恐怖の赤い靴


岩国には米軍基地があるので、結構外人さんが多い。繁華街に出て外国人に会わずに帰ってくるのはまず不可能。岩国市民にとって外人さんは見慣れた存在だ。

ある日、私が母と駅前に買い物に行った帰り、駅の桟橋で向こうから外人さんが近づいてきた。私は急にソワソワしはじめ、母の後ろに隠れるようにして歩きだした。変に思った母が私に尋ねた。

母「ゆかちゃん、どうしたん。」
私「しもうた、赤い靴履いてきた。」
母「え?・・・・(爆笑)」

童謡の「赤い靴」をご存じだろうか。


赤い靴 履いてた 女の子
異人さんに連れられて行っちゃった

横浜の 波止場から 船に乗って
異人さんに連れられて行っちゃった


カン違いシリーズで「ひい爺さんに連れられて」行ったり、「いい爺さんに連れられて」行ったりするあの歌だ。私はこの歌をカン違いしないで、ちゃんと歌詞のとおりに理解していた。ただ、意味がちょっと他の人より過激だったのだ。

私は「異人さんに連れられて」「外人に誘拐される」と思っていた。
おまけに「横浜の波止場から船に乗って」「さらった子供を海外に売り飛ばす」のだと思っていた。
悲しげなメロディーも手伝って、「赤い靴」は赤い靴を履いた子供を外人がさらって売り飛ばす、誘拐と人身売買の歌だと信じていたようだ。

他にもこんな話がある。
私は幼稚園にあがるまえ、親の仕事(大工)について行って工事現場で遊んでいた。手が足りないときは母も大工仕事を手伝っていた。早い話が一家全員で工事現場に行って、親は働き、子供は勝手にその辺で一日遊んでいた。ある時岩国基地のすぐ近くの現場に行った時、私は車から一歩も外に出なかった。「赤い靴」を信じていた私は「外人に誘拐されてはならん」とがんばっていたようだ。

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