まあ、悦ちゃん


「悦ちゃん」とは私の母のことである。ガラクタ展ではおなじみの人物だ。親戚がうちの家に集まった時、私や妹は母のことを「おかあちゃん」、弟は「ババ」、父は「悦子」、母の姉は「悦ちゃん」、と呼ぶので、妹の子供は「ばあちゃんは何で名前がいっぱいあるのか」と目を白黒させていた。今回はそんな「悦ちゃん」の失敗話を一つ。

親戚の家で、法事か何かがあって、母はご飯の支度をしていた。
今日は松茸ご飯だと聞いたが…。松茸はこれ1本しか見当たらない…?。他にまだあるのかと思って聞いてみたが、これだけとのこと。

我が家では何でも食べた気がするくらい大きな具をたくさん入れるので、松茸1本では5人分の松茸ご飯でも少ない。
「1升飯を炊くのに、松茸1本きり?」
と思ったが、黙って作る事にした。今日は手伝いの身である。そしていつもは大雑把な母だが、よその家でのご飯の支度なので、いつもより具を小さく切った。1升飯に松茸1本入れても、あるのかないのかわからない位の量だ。松茸の歯ごたえなんかはとても望めないくらい小さく小さく刻んだ。いや、そのつもりだった。

親戚の人が台所に来て、電器がまをのぞいて一言。
「まあ、悦ちゃん、どうしよう。松茸こんなに大きく切って。」
母はぶっ飛んだ。自分ではこれ以上小さくできない位小さく切ったのに…。

母が親戚の家から帰ってきて、この話をおもしろおかしく私たちに話したもんだから、いまだに何か失敗する度に「まあ、悦ちゃん、どうしよう。」とからかわれている。

 

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