そして、南紀から


南紀の雨、南紀の風、そしてコバルトブルー


2016年2月19日、金曜日。広島市内での仕事をそそくさと?終えて、慌ててタクシーに乗る。

「広島駅新幹線口まで」

むさしの若鶏むすびを頬張りつつ、東へ。
新大阪から特急くろしおに乗り換え。そこから4時間。
相変わらず遠いけれど、6時間程かけて、ほぼ1年ぶりの紀伊勝浦へ向かう。
駅を出れば、これまた1年ぶりに丸一日掛けて秋田からやって来た岸さんと、南紀の快人、someさんの出迎えを受ける。

帰ってきたな~

一時期は毎年通っていた海。しばらく途絶えて、思い立って顔出して、竿出したのがもう一昨年の年末。そのあと、一か月ほどして、岸さんが南紀に行くとか…なら、俺も、と…
それから1年と1か月ほどが過ぎている。

徐々に歳とりつつ、色んな事情を抱えつつ、「いつも海を見ていた」、がつないだ縁を、緩やかに守っている。
今年もお互い元気に会えてよかった。
人生、何があるかは分からない。
生きれば生きるほど、そんな経験を繰り返し、人生とはそんなものだな、と理解する。
今できることは、今はやる。
保証された1年後なんてないからね。

基本、超晴れ男な僕なのだけれど、この週末の低気圧には勝てなかったようで、土曜は雨は避けられない…というレベルでなく、ニュースレベルの大荒れの予報。
僕の場合、別に南紀で竿出せなくても問題ない。
温泉ハシゴしてりゃ、それで幸せ。

しかし、仲間内で唯一、釣りの道を邁進してる岸さん…かつ、この男はちょっとMっ気あるのか、悪環境で嬉しそうにしている…としては、やっぱり釣りに行きたいんだろうなぁ~と、ちょっとドキドキしていた。
どうやって抜けようか…とか…

が、さすがに少し大人になったようで、天気予報みて釣りは諦めてくれた…かと、思った。

とりあえず、釣りに行かないなら、と、アルコール(と三ツ矢サイダー、は俺ね、)で潤しながら、1年ぶりの積もる話を夜も遅くまで続ける。in some家。
僕が着いたのが、もう23時回ってたので、結局寝たのは2時くらいかな?

・・・ゴソゴソ。
・・・ゴソゴソ。

M男が朝早くから何かしてる。付き合ってられないので、無視して寝る。
8時過ぎ、諦めて起きてみる。

someさんと話をしているようで、それはそれでよいのだが、何故か釣りの準備もしてある。

…ん?
どうすんの?行くの?
と聞くと、いや、準備しただけ。
とか、いいつつ、結局釣り道具を車に詰め込み、新宮あたりの護岸の様子を見にいく。

新宮港護岸。
やれそうだよね。チヌはいそうだなぁ。グレも出るかもね。
なんて話をしながら顔見ると、俺はやる!と書いてある。

とりあえず喫茶店でモーニング食べて、再度意思確認したら、やっぱりやるらしい。

であれば付き合うか…と、10年前なら言ってたとこだが、
じゃあ、岸さん降ろしてから、温泉行こうか。とsomeさんと僕。
だって、これから激しくなること分かってるのにね~


(雨の中、釣りの準備中のM男)

で、それでも釣るのがこの男。
腕は全国区だからね。



まぁ、僕としては、その間に温めの掛け流し温泉に1時間以上の浸かり、久しぶりに和歌山ラーメンたんぽぽでラーメン食べて、実に良い時間を過ごして、ご満悦でした。





様子見にいくと、ちょうど竿を畳んでた。



かなり雨が激しくなってたので、さすがに嫌になったのかな?と思ったら、濁り水…川水もあるのだろうけど、これが一面を覆い始めて、釣りにならなくなったから止めたらしい。
雨は理由にならんのだなぁ。

僕も昔は雨でも行ってたな。今はそこまでの「熱」を持てなくなっている。良いとか悪いとかではなくて。


一旦帰って、それから再度温泉へ。
そう、僕は温泉は一日に何度だって構わない。
(・・・もっとも、4つ梯子したら気分悪くなったことあるけれど...)

今度は露天風呂がある。雨に打たれながらの露天風呂もなかなかオツ。
1時間ほど、温泉好きの3人は会話を湯に溶かす。

晩御飯のあと、軽く部屋飲みして、翌日に備えて布団に入る。
寝付けない。う~む…


兎にも角にも、翌朝(日曜日)、4時半のアラームで布団から出て、寝不足に溜息つきながら身支度する。
今回お世話になるのは紀伊勝浦の大師丸さん。
渡船場まではクルマで10分の世界。楽でいい。

さて、風が出ている。晴天は間違いないのだけれど。
そしてウネリが…

北西風が予報通り夜間吹けば、逆にウネリが抑えられるのだそうだが、思ったほど夜中に風が吹かず、案の定、結構沖はウネリが残っているらしい。

大師丸さん。ここは感じの良い渡船だな。
船頭さんも怖くなくて丁寧だし、サポートのお兄さんもとても気を使ってくれる。
僕らのように初めての利用者は、こういうのはとても助かる。何せ勝手が分からないから。

出船。なんだか、こそばゆいような嬉しさがある。

結局、やはり外磯は無理、とのことで、太地、ツヤ島の湾内向きに3人で上がった。
崖にへばりつくような釣り座だ。

ここでも結構風が当たっている。


(爽やかな朝に、怪しいsomeさんと岸さん)

海に向かって、左から岸さん、僕、someさんの並びて竿を出す。

今回は、久しぶりに、これも既に過去の遺物だけど、がま磯グレ競技スペシャル2 1.75号を引っ張り出した。
去年の岸さんやり取りみてると、やはりアテンダー1号じゃ心もとない。

道糸1.8号、ハリス1.5号。針はグレ針5号。ウキは0号。
まずは岸さんを真似て、ハリス4ヒロ完全フカセでスタート。

・・・しかし、慣れないのでどうも落ち着かない。
直結はストロングノットで結んでいるが、これも慣れないので自信が…

結局しばらくやってから、コソコソとウキをいつものプロ山本浮きG2に変えて、ハリスは2ヒロ半、G5とG7のガン玉打って、道糸とハリスはローリングスイベルで結合、という、僕のパイロット仕掛けに変更した。
この方が安心して使えて、精神衛生上よい。

そんな仕掛け変更をしていた最中、フイに岸さんにアワセが入る!

ここまで、ダラダラとした、かつ落ち着かない当て潮で、餌は時折触られるけど…程度の釣りをしていたので驚いた。

重量感のある、楽しそうなやりとりをしているぞ~

結構良い型の様子。安心感のあるやり取りで、よく太ったグレが玉網に滑り込む。



丸々太った44センチ。
やはり、さすがだ。
2ヒロ半でいきなり食ってきたらしい。

こうなると、仕掛けを変えたことが、ちょっと後悔。
まぁいいや。

それ以降は魚の顔を見ることもなく、仕方なく早めの弁当食べて、締まらない時間が過ぎる。

この磯、日が当たらないし、風は強いし、結構しっかり着ているのだが、割と寒い。

ん?ボラ?
ボラの群れが寄ってきた。さすがに地向き湾内磯だなぁ。実にチヌっぽい。
実際、僕らのすぐ隣の釣り座では、立派なノッコミチヌが上がっていた。

さて。
ボラって、紀州釣りだと釣れるけど、フカセだと釣れないよねぇ。
なんてsomeさん言うから、フカセで沢山ボラ掛けて、非常にめんどくさい思いを多々している僕は、
「そんなことないですよ。フカセでもボラ釣れますよ。あれめんどくさいんです。」

この会話が呼び水になったな。

浮きが、妙に斜めに入る。
とりあえずアワセる。
ヌメっとした手ごたえ…やっちまった…

ゆっくりよせると、ヌボーっと寄ってくる。玉網ですくおうとすると、いきなり暴れ出す。
竿をまっすぐにして切ろうと思っても、うまく反転してくれず、ヌボーっと寄ってくる。
ああ、めんどくさい。

丸々としたボラとしばし遊んで、というか遊ばれて、無駄に疲れて、玉網が臭くなった。


そんなころ、渡船店から電話。
磯替えしよう、とのこと。もともと11時ころには沖磯に回れるだろうから、磯替えしましょうね、という渡船側の提案だったのだけれど、まだ少し早い。

岸さん以外だれもグレは釣っておらず、状況は決して良くもないので、この提案に乗ることにする。


釣り人を次々に回収して沖へ。

・・・が...


ウネリが落ちていない。

無理、との船頭さんの判断。

カツオへの渡礁を船頭さん提案してくれて、一旦カツオへ向かってみるが、底物氏がすでに入っているため釣り座も限定的で、やはりウネリがある。



やむなく、地方方向へ帰る。

我々3人に声が掛かったのは、先ほどまで竿を出していたツヤ島の表側。

元より僕は何処でもいい。

松の下、というところらしい。





潮色が先とまるで違って、雰囲気は悪くない。

さて、ここで問題発覚。

僕はこの日、広島に帰らないといけない。
16時あがりで、17時46分(だったかな)の特急に乗りたい。そんな計画だったのだけれど、この日は16時半上がりにします、とのこと。

荷物を車に積んでおけばよかったのだけれど、一旦、車でsome家まで帰って、荷物をもって、また紀伊勝浦まで出てきて...と考えると、とてもじゃないけれど間に合いそうにない。

早上がりは14時とのこと。
海の上をウロウロしたこともあって、すでに12時過ぎ。

げ、もう2時間もないじゃん。

背に腹は当然変えられないので、14時あがりでお願いして、一気に集中モードで釣りを始める。

岸さんは、さっき、サラシサラシと言っていたので、もう時間ないから遠慮せずに岸さんはサラシの出ている右側(釣りにくいかな??)に行ってもらって、手っ取り早く真ん中真正面に釣り座を構え、竿を振る。

こんなに集中して竿を振るのは久しぶり。

潮は左から緩やかに右沖へ。
岸さん釣り座のサラシに時折押されて左へ揺れるけれど、うまく流せばサラシの沖の潮筋に綺麗になじんでいく。しかも仕掛けのなじみがとてもよくて、いい感じに入っている。この潮なら、うまく撒き餌も底に入っていっているはず。

潮の感じがいいので、より集中力が増す。

兎に角、こういうときは同じ設定で何度も流さないこと。変化をもとめてどんどん浮き止めの位置を調整していく。

4ヒロちょっとから4ヒロ半くらいのタナで、サシエのオキアミがハミハミされている。
これ、グレが吸ってはいて、吸ってはいて...やってるな。

さらにシビアに浮き下を調整し、一致点を探る。

ああ、こういうの、なんとなく懐かしいなぁ。最近、ここまで細やかな釣りしてないからなぁ。

岸さんの仕掛けのような長ハリス+しぶしぶの0号浮き沈め釣り?の設定と違って、僕の仕掛けはチヌっぽい、G2浮き、ハリス2ヒロ半+ガン玉G5、G7のオーソドックスな昔風の設定なので、狙ったタナで仕掛けの張り等でサシエを持ち上げ、漂わせ、後追いの撒き餌との一致をイメージしていく感じになる。当然、ときに神経質なくらい道糸を操作して、サシエ先行を演出する。
寒の時期のようにサシエが長時間残るような時には、僕のフカセはこんな感じ。

絶対いる。

・・・プロ山元浮きの鮮やかな朱色のトップが、潮上方向に斜めに吸い込まれる。

ほぼ無意識にアワセ!

グゥワンっと、竿に重量感が伝わる。

お、乗った!

が、竿のトルクに任せて、いつも通り(チヌ釣っているときのように)、遊ばさずに浮かせると、なんだかあっという間に浮いてきた。

そんなに大きくないんだろうなぁ。30中盤くらいかな?

水面近くで反転して足元に突っ込む。

去年岸さんのやり取りを見学させてもらったので、慌てずに、竿を立てず突き出すようにして耐える。

さて、タモ入れだ。

が、僕のタモの柄。昔々、ニッシンというメーカのものを買って、それをずっと使っている。瀬戸内の磯だと、足場が低いので何の問題もないのだけれど...釣り座が高くなるこういう外海の磯だとイケナイ。

ギリギリ届いている。しかし、タモ枠に角度がほとんどない。しかも、このニッシンの古ぼけたタモの柄は、全然コシがないことがよく分った。撓んで撓んで、まったくコントロールできない。

何度もタモ枠の近くまでグレを寄せて、でも玉網側がコントロールできず、入らない。

「おいおい、バレるぞ!」と後ろで茶化し気味の声がする。

わ、分かってるわい!だって入んないんだもん。

ええい、めんどくさい。引き抜いたろか!と思ったが、それもどうかと思うので、とりあえず頑張る。

まあ、つまりはタモ入れ、へたくそなんだな...

大騒ぎしたけれど、なんとか、美しいコバルトブルーの魚体が玉網に収まる。



しかし、これ、結構大きくないか??
どうにも30中盤ってことはないなぁ。





このとき、僕のフローティングベストにいつも入っている、とてもいい加減なメジャーを当てると、43cmだった。

が、あとで渡船店で計測すると、45cmになった。

・・・どうも、このいい加減な(何かの景品かなんか)メジャー、縮んでいるんじゃなかろうか。
・・・ということは、49cmとか、48cmとかってチヌを過去にそれでもなんどか釣っているけれど、あれ、もしかして50cm超えてたんじゃなかろうか...まぁ後の祭りだ。

しかし、グレ競技SP2 1.75号。凄いな。強い。硬い。
竿のトルクで一気に魚を浮かしてしまった。おかげで小さく感じたもんなぁ。

もともと、御荘で巨チヌ(ミッシー)を釣ろうと思って買った竿だけれど、ほとんど活躍することもなく、もう10年以上??
ようやくちょっとだけ日の目を見た。

でも、この竿はこのクラスではなくて、活性期の50cmオーバとか、尾長とかに使うのがホントなんだろうね。
ともかく、やり取り下手な僕としては、今後南紀では使えそう。

まだまだ雰囲気はある。

今にも釣れそう。

・・・が、タイムアップ。14時まであと15分ちょっと。
竿を畳む。

サラシに押されて思うように流せていなかった様子の岸さんに、あとは任せよう。


迎えの渡船に、someさんと二人で乗る。someさんには申し訳なかったのだけれど、車の関係もあるので、一緒に先に上がってもらうことになった。

岸さんには残りの時間、思う存分やってもらい、僕とsomeさんは、一旦家に帰って身支度して、釣具も発送して、温泉入ってから16時半上がりの岸さんを船着きで待つ、という作戦。

3度目の温泉。

ふぅ、気持ちいい。魚も釣れたし、天気も良くなったし、温泉は気持ちいいし。南紀、最高。


予定時間よりかなり遅れて、岸さんが戻ってきた。


その後の様子を聞くと、僕らが帰ったちょっとあと、それまで右に流れていた潮が左に変わったとのこと。

途端に活性があがって、エサ取りが出だして、30cmくらいのグレを3枚?掛けたそうだ。
これはリリースして帰ってきていた。

松の下のアベレージは30cm台らしいので、この潮が本命潮なのだろうね。でも、さすが岸さん。


(渡船店で検量後の岸さんと僕のグレ)

3人で、駅近くの中華店でラーメン、チャーハン食べて、次の海を約束して、独り先に広島に帰る。

ああ、今回も楽しかった。

魚も釣れたし、天気も良くなったし、温泉は気持ちいいし...そして友は相変わらず心地よいし。南紀、最高。