それに引き替え、僕は借りたエギングロッドと、クーラを持ってちゃらちゃらと歩いていく。
まずは護岸で簡単にレクチャーを受け、ともかく始めてみる。
バス釣りなどをやる人は、ロッドの降り方がその基本で実にスムーズだ。肘だけでロッドを振っている。一緒にいった最年少のTがそうだった。
僕は投げられればいい、という基本スタンスなので、腰も肩も使って、投げ釣りの要領で投げる。
風でPEラインが舞い上がる。海面に押さえつけようと思っても、竿が短いので海面まで届かない。
う〜ん、不便だ。飛距離だけなら磯竿を使った方がよほど稼げる。だがアクションがつけられないのだろうな。
それと、どう考えてもこの風で、PEラインを使う意味が分からない。確かに伸縮性がないため、アタリは取りやすいのだろうけれど、エギが沈下しても、PEは海中に浮遊するため、エギとロッドが一直線になりにくいように思う。少なくともPEが馴染むまでしばらく待たないといけない。
また、ジギングの場合のジグと違い、エギ自体も軽いから余計にやりにくい。
僕なら1.5号くらいのフロロカーボンラインを通しで使うと思うのだけれどなぁ。比重があって馴染みやすいし、直線性も高いし、値段も安いし。それにどうせイカも小さいんだし。
やむなく、投げた後、空中に浮いたPEを引き寄せる。
一人で適当にやっていると、Nさん(後輩のNでなく、先輩のNさん。以降、”さん”の有無で区別する。)が手招きをしている。Nさんのいる波止まで行ってみると、「おお!釣れたんだ!」
これがアオリイカか。やはりウルトラセブンに出てくる宇宙人のような顔をしているなぁ。
ここで更に少しレクチャーを受けていると、足下でシャクった直後、エギに重量が乗ってきた。あげてみると、これまた小さなアオリイカ。ともかく第1号ではあるが...よくあるパターンで墨を吐いた。それも僕の方じゃなくてNさんの方へ。海の中である程度吐いていたから、もう大丈夫かと思ったのだけれど。「おいおい、勘弁してくれぇよぉ」とNさん。
「小さいっすねぇ」
「おお、小さいのぉ」
「逃がしますね」
などといいながらイカをエギに引っかけたまま海面上をブラブラさせていたら、海に落ちた。
これも秋、なのだけれど、風が北東風になっている。爽やかで気持ちはいいのだけれど、少々風が強く、やりにくい。
しかも、イカは続かない。
Nさんは、いつの間にか島の裏側のゴロタ浜に移動していて、Aさんに連絡を入れてきた。「こっちは風、当たらんよ」と。
Aさんと一緒に南側のゴロタ浜へ移動する。島の縦断は5分ほどの道のり。
確かに風があまり当たっていない。海も綺麗で気持ちがいい。しかし、ゴロタ浜はどうみても浅そうだ。藻の帯の向こうで2〜2.5ヒロか。
こんなところで釣れるのかな?
ともかく、Aさんと浜の東端の磯場の際まで行ってみる。そこから、浜の中央に向けて移動しながら探ってみよう。
釣れない。
そして、エギが根掛かりする。1度目は外れたのだけれど、2度目でエギを失う。
気がつくとAさんは随分西に移動している。僕はエギを持っていない。Aさんに追いついて別のエギを借りようと思うが、なかなか追いつかない。
途中でNが竿を振っている場所にたどり着く。様子を聞いてみると、「釣れてますよぉ」とのこと。
今度はNにエギを借りて、Nの隣でエギを投げてみる。
が、釣れそうな感じがしない。
僕の様子を見かねたNが、ここでレクチャーをしてくれた。
シャクり方が全然違っていたようだ。なるほど。あんなに早く、激しく動かすのか。
レクチャーを受けて、直後のことだった。
シャクった後、エギを沈めていると、クンっと生命反応がロッドに伝わってきた。
グッっとアワセを入れ、竿を立てたまま巻いてくる。確かに若干は引いているが、魚とやり取りするような興奮はない。やはりもっと大きくなって、ジェット噴射でドラグを鳴らすぐらいにならないとやり取りは楽しめないのかな。
墨を吐きながら、やっとキープサイズのアオリイカを釣り上げた。

Nにシメ方を教わって(というよりシメてもらて)、クーラに放り込む。
この後、もう1ッパイ、掛かった...ような感じになった。重量感が乗ってきた。グンっと引っ張られる。が、こちらがアワセたところ、すっぽ抜け。が、エギを止めるとまた抱きついてくる。アワセると、墨を吐いて、また外れる。が、また抱きついてくる。これを4度ほどやって、結局掛からなかった。
時合いだったのだろう。
これより後は、まったく反応無し。
浜を磯をと歩き回るNさんはキープサイズを増やしていき、最期には10ハイまで到達していた。
僕も帰り間際に磯場に一応行っては見たのだけれど、これは純、フカセ師的観点からの観察。
エギも投げてみたけれど、これも水深測定と潮の流れを見たかったから。
スパイクシューズを履いていなかったので、磯で釣りをする気にはあまりなれなかった。
いきなり話が飛んでいるのだけれど、釣れないときの風景はこんな感じだから、結局、照りつける、いまだ夏の余韻を引きずった日差しに照りつけられて、疲弊していく時間を過ごした。エギを投げることに、やはりそれほど執着できなかった、という事実が背景にはあるのだけれど。

沢山釣れていれば...ひょっとするともう少し違った感想を持てたかも知れないのだけれど、結局のところ、「ふぅ、どうせならあそこの磯でフカセやればよかった。」と素直に思ったのだった。
エギをフローティングベストのポケットに忍ばせておいて、一時だけエギを投げるフカセ師、紀州釣り師もいる。僕としては、あれが一番かなぁ、と思う。一日、エギだけを海に放り続ける作業は、正直、少々退屈な感じがした。
決して面白くない、といっている訳ではなくて、僕個人の価値観、好みからは、やはり餌を使った魚釣りの方に軍配が上がっているだけだ。エギングに対する障壁は、今回は残念ながら打破出来なかったかな。
さて、1ハイ分けて貰って、2ハイを持ち帰った。
1ハイはイカ好きの女房の母親に献上して、もう1杯は食べてみた。
刺身。
女房は箸を付けようとしない。あ、そういえば...女房はイカの刺身は苦手だったのだった。
娘も、チヌの刺身の方がいい、と言っている。
あの、ネチョッとした食感がね。僕も苦手なんだよね。誰も箸を進めようとしないから、仕方なく、殆ど一人で食べた。小さなイカとはいえ、結構な量があったなぁ。でっかいアオリイカなんか釣ったら、大変なことになりそうだ。
やっぱりエギングは難しい。やろうと思うまでが...
ともかく、一度やっただけではよく分からないこともあるから、そのうちもう一度やってみようかなあ、とは思っている。
暑い一日だった。
最期の夏の一日だったのかも知れないね。
