救急車の着いた先


私がある朝起きると腰が痛かった。
「ゆうべ、板の間のコタツで寝てしまったので、寝たがいかな?。」

お風呂にでも入って温めればなんとかなるだろう、と思い、シャワーで温めたがいっこうに痛みはおさまらない。それどころか痛みが増してきたような気がしてきた。捻挫のように温めるとかえって悪くなる痛みもあるので、お風呂から出ることにした。

お風呂から出て、着替えがない事に気づき、だれもいないことをいいことに、はだかのまんま2階へ服を取りに上がった。痛みは起きた時より数倍増しており、なかなか服が着られない。まずまっすぐ立っていられないのだ。
「家族を呼ぼうにも、このままの恰好じゃどうにもまずい。なんとか服を着なきゃ。」
こらえきれない痛みに時々横になって休みながら、なんとか服を着た。服を着るだけで30分くらいかかっていた。

階段を這うように下りて、実家に電話を入れた。30分後位にはこっちに着くから、ということで、家族の到着を待っていたが、どうにも我慢できない。実家への電話の15分位後に意を決して救急車を呼んだ。しかしこのままでは家族と入れ違いになると思い、「救急車で病院に行きます」と戸に張り紙をしておいた。

こういう時に限って救急車はなかなか来ない。実際はすぐ来たのかもしれないが、来るまでの間がとても長く思えた。救急車の音が聞こえて来たので、「ああ、あれかな」と思って家に鍵をかけ、財布と保険証を持って道まで出た。

救急車は案外乗り心地が悪かった。道のちょっとした段差が体に響く。7転8倒の末、かつぎこまれたのは家から300メートル先のI内科。ストレッチャーから病院の中のベッドに移される時、なぜか家の者が病院に来ていた。

「なんでここがわかったん?。」
「来る時I内科に救急車が入るのを見た。戸に張り紙がしてあったので、時間的にみてさっきの救急車はゆかりのだなと思って来てみた。」

家族と救急車が出会ったいうことは、救急車が家に来るまで15分くらいかかったと思われる。救急車を呼んで15分、乗って1分で下ろされた事になる。情けないやら恥ずかしいやら。

診断の結果、痛みの原因は尿管結石だった。とりあえず内科では痛み止めをもらって、休みあけに泌尿器科に行った。石が小さいので薬で溶かしましょう、ということで、痛み止めと石を溶かす薬を当分取りに来るよう言われた。

結石の薬はカプセルに入っているのだが、デカイのなんの。直径がボールペンの軸位あるカプセル2個、小っちゃーいのを1個を毎食後飲む。泊まりの出張や旅行の時は日数分それらを念のために持って行く。4日分も持っていくと小さいビニール袋いっぱい位の量になる。救急車に乗って1分で下ろされたのもはずかしいが、この薬の量も結構はずかしいものがある。

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