広島県の進学事情~裏のページ
【広島県の中学受験事情について】
中学受験事情は各地方によってまちまちである。
主に都市部においては,中学受験を要する私立や国公立の中高一貫校が,大学進学実績という点で言えば優位である。
逆に地方の中には,「公立高校に行けなかった者が私立に行く」というところも少なくない。
広島県においては,中高一貫校が強さを見せるものの,基町や舟入をはじめとする公立中学から進学する公立高校も実績を挙げており,両者の中間に位置する地方であると言える。
広島で人気のある学校と言えば,男子御三家が広大附属,広島学院,修道であり,女子御三家は広大附属,ノートルダム清心,広島女学院である。これは今も昔も変わりない。また,県東部では広大附属福山が絶対王者として君臨している。
これらの学校に合格できれば,広島では「成功」と見なされるようである。
大学進学に関して言えば,広大附属,広大福山,広島学院が優位に立ち,次いで修道が続く。女子校は地元志向や指定校推薦での私大進学もあってか若干分が悪いが,女子校トップのND清心は難関大や医学部に強く,広島女学院は主に名門私大に強い。
これらに続く評価を得ているのが広島なぎさ(共学),広島城北(男子),安田女子(女子)あたりであるが,この辺りになると敢えて公立中学に進学し,高校で進学校と言われる高校(基町,舟入など)への合格を目指す向きもあるだろう。ただ,公立高校入試について言えば内申や自己表現をクリアする必要があるため,これまた容易ならざる道のりであることは考えておきたい。
また,最近は新興勢力として公立の中高一貫校である県立広島や市立広島中等教育も台頭している。
学費が安いことや進学実績,校風を鑑みて,学院・清心合格レベルでこちらを選ぶ受験生も少なからずいる。
唯一の欠点は両校とも立地が…ということだろうか。県広は東広島市のやや東に外れたところであり,市広は広島市北部の住宅団地の中にある。
また,公立一貫校の特殊な入試形態(適性検査+内申)ゆえ,たとえば学院○市広×ということもあり,偏差値では測れない難しさがある。
このほか,中学入試を要する学校として国際バカロレア教育を標榜するAICJ(私立)や広島叡智学園(公立)もある。
これらについては,国内というより海外への進学・海外での活躍を視野に入れた学校,という印象が強い。
やや特殊な色彩の学校であると思われるため,自分の個性や目指す進路に合致するかどうかを考えた上で受験を検討することを勧めたい。
ところで,最近はいわゆる「特進コース」「特待生」という制度を導入して優秀な生徒の確保を目指す学校が増えている。
正直こういったやり方はある意味博打であり,学校で進学に関するノウハウをきちんと持っていないと意味がないので,このような制度を使って進学しようと考えている場合はその学校の現状をきちんと調べて自分の目で見てから判断することを勧めたい。
なお,以上の話はあくまで難易度や大学への進学実績を尺度とした話である。
最近は特に,「校風が自分に合うか」「充実した学校生活を送れるか」という視点から入学校を決めることも多い。
たとえば,勉強の厳しい清心より自由な女学院を選ぶとか,逆に女学院より躾のしっかりした安田女子を選ぶとか,そういった例もある。
せっかく入学しても「こんなはずじゃなかったのに…」ということになったのでは意味がないので,ネットなどで調べるとか,周りの口コミを聞くとか,学校行事やオープンスクールなどの機会に実際に来校して自分の目で見るとか,そういったことは必要なことだと思う。
【各学校のイメージについて】
いわゆる「中高一貫校」においては、各校に特色がある。
私が見たイメージ、また世間が抱くイメージを独断と偏見で記しておく。
○広島大学附属中・高
現状「広島で一番賢い学校」と言って良い。男子偏差値は日能研調べであの「ラ・サール」と張り合うレベルであり、女子はさらに難関。
校風は自由であるが、私立のような先取り学習をしないため、大学入試ではむしろ不利である。
このため、生徒の多くが塾通いをしている。私立に比べて学費は安いが、結局塾代がかかるためコスパは意外に良くない。
また、入口では張り合っていた「ラ・サール」に出口では大差をつけられる。それでも広島ではトップレベルなのだが。
ちなみに、同校のサイトの進学実績には、国立は「難関10+広大」と医学部医学科のみ、私立は早慶上理とマー関しか載っていない。
これら以外は大学と認められていないということだろう。プライドの高さが伺えると同時に、これらに入れなかった者の扱いが心配になる。
○広島大学附属福山中・高
広島県東部ではナンバー1の進学校。広大附属本校と大差ないレベルにあり、特徴もほぼ同じ。
地理的に岡山県からの進学者も多く、岡山県の中高一貫進学校(岡山白陵、大安寺など)と熾烈な競争を繰り広げている。
とは言っても福山駅からは微妙に遠く、バスの便も良くないので岡山からだと通学には一苦労するのだが。
広大附属同様、進学実績には「国立難関10+広大」「医学部医学科」「私立早慶上理+マー関」と「その他」に露骨に分別されている。
ただ、こちらは「歯」「薬」「農・獣医」も別枠で掲載されており、本校よりは少し寛容である(?)ことが分かる。
○広島学院中・高
かつては東大に40人くらい通すレベルの全国区の進学校であった。
今はそこまではいかないが、それでも広島の私立中高一貫校の中ではトップの進学実績を誇る。
広大附属とW合格した場合にどちらに進学するかはほぼ個人の好みである。
いわゆる「受験少年院」のようなイメージを持たれるが、在学生的には言われるほどではないらしい。
男子校の生徒にはチャラチャラした者も散見されるが、学院に関して言えばそのようなイメージはない。
同じく西区にあるND清心とは図書委員同士の交流があるという(清心のHPより)。学院ですら女子校と交流しているのに、我が母校ときたら…
○ノートルダム清心中・高
広島の中高一貫女子校の中ではトップ。
女子校には珍しく理系が多く、その多くは医学部を目指す。(医者の家の子どもで女の子だったら清心を目指すとか)
勉強に関してはハードであり、塾通いは少なくとも高2までは不要と言われる。
校則が理不尽に厳しく、生徒が不満を抱いているらしい。(若い先生はともかく、年配教師の頭が堅いとか…)
大人しくもしっかりした生徒が多い印象。
学校内の仲は良好で、後輩は先輩を「お姉さん」と呼ぶ。
○修道中・高
広島の中高一貫男子校のナンバー2であり、私こと主宰の母校でもある。
「責任ある自由」を校風とし、その校風に魅かれて学院を蹴って入学する者も結構な数いる。
良く言えば「バンカラ」、悪く言えば「動物園」という「男子校らしい男子校」。
漫画「男子校の生態(コンテくん著)」は修道がモデル。ただOBとして言わせてもらえば、あれは美化しすぎだと思う。
本当はもっと下品で汚n…おっと誰か来たようだ。
詳細は母校のページを参照。
○広島女学院中・高
広島の中高一貫女子校のナンバー2。
県内での格付け、自由な校風、長い歴史と伝統、広島市中区という立地など、修道との共通点が多い。
清心とは対照的に、明るくはっちゃけた生徒が多い印象。
元々英文学校だった歴史もあってか、文系で英語が強い生徒が多い。(帰国子女やハーフも普通にいる)
難関国立大学を目指す者は少なく、主に関関同立あたりに推薦で入る生徒が多い。
○県立広島中・高
東広島市に所在する県立の中高一貫校。
広島市東部~東広島市から目指す者が多く、特に東広島市の進学塾であれば県広対策はマスト。
勉強はかなり厳しく、スパルタであるらしい。
ただ、在学生の多くは楽しく通っている、というネット上の口コミもあり。
正直かなり辺鄙な場所にあるのだが、寮があるため遠方からでも入学は可能。
○市立広島中等教育学校
広島市安佐北区の桐陽台という住宅団地の中にある。
広島市中心部からバスで1時間程度かかるため、いわゆる「旧市内」からは目指しづらい。
元々「安佐北高校」という何の変哲もない市立高校だったが、中高一貫になって化けた。
県立広島ほどスパルタであるという話は聞かないし、楽しいという口コミが多い。
市立なので授業料は安いが、修学旅行でオーストラリアに行くらしいので旅行積立はバカにならないかも知れない。
○AICJ中・高
鴎州塾を運営している法人が経営している私立中高一貫校。
東医H(「H」はハーバードの意)クラスと早慶クラスがあり、両者の実力差は同じ学校とは言えないくらいであるという。
英語に関してはとにかくスパルタであり、英検などの資格試験をノルマのように課す。
このため、部活などの「普通の青春」は期待しない方が良いと言われる。(例外は女子サッカー部であり、いわゆる文武別道)
海外の大学に行きたい、国際バカロレア教育に魅力を感じる、などの志があるのであれば勧めたい。
一応寮があるので遠方からも入学可能な触れ込みだが、最近男子寮は入寮不可になったらしい。
○広島なぎさ中・高
元「広島工大附属広島高校」だが、現在は完全に「なぎさ」のイメージが定着した。
学力的には修道・女学院残念組が行く印象が強いが、旧市内から通いやすい男女共学の中高一貫進学校は貴重なので需要はある。
一応例年学内トップの子は東大・京大に進学している。
受験勉強というよりは独自の教育(想像力を育む系)を行っている印象が強い。
明るくフレンドリーな校風であり、五日市駅ではそこかしこでなぎさ生のカップルを見かける。
○広島城北中・高
広島の中高一貫男子校のナンバー3であるが、かつてに比べると随分入学のハードルは下がっている。
真上の修道には大差をつけられており、現状ぎりぎり進学校と呼べるかどうか、という位置付けになっている。
ただ、四半世紀前くらいまでは確実に進学校であったため、そのノウハウは持っている。
城北生・OBは「Johoku」にちなみ、自らを「J-Boys」と呼ぶらしい。(城北OB談、真偽不明)
鉄道研究部は「全国高等学校鉄道模型コンテスト」の優勝経験を持ち、世界大会に進出した強豪である。
○安田女子中・高
広島の中高一貫女子校のナンバー3であるが、現状大学合格実績を見ると進学校とは言い難い。
以前「特進コース」と「総合コース」に分けて募集していたが、今は入学後に選抜する方法に改めた模様。
どちらかと言うと「お嬢様学校」であり、勉強よりも礼儀正しい淑女を育成する学校という印象。
登校時、門の前で礼をしてから入るしきたりがあったり、校則も割と厳しめ。(その割には直近の有名OGは加藤紗里)
部活について言えば、バレーボール部は(最近は進徳の後塵を拝しているが)名門である。ソフトボールも強い。
○広島叡智学園中・高
大崎上島町にある県立の中高一貫校であるが、他の中高一貫校とはかなり趣を異にする。
国際バカロレア認定校であり、大学受験はほぼガン無視で「国際社会で通用するリーダーを育てる」ことを目的としている。
当然ながら自宅通学は不可能であり、全寮制。「同じ釜の飯を食う」ことで他生徒との連帯を深めることができる。
高校からは外国人留学生が加わり、さらに国際色が濃くなるという。
AICJはまだ若干の「普通っぽさ」を残しているのに比べ、こちらは相当の覚悟を持って志願した方が良さそうである。
【入試難易度について】
さて、中学入試などというものは、自分のニーズに合わせて、自分が一番幸せになれるような学校を選べば良いと思っている。
東京のような進学校は広島には少ないし、一定以上の高校からであれば、何なら高校入試から入る公立高校であっても、難関大学進学は可能である。
とはいえ親としては、入口(入学難易度)と出口(大学進学実績)が気になるのは人情であろう。
ということで、まずは入口について記す。
全国的には、いわゆる「Y偏差値」と「N偏差値」というものが著名である。
前者は「四谷大塚」が出しているものであり、後者は「日能研」が出しているものである。
まず日能研について述べるが、次のとおりである。
男子:広大附属60>広大福山58>広島学院56>AICJ東医54>AICJ早慶45>修道42>国際学院40>広島城北35
女子:広大附属60>広大福山58>AICJ東医54>ND清心53>AICJ早慶45>広島女学院41>国際学院40>安田女子36>比治山女子35
※他の学校(県立広島、市立広島、附属東雲、広島なぎさなど)は、「データ不足」を理由に掲載されていない。
ここは致命的な弱点があって、それは「母集団が小さい」ことである。
広島の塾の中で、四谷大塚系は英進館鯉城、東広島鯉城、田中学習会、大木スクール、その他中小教室があるのに比べ、日能研は広島本部校1校のみであり、これでは(信頼性=母数の上で)敵う訳がない。
こうなると、受験者一人の合否で数字が大きく動くことになりかねないので、データの信憑性にやや難が出る可能性がある。
で、四谷大塚である。
先日、「第一回合不合判定テスト偏差値」が公表されたが、次のとおりである。
男子:広大附属61>広島学院58>県立広島54>市立広島50>修道49>広島なぎさ41
女子:広大附属61>県立広島54>ND清心53>市立広島50>広島女学院45>広島なぎさ41
他の学校は掲載されていない。
広大福山やAICJが不掲載であるほか、御三家レベル未満の学校の殆どが掲載されていない。
四谷大塚は上述のとおり母集団の数においては不足なく、出そうと思えば他校の偏差値も出せるはずである。
現に昨年においては、県内の殆どの学校の偏差値を網羅していたのだが、今回これだけしか出ていないのは理解不能である。
数字そのものの信憑性は日能研より上であると思うが、対象がこれだけ少ないのでは利用するには心許ない。
本音を言えば、より広島の実情に根ざしたところ、たとえば家庭学習研究社辺りがこういったものを出してくれると有難いのだが。
私が今まで見てきたデータや肌感覚でランク分けすると、大体こんな感じである。
全国偏差値 | ランク | 共学 | 男子校 | 女子校 |
55~ | 御三家上位 | 広大附属、広大福山 | 広島学院 | なし |
50~55 | 御三家中位 | 県立広島、AICJ東医、広島叡智学園 | なし | ND清心 |
45~50 | 御三家下位 | 市立広島、附属東雲、AICJ早慶 | 修道 | 広島女学院 |
40~45 | 中堅上位 | 広島なぎさ、近大東広島、市立福山 | 広島城北 | 安田女子 |
~40 | 中堅下位 | 広島国際学院、近大福山、崇徳 | なし | 比治山女子 |
【最近の大学進学事情】
次いで、出口について記してみようと思う。
近年の大学入試における「TKI率」「難関10・国医率」「準難関(広大レベル以上)率」により、独断と偏見で記したので、参考となれば幸いである。
高校入試で入る公立高校との比較についても、私の考えを参考として示している。(2025.4.6暫定更新)
ランク | 中学入試共学 | 男子校 | 女子校 | 高校入試 |
A | 広大附属、広大福山 | 広島学院 | なし | なし |
B | 県立広島、市立広島 | 修道 | ND清心 | 基町 |
C | AICJ、広島なぎさ 近大東広島 近大福山、市立福山 |
広島城北 | 広島女学院 | 舟入、広島国泰寺 福山誠之館、呉三津田 尾道北 |
D | なし | なし | 安田女子 | 広島皆実、広島井口 安古市、廿日市 |
注 | 広島叡智学園、崇徳 三次 |
なし | 比治山女子 | なし |
※ランク群解説
A:広島県内のハイレベル進学校。例年高い数値を出している。
B:Aに次ぐレベルの進学校。Aには及ばないが、安定した数値を出している。
C:いわゆる「中堅校」と言われるレベル。年代により波があり、高レベルの年もあればそうでない年もある。
D:広大レベルには比較的多くの合格者を出すが、難関10・国医への合格者があまり出ない学校を挙げている。
注:例年は登場しないが、2025年度の実績で目立つものがあった学校。新設校を含む。
あるいは漏れ・抜けがあるかも知れないので御留意いただきたい。
私見であるが、広島の高校生の多くが目標とするであろう「広大」に入りたいのであれば、この表にある高校に入れるレベルであるのが望ましい。
【「進学校」の基準】
広義の「進学校」は卒業生の多くが(どこであれ)大学に進学する学校であり、上記の表に含まれている学校であれば、もしくは含まれていない学校の中にも該当する学校は多いと言える。
ただ、世間的に言うところの「進学校」の定義はこれより狭く、少なくともトップは東大かそれに近いところに進学し、上位なら広大以上、中位ならGMARCHや関関同立、国公立であれば5Sレベルを目指せる学校のことであると思われる。
何より私が重視するのは、「進学校としてのノウハウを持っているかどうか」ということである。
これまでの歴史において東大などの上位校に一定数通した実績があるのであれば、そのノウハウがあるはずなので、優秀な生徒が進学すれば学校がきちんと指導をしてそれなりの大学に通すことが期待できる。
仮に大学進学を考慮して学校を選ぶのであれば、志望校として考えている学校がこの条件を満たすかどうか検討した方が良いだろう。
【「自称進」とは】
「自称進」とは「自称進学校」の略であり、中身は大したことないくせに「我こそは進学校なるぞ」と対外的には振舞っている痛い学校のことを指す。
無論実際にはそのようなことを敢えてする学校はないと思うが、そのように映る学校は「自称進」と呼ばれ、揶揄されることになる。
「自称進」の基準は次のとおりである。
1 スパルタである。
2 国公立志向であり、偏差値のみを基準として行きたくもない国公立大学の受験を強要する。
3 2の結果、「国公立大学○名合格」と宣伝をする。
4 難関校合格者は少ない。
この項では「広島県の『自称進』はここだ!」とは書かないが、一応目安だけ具体的に記しておく。
1については、口コミ等で知ることが出来るだろう。どちらかというと公立高校(中高一貫を含む)に多い印象がある。
2についてであるが、「国公立ならどこでもいい」とばかりに難易度の低い大学、遠方の大学への合格者が多い高校はその可能性がある。
参考として、国公立大学の中で偏差値の低い大学(河合塾の資料による)を記載しておく。
目安は、共通テストボーダーが50%未満であり、2次試験がないかあってもボーダー偏差値が低い(40未満)である。
実名を挙げると、名寄市立、北見工業、釧路公立、室蘭工業、尾道市立、明桜、この辺りが該当する。(このレベルだとあまり文系理系は関係ない)
広島県にあっては特に東部の高校では尾道市立大学を受験する者は多いと思われるが、これ以外の大学は全て遠方(北海道か沖縄)である。
これらをやけに推す教師がいたら要注意である。
3は高校のホームページを見れば容易に確認可能であるが、難関校合格者数より国公立を一括りにした人数を大きく出す場合は要注意である。
結果的にこのような学校は必然的に4にも該当することになるだろう。
【AICJ VS …】
広島の中学受験に関するネット上の掲示板を見ると、AICJの関係のスレッドは必ず荒れる。
現状AICJの合格難易度は、東医Hクラスが学院、清心並であり、早慶クラスが修道、女学院並である。
そのため、AICJと母体を同じくする鴎州塾においては、修道や女学院を差し置いて「新御三家」を名乗っていた。
この点が一部の関係者、父兄らの不興を買ったようである。
AICJは現状、広島ではかなり難関の部類に入ると言って良く、進学実績もそれなりのものは挙げている。
その理由は次のとおりである。
1 広島では唯一無二の教育方針(国際バカロレア、海外大学進学重視)を掲げている。
2 男女共学である。
3 他県入試及び前受け受験の需要がある。
AICJはその教育方針が独特であり、その方針に賛同するのであれば、まず第一志望にする。
このため、トップ層は非常に優秀な子が入学する可能性が高い。
学院や清心といえども、附属に次ぐ第二志望にする子は少なくないし、修道や女学院は尚更である。
このため、トップ層は修道・女学院は勿論、学院や清心をも凌駕する可能性がある。
ただ、数としては少ないことから、トップ層以外のレベルはそれなりのものにとどまるだろう。
また、最近は男女共学志向が強い。
修道や女学院はもとより、男女別学でそれぞれ広島県トップである学院や清心といえども難易度は以前より下がっている。
そこに割って入っているのが、公立であれば県広、市広であり、私立であればAICJである。
さらに、AICJは入試日が広島の私立で最も早く、解禁日後すぐである。
また、広島の解禁日より前に、各地で試験を実施する。
このため、広島の前受け需要があるほか、他地方の入学希望者の需要もある(他地方入試は専願とのこと)。
特に東医Hにおいては、定員の多くを他県入試組が占めてしまうため、広島での試験での合格者数はかなり絞られる。
このため、合格者偏差値は高く出る傾向がある。
さて、他校との比較になるが、大学進学のみを考えるのであれば、東医Hに入れるのであれば修道や女学院よりは上と考える。
ただ、附属よりは明らかに下になるし、学院や清心と比較してもやや分が悪いのではないだろうか。
また、東医Hに入れない場合、早慶クラスとの比較であれば修道や女学院の方が上である。
AICJの難関・上位校合格実績の多くは東医H(特に男子)が稼いだものであり、それ以外のレベルについては修道・女学院に軍配が上がる。
ただ、これはあくまで大学進学実績のみを比較した考察である。
AICJの良いところを優先するか、修道や女学院の良いところを優先するかはその人次第であると言えるだろう。
【新御三家】
上述のAICJは、修道と女学院になり替わる形で「新御三家」を名乗って一部の不興を買った。
そもそも、「新」というからには「(旧)御三家」と全く違う、新しい顔触れで登場しなければならない。
ということで、AICJが入るに相応しい「新御三家」を考えてみた。
○難易度による「新御三家」
これはAICJのほか、県立広島と市立広島の3校となるだろう。
強いて言えば私立1、公立2になるので少々AICJに異質感があるが、難易度や大学進学実績でこの3校が「(旧)御三家」に対抗できると言える。
○国際バカロレア教育による「新御三家」
AICJ、叡智学園、英数学館(福山)の3校である。
インターを除いてIB教育を受けられる学校は広島県ではこの3校のみである。
○男女共学私学による「新御三家」
とりあえず、AICJと現状張り合えるのは広島なぎさである。
海外はともかく、国内大学進学で言えば現状この2校は実績において近く、また新興・私立・中高一貫・男女共学という点も共通している。
残念ながら3校めは広島県内には見つからなかった。近大東広島や崇徳辺りは広大合格者は一定程度いるが、上記2校とは現状差がある。
(崇徳は近年合格者数を絞って難化しており、彼らの出口次第でレベルが上がる可能性はある。)
広島には中高一貫の男女共学校が多くなく、「附属は無理、県広市広は遠い、AICJは特殊だし…」という場合の選択肢が少ないのが残念である。
【進学塾について】
広島県内の中学受験を扱う学習塾はいくらかあるが、ここではその印象を述べたい。
○家庭学習研究社
「広島の中学受験」にターゲットを絞った老舗。
広島では絶大な実績と信頼を誇り、かつてはいわゆる「御三家」の占有率で他の追随を許さなかった時代もある。
今は英進館鯉城などの台頭で絶対的な存在ではなくなったものの、それでも広島での中学受験といえば第一に名前が挙がる。
「広島」に特化しているため、それより上の県外の上位進学校への受験には不向き。
名前のとおり家での学習に重きを置き、授業でけん引するというイメージではないため、スパルタではないが自立性が問われる。
○英進館鯉城学院
かつては「鯉城学院」という広島ローカルの塾であったが、九州の学習塾である「英進館」の軍門に…もとい、傘下に入った。
四谷大塚の予習シリーズを教材に使っている。
学力に応じたクラス分けがあり、塾内でかなり厳しい競争を強いられる。
雰囲気はかなりスパルタであり、出来が悪いと容赦なく厳しいことを言われるらしい。
進学実績では現状広島でトップと言って良く、県内はもとより県外の難関校(灘、ラ・サール、愛光、久留米大付設etc)への合格者もいる。
○田中学習会
元々は中堅規模の補習塾のような印象だったのだが、中学受験のための進学塾としても一定の存在感を持つ。
教室によってカラーが異なっており、難関校向けの中学受験対策は主に「四谷大塚NET」を導入した一部の教室で行っている。
このほか、女学院・修道クラスをターゲットにした教室や、学校の勉強の補習専門の教室もあるため注意を要する。
英進館鯉城同様、九州の「英進館」の軍門…もとい傘下にあり、鯉城と合わせて一大勢力に成長している。
ただ、どちらかと言うと中学受験よりは公立高校受験対策の方に力を入れていると言える。
○白石学習院
広島では中規模ながら定評のある学習塾。
口コミによれば面倒見が良い、フレンドリー、子どもが楽しく通っているなどがあり、雰囲気は良さそうである。
あと、他の塾にない特色としては「塾弁」を忘れるわけにはいかないだろう。(塾が子どもたちに弁当を振舞ってくれる)
親から見れば食まで含めて面倒を見てくれる塾はそうそうなく、有難い存在であることが伺える。
○鴎州塾
かつては一大勢力であったが、今は他の勢力に押され気味である。
全県に教室を構えるが、県西部では家庭学や鯉城など、東部では若竹塾や能開センターなどの強力なライバルとの争いとなっている。
ここの最大の強みはAICJ中・高とのつながりであり、AICJを志望するのであれば鴎州塾にいることが最高の近道である。
逆に鴎州塾に在籍するとAICJ受験・入学を強要されるのではないか、という噂があるが、塾生曰く「勧められるが強制はされない」らしい。
○大木スクール
四谷大塚系列の塾の一つ。
規模は小さいが、「5人に4人は附属・学院・清心のいずれかに合格!」「全国統一小中高テスト決勝進出!」「算数オリンピック金賞!」などの錚々たる戦果がホームページに記載されている。
面倒見は良いとされているが、レベルは相当高いと思われるのでその点は覚悟して身を投じた方が良さそうである。
○長井ゼミ
現役の医師(心療内科医)がはじめた塾であり、広島ではそれなりに有名である。
右脳と左脳を鍛える「ハイブリッド授業」が特色であるという。
医者が持っているだけあって、医療法人を併設していて心身の問題にも対応します、というのも売り物の一つ。
私の甥が中学受験から大学受験まで一貫して世話になっているが、特に問題なく通い続けているみたいなので、居心地は良いのだろう。
○日能研
広島にはあまりない全国区の中学受験塾である。
日能研は合格者偏差値を基に全国の中学の難易度を掲載しており、広島の学校も掲載されている。
ただ、広島には一校しかなく規模も小さいので、母集団が少ないため信頼度は少々心許ない(四谷大塚の方が良いかも)。
東京などの大都市圏に進学したい場合は選択肢になるが、逆に広島の学校を受けるだけならオーバースペックとも言われる。
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