女優の顔


私は普段ノーメイクだ。冠婚葬祭などのフォーマルな席で、どうでも化粧をしないとしまらない時と、ミュージカルの舞台の時はしかたがないのでする。以前いた劇団の時は子供とおばあさん役専門の役者だったので、「ヨゴレ顔のメイク」もしたが、今の劇団に移ってからはシスター役ばっかりなので、「薄く美しいメイク」しかやったことがない。

先日、美和で「天使にラブソングを2」の公演をした時の楽屋で、私の顔の事が話題になった。私の左の頬に大きな切り傷があったのだ。それは前の日にカミソリで切ってしまったものだった。私は最低でも週1回は顔を剃るので、カミソリで顔を切るというのは日常茶飯事、そう珍しいことではない。でも劇団のメンバーは不思議そうだった。

「顔を剃らなきゃ、化粧ノリが悪くない?」
と私が言うと、
「それは年齢のせいよ。」 と言う者もあれば、
「顔を剃ると化粧ノリがよくなるって聞いた事がある。」
とフォローを入れてくれる者もいた。
「年齢のせい」と言われれば返す言葉はない。私は他のメンバーより10才近く年上なのだ。


前の話とは別件だが、時々エレベーターが満員のとき、他の女性の顔を15センチ位の間隔で間近に見る事がある。驚いた事に顔を剃らずに化粧をしている人がいる。顔じゅう産毛だらけでファンデーションを塗っているので粉を噴いたよう。誰も顔を剃る事を教えてくれなかったのかな?と思う。
「いくら若くても、それじゃ化粧はのらないだろ。」
そう思ったが、私は面と向かってそんなことが言えるほどオバハンではなかった。

私の顔剃りの歴史は長い。母が自分の顔を剃るついでに私と妹の顔を剃ってくれていたのが小学校高学年。中学校に上がると自分で剃れと言われ、母はたまに眉をそろえてくれるだけになった。高校に入ると眉も自分できちんと剃れるようになった。高校で「眉を剃るな」との生徒指導があったが、私たち姉妹はどこ吹く風、必ず剃っていたものだ。もっとも私の眉は幅広く、放っておけば真ん中がつながる、鼻の下にはヒゲが出る、と剃らずにはおれない事情もあるわけだが…。(このため子供の頃は母が剃ってくれていた。)そういうわけで私にとって顔そりはごく当たり前の事なのだ。でも時々失敗する。ゆえに女優の顔は傷だらけ…。

余談だが、最近一つ違いの妹の顔にシワが増えた。子供が3人もいて、家を建てたばっかりで苦労が多いのでしかたがないが、今年のお正月に会った時、老けて見えた。私は昔からシワのない顔で、子供の時とあまり変わらない顔つきをしている。職場のメンバーも私と同じように一つずつ年をとり、長いあいだ同じメンバーでやっているので、入職時からずうーっと私が一番下。そういうわけで全然歳をとった気がしないでいたのだが、妹を見て愕然とした。これはヤバイと思い、最近はパックなど特にまめにするようにしている。それなりの顔をそれなりにキープするのも大変だ。(放っておくとそれなり以下になる恐れあり!?)

 

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