デカイにも程がある


岩国の近くには日本三景として名高い、安芸の宮島があります。宮島と本土(宮島口)の間はフェリーで行き来します。フェリーは片道10分位で着きます。この話は母が同級生3人で宮島に遊びに行った帰りのことです。

母と友達はいろんな話をしながら、宮島からフェリーに乗りました。おばちゃん3人組ですから、一目をはばからず大笑いはするし、騒々しさはご想像のとおりです。いろいろ話しているうち、友達の一人が母にこんなことを言ったのです。
「ねえ、悦ちゃん。私、頭がおかしいんじゃろうか。何か宮島の鳥居が近づいて来るような気がするんよね。」

えー?、と思ってフェリーの窓から外を見ると、本当に鳥居が近づいて来るのです。

3人は顔を見合せ、一瞬の沈黙の後、大爆笑。おばちゃん3人組は、フェリーが本土に着いたのに気づかず、おしゃべりに夢中になっていたのです。宮島を出たフェリーはおばちゃん3人組を下ろさないまま、本土から宮島に向けて再び出港していたのです。

気づいても途中下車もできません。3人はフェリーが宮島に着いても降りずに、乗ったまま本土に帰ることにしました。2度目の帰りは、今度は絶対宮島口で下りるぞ、と心に決めて・・・。


フェリーが走っているときは、ガンガラガンガラとエンジンがうるさくて、外のベンチなんかでは怒鳴り合って話をするくらいの音です。桟橋に着くと、いままでの
「ガンガラガンガラ」
「ヒーーーーー〜ン」
とアイドリング音に変わって急に静かになります。他のお客さんが下りたのも気がつかないのもヘンだけど、エンジンが静かになって、再び大きな音がしだしたのも気づかない、というのはどういう事なのよ。確かにうちの母の声はデカイです。母のしゃべり声はフェリーのエンジン音以上ってこと?。大きいにも程ってものが・・・。。

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